【広島市】「縮景園」と「広島県立美術館」で、紅葉とアートを一度に楽しむ

街中で気軽に紅葉狩りが楽しめる

世界遺産・原爆ドームがあり世界中から人々が訪れる広島市は、歴史と文化が息づく場所。四季の彩りを映す日本庭園「縮景園」と、アートを身近に感じられる「広島県立美術館」があり、紅葉と美術を一度に楽しむことができます。 JR広島駅から徒歩15分ほどの場所にある「縮景園」は、広島藩主・浅野長晟（ながあきら）が別邸の庭として築き、茶人としても知られる家老・上田宗箇（そうこ）が作庭した池泉回遊式庭園です。原爆投下でそのほとんどを焼失しましたが、約30年の歳月をかけて建物や木々を復元。市街中心部にありながら静かな庭園は、憩いの場として親しまれています。

（左上）紅葉は11月下旬頃に見頃を迎える　（左下）園内のほぼ中央に位置する茶室「清風館」　（右上）原爆の爆風にも耐えた跨虹橋（ここうきょう）は縮景園のシンボル　（右下）木々に囲まれた茶屋「泉水亭」

園内は、池に浮かぶ大小の島や優美な橋、3つの茶室などが配置され、それらをつなぐ園路をたどりながら四季折々の風景を楽しめます。秋になると萩の花が可憐に咲き、カエデやイチョウが色づき、庭園全体が鮮やかな秋色に包まれます。散策の合間には園内の茶屋「泉水亭」で一服を。抹茶と和菓子をいただきながら、園内の紅葉を眺めれば、時がゆっくり流れるような秋のひとときを過ごせます。

（左上）ロビーの大きな窓から縮景園の景観が楽しめる　（左下）『伊万里柿右衛門様式色絵馬』（右上）所蔵作品展のウエルカムギャラリー　（右下）1968年に中国地方初の公立美術館として開館

名勝・縮景園に寄り添うように建つ「広島県立美術館」。吹き抜けや大きな窓から庭園の風景を取り込み、アートと自然が心地よく調和する空間が魅力的です。こちらで鑑賞できる作品は、平山郁夫、靉光、奥田元宋といった広島ゆかりの画家の作品を中心に、日本・アジアの工芸、1920～30年代の美術作品など実に多彩。その収蔵品は約5400点にのぼり、特に注目を集めるのが、重要文化財にも指定されている『伊万里色絵花卉文輪花鉢』、巨匠サルバドール・ダリの絵画『ヴィーナスの夢』、イサム・ノグチの彫刻『追想』など。所蔵作品は年に4回程度の展示替えで所蔵作品展として紹介され、3階企画展示室では個性豊かな特別展が年5回ほど行われています。

（左）3階の展望ロビーに隣接したティールーム　（右）「ゾーナ・イタリア ・イン・チェントロ」で、庭園を眺めながら本格的なイタリアンを　

美術館にはレストランやティールームも併設され、「縮景園」の景観を眺めながらのランチやお茶も楽しめます。館内の窓から紅葉に染まる庭園を望む秋のひとときは格別。アート鑑賞と庭園散策を組み合わせれば、街中で秋の休日が過ごせますよ。

【東広島市】酒蔵が集まる「西条酒蔵通り」でおいしい時間に酔いしれて

白壁の蔵や赤レンガの煙突が並ぶ町並みを散策できる

神戸の灘、京都の伏見と並び日本三大銘醸地のひとつとして知られる東広島市の西条エリア。JR西条駅前に東西に延びる「西条酒蔵通り」には、白壁の蔵や赤レンガの煙突が並び、石畳の道とともに風情ある街並みを残しています。

（左上）秋が深まる朝には煙突から白い蒸気がふわりと立ち上る。新酒の仕込みの始まりを告げる風景も西条ならでは　（左下）「賀茂鶴酒造」の一号蔵 蔵元直売店では、酒造りの手順や道具などを見学できる　（右上）西条酒蔵通りとその周辺地域の歴史と文化を学べる多目的広場「西条本町歴史広場」　（右下）仕込み水がいたるとろで湧く

約800mの圏内に集まる7つの酒蔵を、気軽にめぐることができる「西条酒蔵通り」。多くの酒蔵には直売所が併設され、試飲しながら好みの味を探せるのも魅力のひとつ。当時の貴重な道具や資料の展示が見学できたり、各蔵の井戸に湧く仕込み水を自由に汲めたりと、酒蔵めぐりの楽しみはいろいろ。毎年10月に開かれる「酒まつり」では、全国から集まった地酒を味わえる「酒ひろば」が登場し、秋の西条は大いに賑わいます。

