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2015.07.08
透明花火に金属花火―新作が続々登場【国産花火のひみつ・後編】
※こちらの記事は2015年7月8日に公開されたものです。 日本に3軒を残すのみとなった線香花火の工房、「筒井時正玩具花火製造所」の魅力を探るシリーズ後編。今や希少な国産線香花火を足がかりに、次々と誕生しているモダンでおしゃれな新作花火を紹介します。
日本で唯一、ワラでできた線香花火

左は稲ワラでつくった花火。「スボ手牡丹」と呼ばれ、線香花火の原型とされます
「伝統を継承すること。それは想像以上に大変なことでした」。こう語るのは、福岡県南部、みやま市に工房を構える「筒井時正玩具花火製造所」の筒井良太さん、今日子さんご夫婦。 古くから日本の夏を象徴するものの一つである線香花火は、およそ300年前に誕生したとされています。現在、日本には国産の線香花火の製造所が3軒残っていますが、稲ワラを使った線香花火を製造しているのは、「筒井時正玩具花火製造所」のみ。その理由は、原料の入手が困難なためです。
冬の闇夜にキラキラ輝く、できたて線香花火

「冬の、できたて線香花火」は8本入324円
線香花火をつくりはじめてまもなく、取引していたニカワ業者が製造を終了してしまったのです。その時に有力情報を聞きつけて向かったのが、建造物の修復のためにニカワの研究をしているという奈良の研究所。事情を話したところ、工房のための線香花火用のニワカをつくってくれることになりました。 ところが、ニカワの仕入れの算段がついたと思った矢先、稲ワラ不足の問題が浮上してきました。 稲ワラは昔と違って米が品種改良されたため線香花火に向かなくなり、花火をつくるためのワラを探すのに日本全国をめぐったといいます。その結果、やっと探しあてたのが新潟、四国、熊本にある3か所の農家や生産グループでした。
こうした苦労の末に生まれたのが、「冬の、できたて線香花火」です。 稲ワラでつくる線香花火は、ニカワが乾く温度に合わせて冬しか作業ができません。火薬を使うため、暖房が入れられない作業場で寒さに耐えながらの苦労の多い仕事。だからこそ、「上質な原料で一本一本丹精した線香花火なのだから、夏を待たずして、いっそできたてを楽しんでもらいたい」との思いから誕生したのだそうです。 実際、冬場の花火は夏と違ってしんと静かで、空気も澄んでいるため光が冴えて見え、ロマンチックなのだそう。
シンプル&おしゃれな、新作花火ぞくぞく

「金属花火」シリーズ
最近、筒井さんご夫婦は、線香花火のほかに新しい発想の手持ち花火を開発中。「伝統的な花火だけでなく、新しい花火づくりにも挑戦していきたい」と、ご夫婦ともに意欲的です。 たとえば、「透花(とうか)」は黄色、緑、ピンク、オレンジ色と着色した火薬が透けて見える花火です。 また、今年6月に発売したばかりの金属花火シリーズは、金属の種類や粒の大きさで燃え方の表情の違いを楽しむ花火。「チタニウム」「マグナリウム」「アルミニウム」の3種類をラインナップしていて、それぞれに“しとしと”、“ぱちぱち”、“さらさら”と、個性的な火花を放ちます。

「透花(とうか)」は4本入540円
「花火って楽しいもの」を子どもたちに伝える

花火の試用のための暗室。天井にシャワーを設けています
2014年6月に敷地内にギャラリー兼直売ショップをオープン。ギャラリー内には花火の試用ができる暗室を設けました。 「ここで子どもたちに向けてワークショップを積極的に開いて、花火の楽しさ、美しさを広めていきたいですね」と今日子さん。 筒井さんご夫婦の二人三脚の取り組みは、今、ようやく花を咲かせはじめたようです。

まるで駄菓子屋のような直売ショップのコーナー
ことりっぷマガジン2015年夏号 発売中
「筒井時正玩具花火製造所」については、ことりっぷマガジンでも少しご紹介しています。今号の特集は、「こころうるおう 沖縄の森カフェ、海カフェへ」。

筒井時正玩具花火製造所
つついときまさがんぐはなびせいぞうじょ
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