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2025.05.08
清水寺近くの大正レトロな洋館カフェ「CAFE五龍閣」で、パウンドケーキと香り豊かなコーヒーを
世界遺産・清水寺への参道につながる路地の奥に、国の登録有形文化財である近代建築がたたずみます。以前は「夢二カフェ五龍閣」として営業していましたが、数年間にわたる休業と改修を経て、2024年12月31日、「CAFE五龍閣」として待望のリスタート。竹久夢二の絵が飾られた優美な空間のなか、セルフオーダースタイルの気軽なカフェタイムが楽しめます。

清水寺へつづく清水坂の途中

洋風をベースにしながらも、門前町の景観と調和させるためか、細部の装飾に和風を散りばめた和洋折衷のつくり
「清水の舞台」で名高い清水寺は、年間500万人以上がお参りに訪れる人気寺院。市バス「清水道」または「五条坂」の停留所から清水寺の仁王門にいたる参道は、京みやげや京グルメのお店が軒を連ね、いつも多くの人でにぎわっています。清水坂、五条坂、産寧坂の3つの参道が交わる場所からほど近い路地の奥に現れる、クラシカルな洋館の1階が「CAFE五龍閣」です。

瓦屋根の上には、平安神宮などにも見られる魔除けや火除けの意味を込めた屋根飾り、鴟尾(しび)も

左:階段は3階まで吹き抜けに。京都の洋画家・鹿子木孟郎の油絵が飾られ、立体ギャラリーのようだった時代もあったとか 右:玄関北側の扉の前にはめずらしい沓脱石も
1921(大正10)年、清水焼の窯元として洋食器、碍子(がいし)、陶歯の製造や輸出で富を築いた実業家・三代目松風嘉定の邸宅として建てられました。設計を担当したのは、フォーチュンガーデン京都(島津製作所旧本社)や京都市役所など今に残る名建築を手がけた“関西建築界の父” 武田五一。19世紀末から20世紀初めにかけてヨーロッパ全土に広まった装飾様式「アール・ヌーヴォー」をいち早く取り入れた建築家です。 以前は玄関で靴を脱いで上がりましたが、リニューアルに際し、おもに1階の玄関と洋間を改装。絨毯を取り払ってフローリングとし、靴を履いたままでOKに。玄関の北側とサンルームは、床を取り払って、建てられた当時のタイル敷きが蘇りました。

天井のレリーフや照明も建築当時のもの

奥の扉を開けて、カフェのある部屋へ

アンティークの椅子やテーブルが空間と調和
暖炉を据えた格調高い雰囲気の室内には、当時の五龍閣の当主と親交があったという竹久夢二の美人画が飾られています。木目の美しい大テーブルとカウンターは、アフリカ原産のブビンガという高級木材で統一したそう。

部屋にある2つの暖炉のうちひとつは、いち早く取り入れたという電気暖炉

現オーナーの代になって導入した円テーブルは京都をモチーフにした特注品

虹色の光が差し込むサンルーム

タイルを幾何学模様に組み合わせた床は、建築当初のもの
光が降り注ぐサンルームは、晴れの日はもちろんのこと、雫がキラキラと窓をつたう雨の日の景色も素敵です。窓の下のデザインは、建築当時流行していた蛇紋岩と大理石の2つの石を組み合わせているそう。

ステンドグラスは、ジュエリーの老舗ブランド・ティファニーが開発した技法でつくられたもの

一枚一枚異なるデザインはどことなくストーリー性も感じられる

豆乳を使った特製パウンドケーキ

「特製パウンドケーキ」600円、「ブレンドコーヒー」800円。セットの場合はドリンクに+400円でパウンドケーキが付く
建物を受け継いで保全に努め、カフェを営むのは、隣接する湯豆腐店「清水順正 おかべ家」。看板メニューのパウンドケーキには、豆腐づくりの匠ならではの豆乳を吟味して使用しているといい、4種が日替わりで登場します。この日は、洋酒とキャラメルの風味を効かせてしっとりと焼き上げたケーキのなかに、プチプチと弾ける食感がアクセントの「いちじくのパウンドケーキ」。ほかは、白味噌とクリームチーズ、ほうじ茶と生姜、かぼちゃと黒豆です。 コーヒーは、スペシャルティコーヒーの専門店・猿田彦珈琲が特別に開発した「五龍閣ブレンド」。大正時代をイメージした深みのある味わいに仕上げているといい、パウンドケーキとの相性もぴったりです。

無調整、大豆のやさしい甘さが感じられる「豆乳ドリンク」800円
100年を超える時を刻んできたクラシカルな建物で、香り豊かなコーヒーとやさしい甘さの豆乳入りパウンドケーキを傍らに優美なカフェタイム。清水寺エリア散策の休憩に重宝する一軒です。

CAFE五龍閣
カフェゴリュウカク
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文:佐藤理菜子 写真:マツダナオキ
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