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2017.12.22
「おいしい」でつながる食卓を日本の町にひとつずつ。「キッチハイク」が提案する“みん食”のかたち【食卓のタネ】
「キッチハイク」は、2013年5月から始まった料理する人と食べる人をつなぐ地域コミュニティサービス。 料理を振る舞いたい人(COOK)がごはん交流会(Pop-Up)をキッチハイクのWebサイト上に掲載し、食べたい人(HIKER)が申し込み・決済すれば参加できる仕組みで、サービス開始から4年あまりで1万食のマッチングが達成されました。 達成を記念して、利用者の声をまとめた「みん食白書」が公開したとのこと。
作る人も食べる人もフラットに食事が楽しめる空間

キッチハイクのPop-Upの風景。おいしい匂いに心がほぐれるのか、「はじめまして」から数分で朗らかな会話が生まれ、食後の片づけをするときには参加者全員が協力し合う空間が生まれる(写真提供:キッチハイク)
「いわゆる飲食店(提供者)とお客さん(消費者)の関係ではなく、料理を振る舞う人も食べる人も自然につながってフラットに楽しめる“食卓”を提供するのが『キッチハイク』です」 そう話すのは株式会社キッチハイク共同代表の山本雅也さん。 キッチハイクがサービスを通じて提案するのはみんなでごはんを食べる「みん食」という食のスタイル。ひとりで参加する20~30代の女性が多く、一度参加すればリピーターになる人も増えているとのこと。

キッチハイク独自調査「みん食白書」によれば、週に4日以上ひとりでごはんを食べる人のうち半数は、誰かと一緒にごはんを食べたいと思っているとのこと(写真提供:キッチハイク)
「ハイカーさん(食べる人)の中には月に10回以上参加する人もいます。思いやりをもって料理を作る人が見えることや、“おいしい”と分かち合える人がいることなど、その場のコミュニケーションに喜びを感じる声が多いですね」(山本さん) 共同代表/CTOの藤崎祥見(しょうけん)さんはPop-Upの空気感をジャズのセッションにたとえます。 「料理を振る舞う人も食べる人も、食卓という空間を一緒に作り上げるメンバーのひとり。作っているのはごはんだけではないんですよね。ジャズが奏でる音楽のように、キッチハイクでは毎日即興で食卓が彩られています」
多くの人がキッチハイクに足を運ぶ理由
株式会社キッチハイク共同代表/COOの山本雅也さん(左)と共同代表/CTOの藤崎祥見さん(右)
キッチハイクがなぜこれだけ支持されているのか。それは「共感」と「偶然の出会い」にあると言います。 「たとえば日本酒とカレーの会という人気のPop-Upがありました。このPop-Upに参加する時点で日本酒とカレーが好きだという共感が参加者同士に出来上がっているんです。僕も参加したのですが、食卓の会話は『おいしいですね』『うん、おいしい』このやりとりから始まります。そんな空間がとてもフレンドリーで素敵だったんです。“おいしい”の共感があるとコミュニケーションのハードルは一気に下がることがわかりました」(山本さん) 「出会う機会のない人と気軽に会えることが嬉しいという声をたくさんいただきます。想像していなかった偶然の出会いに心が踊る瞬間ってありますよね。インターネットが普及し生活がどんどん便利になる一方で、偶然の出会いを求める気持ちは矛盾せずに同居しているのだと思います」(山本さん)
日本中の町にキッチハイクの「食卓」を

KitchHikeチームのまかない風景。毎日のお昼ごはんをメンバー当番制にして、みんなで作って食べているそう(写真提供:キッチハイク)
山本さんと藤崎さんが掲げる次の目標は、町にひとつ、みんなで食卓を囲む『みん食』の拠点を作ること。 「地域ごとにあるキッチンと連携して、食を通じた交流の場となるPop-Upをもっと増やしていきたい。住む町ごとに“みんなでごはんを食べる場所”があると、もっと楽しい暮らしになるはず。人と人がつながれば地域のコミュニケーションも活性化していくのでは」と期待を込めます。 藤崎さんは「大げさに言えば“人間の生活の肯定を呼び戻す”ことをしたい。古来からみんなで食事をすることは当たり前でした。僕らは遺伝子レベルで食卓を囲む楽しさは知っているんだと思います」と締めくくりました。
「みんなで食卓を囲む生活を当たり前にしたい。ゆるやかな人のつながりは、暮らしをもっと楽しくしてくれるはずです」と決意を語ってくれました
----- 取材のあと、実際に上野のKitchHikeオフィスに併設されるキッチンで行われたPop-Upに参加してきました。 食事が始まって数分、「これおいしいね」「ふだんどんな食事をしているんですか?」「ふるさとのごはんを教えて」など会話は途切れず、初対面の人たちがいとも簡単に笑顔を交換できることに驚きとともに感動を覚えました。 普段は飲食店で料理人として働くCOOK(料理を作る人)は 「普段の仕事の“手応え”が希薄になっていることを感じていました。キッチハイクを利用し、実際に目の前で食べてもらうことでその“手応え”を取り戻したいと思ったんです」 とCOOKに応募した理由を教えてくれました。 参加者からは「私の肩書を知らない人とゆるくつながれる場所が欲しかったんです。キッチハイクの食卓は肩書を取っ払い、ただ“おいしい”でつながれるからうれしいんです」という声を聞きました。 今日も日本のどこかでキッチハイクのあたたかい「食卓」は生まれています。 忙しい日々の中で、ふとした会話で気持ちがほぐれる時間を味わいに、キッチハイクに足を運んではいかがでしょうか。
「キッチハイク」はこちらから
文・写真:平山高敏 編集:島田零子
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