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2016.10.16
くまにリスに青い鳥♪ 陶芸作家・矢板緑さんのほっこりかわいい器をご紹介
動物や草花をモチーフにした、かわいらしい器たち。作っているのは、今注目の陶芸作家・矢板緑さん。埼玉県にある自然豊かな工房で、日々、素敵な器を生み出しています。 そんな矢板さんに、器作りをはじめたきっかけや器への思いを聞きました。
陶芸との出会いは美大。作家のアシスタントを経て独立

器作りを始めたきっかけを教えてください
子どもの頃から絵を描いたりものを作るのが好きで、美大へ進みました。そこで陶芸のおもしろさに目覚め、大学に通いながら陶芸家のアシスタントを始めたんです。 卒業後は美術教室のバイトをしながら工房を手伝っていましたが、数年で独立し、埼玉に拠点を構えて自分の窯を持つようになりました。
愉快でかわいい器たち。現在のスタイルにたどり着くまで

音の鳴るカップ「カラップ」
昔は、無地で渋めの伝統工芸っぽい作風だったんです。でも、なんだか私らしくないような違和感がずっとありました。自分の資質にないものを無理して作ろうとしてる気がして悩んでいたのですが、ある時フッと吹っ切れたんです。 このマグカップを作ったのは8年前。二重底の中に土の玉が仕込んであって、カラカラと音が鳴ります。伝統工芸とはかけ離れた、遊び心で作った器だけど、「好きな絵を描きたい、鳴らしてみたい」という気持ちをそのまま表現してみました。この時、私が素直に作りたいと思うのはこういうアプローチなんだって気づいたんです。

カモメの豆皿

秋明菊のオーバルプレートと豆皿
庭の草花や飼い猫をモチーフにした作品づくり

埼玉県にある矢板さんの工房
矢板さんの作品は、自然や動物をモチーフにしたものが多いですね。
庭に生えている草花や飼っている猫など、自分の身の回りのものからインスピレーションを受けています。私、花が好きなんですが、美大予備校時代に花瓶に挿したユリを描くのは本当に苦行だったんです(笑)。買ってきた花を描くのはウソみたいだから、庭に勝手に咲いている花を描きたいなって。

矢板さんの飼い猫
だから、木や花が自然にのびのびと生えてるこの土地を選んで工房を建てました。わざわざ切ってしまわなくても、自分が寄っていって描けるって、なんて贅沢なんだろうと思います。
実際の製作現場を見せてもらいました

作品によっていろいろな産地の土を使いわけていますが、メインは信楽の土です。 力を込めて捏ねることで、土の中の空気を抜き、硬さのムラをなくしていきます。こうやって練っているうちにお花のような形になるのを「菊練り」というんですよ。

土を充分に捏ねたら、ろくろの上で形を作っていきます。 両手にたっぷり水をつけて、くるくる回転する土を好きな形に広げていきます。
筆を使って丁寧に、素焼きに絵付け

素焼きをしたら、次は絵付けです。これは今ちょうど庭に咲いている秋明菊をモチーフに描いています。絵を描く作業はやっぱりとても楽しいですね。絵を描いたら、釉薬につけて本焼きします。
日本古来の技法「印判」で1枚1枚模様付け

このシロクマの器も、よく見ると1枚1枚柄が違うんですね
こちらのお皿は「印判」という日本古来の技法で作っています。和紙にプリントした絵を素焼きの生地に貼り、水を含ませた筆で撫でて剥がすと模様が転写されるんです。

素焼きのカップに和紙を貼り付けている様子
シロクマの器は、こうやって1枚1枚、柄を張り合わせて模様を出しています。すごく手間がかかるので、「工場で製品化すればいい」と言われたりもするのですが、その日の気分によって、シロクマの出方が変わってくるのもおもしろいんですよ。
じっくり時間をかけて本焼きしたら完成

最後に、窯に入れて本焼きします。徐々に温度を上げないと割れてしまうので、14時間くらいかけて1000度以上に上げていき、そのまま2〜3時間キープします。 その後、3日ほどかけて冷ましたら、ようやく器の完成です。
日常使いにも特別な日にも。生活を彩る器でありたい

器を手にとった瞬間、心がふっと遠くに連れ去られるような作品が作りたいですね。 毎日のご飯やお茶の時間、お客さんが来た時のちょっと特別な時間、そんな日々のどこかで、この器が食卓を彩るお手伝いができたらいいなと思っています。
矢板緑さん 後半の記事はこちら

矢板緑
ヤイタミドリ
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宇都宮薫 撮影:彌永浩次
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