（左）築90年の洋館を改装したお酒の喫茶店「酒泉館」。賀茂泉の地酒やリキュールの利き酒が楽しめる　（右上）酒、塩、コショウのみで味を調えた美酒鍋　（右下）「御饌cacao」の日本酒トリュフ

「西条酒蔵通り」の周辺には、地酒にまつわるおいしい場所も点在しています。酒蔵が営む利き酒の喫茶店、仕込み水で作るベーカリー、地酒や酒粕を使った日本酒トリュフを販売するチョコレート専門店など、顔ぶれも個性豊か。さらに、西条の日本酒を贅沢に使ったご当地鍋「美酒鍋」を楽しめるお店も。秋風を感じながら歴史と酒文化に浸る、ここでしか味わえない時間を過ごしてみてください。

【呉市】瀬戸内海に浮かぶ大崎下島でのどかな島さんぽ

江戸時代に造られた石組みの防波堤「千砂子波止」

広島県呉市の南東端、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島は、安芸灘とびしま海道で結ばれた橋で渡れる島のひとつです。呉市街から車を走らせること約1時間。風向きや潮の流れを待つために多くの船が立ち寄り「風待ち・潮待ち」の港町として栄えた「御手洗の町並み」へとたどり着きます。

（左上）江戸時代の町並みが色濃く残る「常盤町通り」　（左下）築約200年の古民家を利用したショップ＆カフェ「潮待ち館」では、特産の柑橘を使ったオリジナル商品がたくさん　（右上）江戸時代の町並みに水色のハイカラな建物が溶け込む　（右下）船宿をリノベーションしたカフェ「船宿カフェ若長」。窓の外に広がる瀬戸内のロケーションもごちそう

かつての玄関口「千砂子波止」から徒歩10分圏内のコンパクトなエリアに、商家や茶屋（遊郭）、船宿や神社仏閣などが残る町並みは、重要伝統的建造物群保存地区にも選定。昭和初期に建てられた娯楽施設や爽やかな水色が印象的な洋館などのハイカラな建物も混在する、独特の雰囲気がこの町の魅力となっています。古民家を再生したショップやカフェも点在し、散策途中の休憩にもピッタリです。

大崎下島屈指のビュースポット「歴史の見える丘公園」

瀬戸内らしいロケーションを一望するなら、小高い丘に整備された展望広場「歴史の見える丘公園」へ。麓には御手洗の町並み、その先に瀬戸内の島々とアーチ橋が織り成す、のどかな風景が見渡せます。御手洗の町並みから公園まで続く遊歩道もあり、黄金色に実ったみかんの段々畑を抜ける道なりも素敵です。

【竹原市】「たけはら町並み保存地区」で町あるきとクラフト体験を楽しんで

JR竹原駅から徒歩15分ほどの場所にある「たけはら町並み保存地区」

広島県沿岸部のほぼ中央に位置する竹原は、平安時代に京都・下鴨神社の荘園として、江戸後期になると製塩業・酒造業で発展した場所。その豊かな経済力で豪商たちが築き上げたのが、重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている「たけはら町並み保存地区」です。約500mの通りには、竹原格子や棒瓦の屋根、漆喰壁など意匠に富んだ家並みが続き、歩くだけで歴史の空気を感じられます。商家を一般公開する「旧松阪家住宅」をはじめ、歴史ある建物を再生したカフェやショップ、宿泊施設など、目指して訪ねたいスポットも充実しています。

（左上・右上）竹原を代表する商家「旧松阪家住宅」。ハート型の格子も素敵。外観だけでなく内部見学もできる　（左下）軒下には素朴な竹細工が飾られている　（右下）酒蔵の一角を開放して日本酒と手仕事の品を販売する「藤井酒造・酒蔵交流館」

（左上）「まちなみ竹工房」では予約なしで気軽に体験が楽しめる　（左下）10月下旬に開催される「たけはら憧憬の路」　（右上）「まちなみ竹工房」の裏にはフォトジェニックな竹の風車がある　（右下）竹が町並みに彩を添える

竹原はその地名に由来して、竹細工が特産品として有名です。竹細工の制作・販売を行う「まちなみ竹工房」では、職人さんの指導を受けながら竹かごや風車などの竹細工づくりが体験できます。秋の夜には「たけはら憧憬の路」という竹灯りのイベントが開催され、約5000本の竹灯篭が町並みを幻想的に照らします。昼間の穏やかな町並みとは違った表情を見せ、しっとりと情緒あふれる夜のひとときを演出してくれます。

【尾道市】坂道の途中でひと休み。尾道らしさを感じる複合スポット「LOG」へ

千光寺新道に建つ複合施設「LOG」

レトロかわいいが集まる広島県尾道市は、瀬戸内海に面した港まち。路地や石段が迷路のように山手に広がることから「坂のまち」、数々の小説の舞台となった「文学のまち」、中世から続く寺院が集中する「寺のまち」、かわいい猫と出会える「猫のまち」としても知られています。そんな尾道の魅力がギュッと集まっているのが、千光寺山へと続く坂道エリアです。

