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2018.04.16
しなやかな自然体で伝統を受け継ぐ。[仐日和/岐阜県岐阜市] byONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から岐阜県岐阜市の「仐日和」を紹介します。
モダンで愛らしい、現代人の感性に合う伝統工芸品を。

『かがり(傘骨を補強するために内側に巻きつける糸)』に工夫をこらすなどして、さらなる魅力をプラス。
国土の大半が温暖湿潤な気候に属し、豊かな水に恵まれた日本では、雨はなじみ深いもの。土地や人々に潤いをもたらすだけでなく、四季折々の豊かな風情までも感じさせてくれます。 そんな気候と風土に育まれた伝統工芸品が、日本古来の『和傘』です。骨組みを作る『つなぎ』、骨の間隔を均等に調整する『まくわり』、本体の和紙を張る『張り』など、その工程の全てが手作業なのです。更に竹・木・柿渋・和紙などの自然素材を主な材料として作られているので、手にしっくりとなじみます。

『かがり』を施す河合氏。「開けば花、閉じれば竹」と謳われた和傘の美しさを丁寧に紡ぐ。
優れた実用品であるとともに、目にも美しい工芸品でもある逸品。その世界に弱冠20代にして飛び込み、女性ならではの可愛らしく華やかな商品を作り続けているのが、『仐日和(かさびより)』の河合幹子氏です。 和傘はその精緻(せいち)な構造を作り上げるために、100以上もの工程を必要とします。気が遠くなるような多さのため、本来は分業制となっていますが、河合氏はそれらをほぼ1人で手がけています。できるだけ多くの数を作るため、ロクロに骨をつなぐ工程だけは外注しているといいますが、それでもほぼ単独で和傘を作り上げる技術は出色です。
気負わずしなやかに、伝統工芸を受け継ぐ。

和傘の文化と歴史は岐阜を流れる清流・長良川によって育まれた。
祖父母が和傘職人という家系に生まれて、叔父も老舗の和傘屋を営んでいるという河合氏。「和傘職人になるにあたって特に劇的なきっかけや使命感があったわけではなく、和傘という存在が常に身近にあったからなんです」と語ります。 小さい頃はしょっちゅう叔父の会社に出入りしていましたが、数年前に人手不足などもあり、「やってみないか」と声をかけられたそう。そして和傘の仕事に本格的に触れ始めて、和傘職人として歩み出した河合氏。

今も残る往時の街並みに、自然に映えてなじむ造形。
「その後、母が体調を悪くしてしまったため、今は和傘とは関係のない実家の家業を手伝いながら和傘職人として活動しています。全てが自然な流れで、『伝統を絶やしてはいけない』『私が受け継がなくてはいけない』といった気負いはありませんでした」と笑います。 淡々と語る河合氏の口調は、実にナチュラル。和傘の材料の流通や、職人たちの往来を見守ってきた岐阜の清流・長良川のように、ゆったりとした構えが深い懐を感じさせてくれます。
ニーズに合わせて「道具としての和傘」をお届け。

自然体かつしなやかな感性で、気負わずに伝統工芸と向き合う。
河合氏の手仕事は丁寧かつ繊細。「一つひとつの作業を確実にこなして、全ての工程において気を抜かないように心がけています。些細なことで傘が駄目になってしまうので、一瞬一瞬が真剣勝負です」と語ります。 また、「商品かつ道具である傘を作る」ということもモットーとしているそうです。 「いわゆる『作家』ではないので、お客様の要望にはできるだけお応えしています。色・柄・名入れなどのご希望を可能な限り承って、それぞれのお客様に合った和傘を作っているんです。『職人』や『伝統工芸』と聞くとハードルが高く思われるかもしれませんが、手になじむ日用品としてご愛用頂きたいので、ぜひお気軽にお問い合わせください」とのこと。 河合氏が作る和傘は、基本的に1点物のオーダーメイド。特別でありながら身近な道具を堪能することができます。
「和傘」という存在を身近なものにしていくために。

手の届かない芸術品ではなく、日用品としての「道具」を作る。
「和傘をどのような存在に感じてほしいですか」と尋ねたところ、河合氏は以下のように答えてくれました。 「受け取り方は人それぞれなので、お好きなように感じて頂きたいです。使うために、飾るために、お客様によって用途は様々ですけど、それぞれの楽しみ方と使い方で親しんで頂きたいと思っています。私の方からは『和傘はこういうものだ』といった概念は示しませんし、自分でも考えないようにしています。そういったこだわりを持ってしまうと、お客様のご要望に応えられなくなってしまいますから」と河合氏は語ります。

蛇の目傘・番傘・日傘・野点傘(大傘)など、様々な注文を受け付けている。大きさ・柄・色合いなども要望可。
かつて『民藝運動』を起こした思想家・柳宗悦(やなぎ・むねよし)氏の定義にも通じる心意気。「人々の暮らしになじむ道具を作る」という基本を重んじる、若くも頼もしい職人です。
日々の暮らしを彩る美しく使いやすい和傘を。

三日月状の切り替えが小粋な『月奴(つきやっこ)』。花柄と組み合わせた『花月奴』も人気。
昔はシンプルな無地などが主流だったという和傘ですが、現在は柄物が多く見られるようになりました。河合氏の作る商品もカラフルで華やかなものが多く見受けられます。「祖母が柄物が好きでよく使っていたので、その系統を受け継いでいるんです。特に三日月状の色の切り替えが特徴的な『月奴(つきやっこ)』を多く製作していて、粋な色合いを楽しんで頂きたいです」と河合氏。

茶席を華やかに引き立てる『野点傘(のだてがさ)』。
更に、個人用として親しまれてきた『蛇の目傘』や『番傘』だけでなく、茶席などで用いられる大きな『野点傘(のだてがさ)』も作っています。直径が3尺(約90cm)にも及ぶ大きさで、それ以外にも、様々なサイズの和傘の注文を受け付けているそうです。 「日傘にも力を入れているので、そちらもぜひお手にとってみてください。雨でも晴れでも身近に携えられる和傘を楽しんで頂きたいです」とのこと。
自然体でいながら将来を見据える。

河合氏の仕事道具。かつて街中が和傘で彩られていた岐阜の地で、粛々(しゅくしゅく)と技を受け継ぐ。
「現在は自宅としているアパートの部屋で作っていますが、いずれは工房を立ち上げて、より良い製作環境を整えたいと考えています。ベテランの職人さんたちに親切に教えて頂いたので、私自身もいずれは誰かに教えていけるような場所を作りたいんです」と河合氏は語ります。 伝統文化に携わる職人の生活は、年々厳しさを増しています。ライフスタイルの変化による需要の激減、手間と時間のかかる作業に反して不十分な収入、などなど――そんな逆境の中でも暮らしていけるだけの仕事を確保し、和傘職人という職業を次の世代につなげていきたい――先日30代を迎えたばかりでありながら、遠い未来をも見据えた河合氏の取り組みに、今後も注目が集まります。 写真提供:仐日和

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