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2017.07.10
夏限定!京都の老舗和菓子店が手がける金魚がかわいい涼やか錦玉羹
京都には、夏が待ち遠しくなってしまう和菓子があります。 見た目にも涼やかなその和菓子は、毎年初夏が近づけば「そろそろ販売開始?」との声がちらりほらりと聞こえてくるほどです。みんなのお目当ては、和菓子の老舗「京生菓子司 松彌(まつや)」が手がける創作和菓子。その魅力をご紹介します。
明治21年創業の老舗が生み出す「創作和菓子」
白いのれんが涼やか
「松彌」は地下鉄京都市役所前駅から歩いて5分。二条通の少し北側、新烏丸通沿いにあります。 明治21年に「いろは餅本店」として創業したのが始まりで、戦後に現在の地に移った際に屋号を「京生菓子司 松彌」と改めました。
創業当時の名残
創作和菓子を得意とし、通年商品は「高瀬川」にちなんで作られた「舟入」ただひとつ。常時6~7種類ほど並ぶそのほとんどが、季節限定商品なのです。
見た目にも涼やかな「金魚」と「花火」
梅酒風味の寒天ドームに金魚が泳ぐ(1個310円)。毎年GWごろから8月末までの販売
なかでも人気が高いのが、夏祭りの金魚すくいをイメージした「金魚」。 ドーム型の寒天の中で泳ぐ、リュウキンとデメキンが何とも涼やかで、いつまでも眺めていたくなります。 寒天と砂糖を煮詰めた錦玉を流し入れては、固まるのを待ち、そしてまた錦玉を重ねる。この気が遠くなる工程をていねいに繰り返すことで、美しい水色のグラデーションが生まれます。これらの手仕事はすべて、ご主人の國枝純次さんがひとりで手がけているのです。
花火を真上から見下ろすような「花火」(310円)は7~8月末までの販売。下の餡は観客をイメージ
他にも、新潟県の花火大会「片貝まつり」にインスピレーションを受けて誕生したという「花火」は、「金魚」と並ぶ看板商品。その美しさのとりこになる人も多い一品です。 実際にご主人自ら足を運び、花火大会の運営本部に「花火」を届けたこともあるのだとか。
夏の定番「あゆ」と遊びごころあふれる「あまご」
「あゆ」(写真上)は5月下旬~落ち鮎の頃、「あまご」(写真下)は3月下旬~9月初旬頃の販売(各170円)
そして、京の夏の風物詩である「あゆ」ももちろんオリジナル。 ひとつひとつ手作業で仕上げる愛くるしい表情と、口あたりなめらかな求肥が特徴の人気商品です。 実は「松彌」には、「あゆ」にそっくりの「あまご」も存在します。「あゆ」との違いは、背中のシマシマとしっぽの大きさ。よく見比べると、「あまご」のしっぽの方がちょっぴり大きいのです。
左が「あゆ」、右が「あまご」の中身。どちらも求肥
しかし、それだけではありません。「あゆ」のおなかの中が真っ白なのに比べ、「あまご」のおなかは真っ黒。これは、求肥に波照間産の黒糖を使っているから。 黒糖の求肥は珍しく、ひとくち食べて驚かれる方も多いのだそう。
ご主人のセンスとやさしさで誕生
ご主人は和菓子製造一級技能士でもある
「あまご」誕生のきっかけは、「あゆ」を作っているときに遊びに来たご主人の釣り仲間のひとこと。「ニジマスはないの?あまごはー?」。その冗談を本当にかたちにしてしまう、ご主人の遊びごころがすてきです。
1995年ごろから今の4代目「金魚」に
今や定番となった「金魚」は、実は4代目。はじめの頃はドーム型ではなく、棹菓子の要領で四角いかたちをしていました。しかし、サイズを整えるために包丁を入れる際、金魚も一緒に切れてしまうことがあり、それをかわいそうに思ったことから、今のドーム型になったのです。
お店で出迎えてくれる金魚と、ご主人が手を加えた抜き型
時には、抜き型すらも自ら作ってしまうというご主人のユニークな発想とやさしさが、夏の訪れを恋しくさせる創作和菓子を生み出しました。これまで手がけた創作和菓子は、なんと3000種類を越えるのだとか。 「松彌」ならではの京の和菓子で、涼を感じてみませんか。
京生菓子司 松彌
キョウナマガシツカサ マツヤ
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田中 麗 写真:杉沢 栄梨、田中 麗
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