インドの建築家ビジョイ・ジェイン氏が率いる「スタジオ・ムンバイ」が設計を手がけた

坂道の途中には目指して訪ねたい素敵なカフェやショップも多く、築55年のアパートをリノベーションした複合施設「LOG」もそのひとつ。アパートの面影を残すL字型の建物には、カフェをはじめ、ダイニング、ショップ、客室、ライブラリー、ギャラリーなどが入り、カフェやダイニング（夕食/予約制）、ショップは、宿泊者以外でも利用することができます。

ショップではオリジナル商品をはじめ、LOGで使われるうつわや室内着なども販売

（左）瀬戸内の柑橘を使ったスイーツが登場することも　（右）自然素材や伝統的な技術、手仕事を生かした空間にも注目

「Café＆Bar Atmosphere」では、瀬戸内の食材を使った自家製スイーツや軽食、ドリンクやナチュールワインなどが味わえます。大きな窓の外には尾道の町並みと瀬戸内の海が広がり、時間ごとに変わる光景がまるで一枚の絵のよう。坂の上で出会うこの穏やかな空間が、旅の記憶をやさしく彩ってくれます。

（左上）朱塗りの本堂が尾道の景観に映える「千光寺」　（左下）「千光寺頂上展望台PEAK」は全長63mの渡り廊下状の展望台　（右上）猫モチーフを探しながら散策してみて　（右下）全長約1㎞の遊歩道「文学のこみち」。志賀直哉や林芙美子らの一節を刻んだ25の文学碑が立つ

「LOG」がある坂道エリアには、ほかにも魅力的なスポットがたくさん。尾道を代表する古刹「千光寺」でお参りをしたり、尾道ゆかりの作家の一節が刻まれた文学碑が並ぶ「文学のこみち」をゆったりと歩いたり。道すがら出会う人懐こい猫たちも、尾道ならではの癒やしの風景です。108体の福石猫が並ぶ「猫の細道」と呼ばれる小路をのんびり散策すれば、まるで猫のように自由気ままな気分に。坂道のまちで、秋の尾道さんぽを楽しんでみませんか。

【庄原市】花畑にアップルパイに♪　とっておきの秋を探すスロートリップ

コスモスが丘陵地一面を埋め尽くす様子は圧巻

中国山地の自然に抱かれた庄原市は、秋の花と実りを楽しむ旅にぴったりのエリアです。「国営備北丘陵公園」は、約340ヘクタールの丘陵地と湖を舞台にした中国地方随一の国営公園。“ふるさと・遊び”をテーマに、花の広場や大芝生広場、里山風景を再現したひばの里など、8つのゾーンで構成されています。秋には花の広場一面にコスモスやケイトウ、ジニアなどが咲き誇り、青空とのコントラストが鮮やかな絶景を生み出します。

人気のイルミネーションイベント「備北イルミ」

さらに、例年11月～1月中旬にかけては「備北イルミ」と呼ばれるイルミネーションが開催され、公園全体が光に包まれます。100万球を超える電飾が花畑や広場、木々を彩り、昼の雰囲気とは一変。幻想的な風景が楽しめるのは、この時期ならではの特別な魅力です。

アップルパイは10時と14時に焼きたてを提供

帰り道には「道の駅たかの」へ立ち寄ってみませんか。尾道と島根県松江を結ぶ「中国やまなみ街道」の高野ICからすぐという好立地にあり、多くの人が訪れる道の駅です。冷涼な気候を生かして栽培した高原野菜や米が特産品で、なかでも「高野りんご」は糖度が高く、濃厚な甘酸っぱさが特徴のブランドりんご。それをたっぷり使ったアップルパイが大人気で、りんご本来の風味を生かすため、シナモンはあえて入れないそう。併設の工房で毎日焼き立てが提供されます。

（左上）高野りんご、庄原ぶどうなど、地元素材を使ったジェラート。ダブル（コーン）550円　（左下）りんごのオブジェが目印　（右）シードルやワインなどアルコール類も豊富

シフォンケーキ、フィナンシェ、サイダー、しぼりたてジュース、ワイン、ジェラートなど高野りんごを使った商品がたくさんラインナップ。新鮮な高原野菜や大根なども豊富にそろい、お土産探しにもぴったりです。花と果実に包まれる、庄原らしいスロートリップを楽しんでみてください。

いかがでしたか？坂の町や酒蔵のまちなど、多彩な魅力に出会える広島の秋旅。心ほどける時間を探しに行ってくださいね。