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2025.07.31
7/16-9/17|知られざるトーベ・ヤンソン創作の原点へ。約300点でたどる「トーベとムーミン展」
六本木ヒルズ森タワー52階・森アーツセンターギャラリーで、7月16日(水)より「トーベとムーミン展〜とっておきのものを探しに〜」が開催中。 「ムーミン」小説の第1作『小さなトロールと大きな洪水』が出版されてから、2025年で80周年を迎えました。本展はそれを記念した展覧会として、原画、油彩画、スケッチ、愛用品など約300点を展示。 「ムーミン」の生みの親であるトーベ・ヤンソンの知られざる素顔や、作品の背景にある創作の軌跡をたどることができます。今回はそのみどころをレポートします。
知られざる創作の舞台裏から、「ムーミン」誕生の背景まで

トーベ・ヤンソン(1914-2001年、以下トーベ)は、フィンランド・ヘルシンキ生まれ。油彩画、風刺画、漫画、絵本、小説など多方面に才能を発揮したアーティストです。本展は、そんな彼女の人生と創作の足跡をたどりながら、「ムーミン」がどのように生まれ、育まれていったのかを知ることができる展覧会になっています。

左:『ムーミン谷の冬』初版 1957年、右:『ムーミン谷の仲間たち』初版 1962年
“「ムーミン」の作者”として知られるトーベですが、彼女の活動はそれだけにとどまりません。子どものころから画家を志し、20代にはパリの美術学校に留学。印象派や表現主義の影響を受け、光と色彩の表現に惹かれていきました。

展覧会の冒頭では、そうした20代から1960年代までに描かれた油彩画が並びます。初期のやわらかな色づかいから、50代以降に見られる大胆で力強い筆使いまで、時代とともに変化する表現スタイルに注目です。「ムーミン」の挿絵とは異なるタッチに、アーティストとしてのトーベの探究心が感じられます。

また、挿絵画家だった母の影響もあり、若い頃から雑誌の挿絵で才能を発揮していました。第二次世界大戦中には、フィンランドの政治風刺雑誌『ガルム』で挿絵を発表し、1953年の廃刊まで約20年にわたって活躍しました。 風刺画には、反戦の想いやユーモアが込められ、のちに“「ムーミン」”に登場するキャラクターの原型「スノーク」も描かれています。よく目をこらして探してみてください。

トーベが長年過ごしたヘルシンキ市内のアトリエを感じさせるコーナーも。彼女はこのアトリエで1944年から亡くなる2001年まで、油彩画や「ムーミン」小説の執筆を行い、創作に打ち込んでいました。

左上:絵具、パレット、絵筆、右上:パレット、左下:フィンランドの陶器メーカー「アラビア」によるムーミンフィギュア、右下:眼鏡とケース
ショーケースには、実際に使用していた絵具やパレット、眼鏡とそのケース、フィンランドの陶器メーカー「アラビア」によるムーミンフィギュアなどの愛用品が並び、日常の中で創作と向き合っていたトーベの姿が静かに浮かび上がります。
映像と空間で味わう、「ムーミン」の世界

同じ展示室にある壁画の映像紹介も、見逃せないみどころのひとつ。よく観てみると小説や絵本に登場するおなじみのキャラクターたちも、さりげなく描かれています。

トーベ・ヤンソン「フェアリーテイル・パノラマ」1949年 フィンランド・コトカ市
保育園のために描かれた壁画「フェアリーテイル・パノラマ」は、2面あわせて全長約7メートルにおよぶ大作。その絵画を原寸大の映像で体感できる演出は、迫力たっぷりです。 トーベは第二次世界大戦後の復興期に、市庁舎や病院、保育園などの公共施設のために多くの壁画を手がけていました。社会とのつながりを大切にしながら、創作に取り組んでいたことがわかる温もりある作品にもぜひ注目してみてください。

「ムーミン」の挿絵をモチーフにした映像エリアでは、繊細な線描と映像表現により、まるで絵本の世界に入り込んだような没入感を味わえます。


250点以上の原画やスケッチにふれる、ムーミンたちの息づかい

通路を進むと、「The door is always open(扉はいつもひらかれている)」というメッセージが掲げられた扉が登場します。

これは、80周年のテーマでもある“誰もが互いを受け入れ理解しようとする”「ムーミン」の精神を象徴するもの。その扉の先には、小説、コミックス、絵本、キャラクターのスケッチなど、250点以上におよぶ作品がずらりと並びます。

