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2025.05.08
ドラマや映画のロケも多い「名古屋市市政資料館」で、クラシカルな雰囲気に浸って
かつては名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所として使用され、現在は国の重要文化財となっている「名古屋市市政資料館」。貴重な建築物として保存・公開されているほか、ドラマや映画のロケ地としてもたびたび使用され、多くの作品に登場しています。実際に訪れてみると、その重厚さや華麗さに圧倒される施設。ぜひその魅力を体感してみませんか。

華やかなレンガ造りの外観が見事な重要文化財

レンガの赤やドームの緑など、色の組み合わせも素敵な外観
「名古屋市市政資料館」があるのは、名古屋城や名古屋市役所の近く。地下鉄名古屋城駅から歩いて8分ほどの静かなエリアです。「名古屋市市政資料館」は、1922(大正11)年に、当時の名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所庁舎として建築された建物。そこから60年近く、中部地方の司法の中心として歴史を重ねてきました。

移築した陪審法廷の天井にあるステンドグラス
1989(平成元)年から名古屋市市政資料館として使用されている建物。現存する最古の控訴院であること、煉瓦造りとして最後の大規模な近代建築であることなどの特徴が認められ、1984(昭和59)年には国の重要文化財に指定されました。 赤いレンガと白い花崗岩、ドーム・上屋の緑の銅板などを組み合わせた華やかでありつつ厳かな雰囲気を持つ、ネオ・バロック様式の外観。左右対称の整った美しさにも魅せられて、館内の見学への期待が高まります。

ステンドグラスなど、見どころが尽きない中央階段室

ドラマや映画の主人公になった気分で階段を上がってみては
美しい建築や貴重な資料がたっぷり見学できるのに、この施設は入館無料。入口からさっそく館内へ入りましょう。2階へ上がると、さっそく見どころのハイライト、中央の大階段です。こちらではドラマや映画の撮影が多く、最近ではNHK連続テレビ小説『虎に翼』や2024年のNHK紅白歌合戦にも登場。『虎に翼』の主人公のモデルになった女性は、実際にこの建物で働いていたとか。ドラマを見た人を中心に来館者が増えているそうです。 吹き抜けの広い空間、3階へ続く大理石の階段、ステンドグラスなど見どころが尽きない場所。下半分は大理石で上部はマーブル塗りになっている柱などの見どころもあるので、じっくり楽しんでくださいね。

さまざまな色が細やかに使われている正面のステンドグラス
中央階段室のステンドグラスは、階段を上がった正面と、天井の2カ所にあります。正面は縦型で、上には花かご、下には罪と罰がつりあうことを意味する天秤のモチーフが描かれています。天井は誰にも等しく降り注ぐ日輪(太陽)。司法の場にふさわしく、公明正大を表現した内容になっています。天候や時間によって見え方が変わるので、違うタイミングで訪れてみるのもよさそうです。

天井のステンドグラスを通して、やわらかな光が降り注ぐ

資料に基づいて見事に復原された会議室

重厚な雰囲気が漂う復原会議室
階段を上がった3階で見逃せないのが、復原会議室です。文献や写真などを基に、創建当時の会議室が復原されています。中央を一段高くした折り上げ天井や、部屋の北側に設けられた奉安所などから感じられるのは、この部屋の格式の高さ。壁紙や椅子の模様も優雅で、当時としては最先端だったスチームヒーターなどの設備も備えています。部屋一面に敷かれた絨毯は中国の天津段通で、とても高価な品だそうですよ。

館内のあちこちで見られるシャンデリア。それぞれに違った雰囲気のあるデザイン

司法や名古屋市の歴史を伝える展示も

再現された明治憲法下の法廷。人形に着せてある法服に時代を感じる
館内では建築以外にも見ておきたい展示があります。まずは、司法にまつわる展示。明治憲法下の法廷や現行憲法下の法廷、陪審法廷(1928年から1943年)が再現されているので、その違いをぜひ見比べてみてください。検事の座る場所や法服など、それぞれの特徴がわかりやすく伝えられています。また、名古屋市の歴史を伝える資料や近代建築に関する展示もあるので、こちらも見学してみましょう。

窓からちらりと覗くドームやレンガの壁なども、絵になる眺め
展示や建物の意匠を細やかに見ていくと、あっという間に時間が過ぎてしまうほど、見応え十分の名古屋市市政資料館。館内には喫茶室、外にはベンチもあるので、ひと休みしながら楽しむのもいいですね。美しい建築や貴重な資料を、心ゆくまで味わってみてください。

名古屋市市政資料館
ナゴヤシシセイシリョウカン
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文:豊野 貴子 写真:山本 章貴
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