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2015.12.04
パリのはずれの高台の街を舞台に30代のリアルを描く『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』
メニルモンタンという街をご存知ですか? パリのはずれ、20区の高台にある街です。そこにはユニークなバーやカフェが立ち並び、アーティストや映画関係者が集まってくるそうです。まだ、それほど有名な街ではないけれど、新しいカルチャーの発信源として注目されています。 明日から公開される映画『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』は、メニルモンタンで暮らす30歳前後の主人公たちの等身大の物語。共感できるところがたくさんある作品です。
生活を変える決心をする33歳のアルマン
モラトリアムなアルマンと親友のバンジャマン
ボルドーの美大を卒業したアルマン(ヴァンサン・マケーニュ)は定職に就けず、親友のバンジャマン(バスティアン・ブイヨン)と、なんとなく冴えない毎日を過ごしていました。 33歳の誕生日を迎えたアルマンは、そろそろ生活を変えなければいけないと思い、「仕事を見つける。運動を始める。タバコをやめる」という決意をします。
アルマンはアメリに一目惚れをする
ジョギング中にアメリとぶつかるアルマン
美術ライターを目指し、画廊で働いている27歳のアメリ(モード・ウィラー)は、可愛すぎる自分の名前が嫌いでした。 ある日、公園でジョギングをしている時、走ってきたアルマンとアメリはぶつかってしまいます。アメリに一目で恋をするアルマン。ところが、それから何度公園に行っても、アルマンはアメリと会うことができず、ガッカリします。 その後、アメリが夜道で2人組の男に襲われた際、偶然通りかかったアルマン。前に進み出たアルマンは、男にナイフで腹を刺されてしまいます。
病院に運ばれたアルマンは、入院中、付き添ってくれるアメリと親しくなります。やがて2人は恋人同士に。 そんな中、バンジャマンも病で倒れ、入院することに。彼は療法士のカティア(オドレイ・バスティアン)とカップルになり、回復したアルマンとバンジャマン、そしてそれぞれの彼女の4人で、スイスの小さな村ファンオーにあるカティアの叔父の山小屋で楽しく過ごします。
アルマンとアメリの関係は順調に思えたが…
アルマンは何もかもうまくいっていると思っていましたが、ある時、アメリが突然泣き出してしまいます。アルマンには彼女の涙の理由が全く分かりません。アメリには、アルマンに隠していることがあったのです。そのせいで、2人の間には溝ができてしまいます。 果たして、アルマンとアメリは関係を修復することができるのでしょうか…?
撮影には独特の手法が使われている
本作では、登場人物たちが観客に語りかけるモノローグ形式が使われています。アルマンやアメリがシーンの途中で、画面に向かって自分の気持ちを吐露するのです。 本作の脚本も手掛けたセバスチャン・ベベデール監督は「2009年から2013年のフランス。まさに僕たちが生きているこの時代を語るために、そして30代の人生のある季節を語るために、この演出が必要だった」とコメントしています(フランスでは2013年に公開)。この演出は、現代を生きる30代の主人公たちの本音を浮き彫りにするのに効果的で、同世代の観客の共感をより高めていると思います。 リアルなのに、コミカルでユニークな映画『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』。観ていると、自分もメニルモンタンという街に溶け込んだ気持ちになりつつ、アルマンやアメリのモノローグに「あるある!」と思ったり、彼らを応援したりしながら楽しめる映画です。
『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』 (C)ENVIE DE TEMPETE PRODUCTIONS2013 12月5日(土)より、シアター・イメージフォーラムにて公開、ほか全国順次 配給:東風 公式サイト:http://menilmontant-movie.com/
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清水久美子
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