『たのしいムーミン一家』『ムーミン谷の仲間たち』『ムーミン谷の冬』など、ムーミンたちの姿が描かれた原画やスケッチは見ごたえ十分。何度も描き直された跡からは、キャラクターへの愛情とこだわりが伝わってきます。



また、トーベが文章も絵も手がけた最後の絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』では、グワッシュという不透明絵具によるマットな質感が印象的。なかでも空を舞う気球の模様には、ちょっとした遊び心が隠れています。 あのシマ模様、どこかで見覚えがあるような……? もしかすると、ムーミンママのエプロンを連想する人もいるかもしれません。絵本の世界にそっと忍ばせたような“ぬくもり”に、思わず笑みがこぼれます。

絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』スケッチ 1977年
心に残る言葉とともに、作品の余韻を

エピローグとなるエリアでは、トーベの人生を振り返る年表や、本展のメインビジュアルにもなった「ムーミンたちとの自画像」も。

トーベ・ヤンソン「ムーミンたちとの自画像」1952年
自身をムーミンたちとともに描いた作品はとてもユニーク。トーベの創作への想いが感じられます。

展覧会の中で印象的だった言葉をカードにしたスペースもあり、「とっておきの1枚をお持ち帰りください」との案内も。 自分の心に響いた言葉を、おみやげのように持ち帰ることができます。
おみやげにもぴったり、多彩なオリジナルグッズが勢ぞろい

展覧会を堪能したあとは、会場併設の特設ショップへ。本展のために制作された限定グッズが勢ぞろいしています。作品をモチーフにしたアイテムや、「ムーミン」キャラクターの雑貨、実用的なアイテムなど、どれも魅力的。

左上:「リトルミイ ヘアバンド(税込2750円)」、左下:「ムーミンママオペラトート(税込3960円)」、右上・右下「アクリルオブジェ(税込1540円)」
おうち時間に活躍しそうな「リトルミイ ヘアバンド」や、ムーミンママをモチーフにしたトートバッグ「ムーミンママオペラトート」、人気の「アクリルオブジェ」など、こだわりのデザインが並びます。

黄色い表紙が目を引く「公式図録(税込3300円)」は、壁画をモチーフにした装丁が美しく、内容も充実。

予約販売中の「オリジナルぬいぐるみ(税込3520円)」は8月下旬から店頭販売も予定。※最新の情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。
カフェでの限定コラボメニューもお見逃しなく

また、同フロアにある「THE SUN & THE MOON(Cafe)」では、会期中だけのコラボメニューも登場。「ムーミン」の物語や世界観を表現したフードやドリンクは、見た目にも味にもこだわったスペシャルメニューです。

左上:「80th Anniversary ムーミンやしき(税込 980円)、右上:「フィッシュフライのオープンサンド~スナフキン~(税込1850円)」、左下:「ムーミンママの手料理 (税込1620円)」、右下:「ムーミンとリトルミイ、ミムラねえさんのかき氷 (税込1780円)」

展覧会の余韻に浸りながら、東京の展望を楽しめるカフェでひと休み。トーベと「ムーミン」の世界を、五感で味わえるひとときになるはずです。 トーベ・ヤンソンの創作世界をめぐる旅を通じて「ムーミン」という作品の奥行きと、彼女の人生にふれる貴重な体験を、ぜひ会場で味わってみてください。 © Moomin Characters™ © Tove Jansson Estate

ムーミンとヘルシンキ市立美術館のキュレーター、ヘリ・ハルニ氏
トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~
トーベトムーミンテン~トッテオキノモノヲサガシニ~
https://tove-moomins.exhibit.jp/
トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~
https://tove-moomins.exhibit.jp/special/collabocafe.html
「THE SUN & THE MOON (Cafe)」期間限定コラボカフェ
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モリサワ ジュンコ
Writer
物撮り写真家 モリサワ ジュンコ

魅力あふれるモノゴトをインスピレーションとともにお伝えします。デザインやアート、建築が好き
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