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2019.10.11
海の色のように、訪れるゲストによって変わる不定形の魅力と、強制されることのない多彩な過ごし方。[bbb haus/福岡県糸島市] by ONESTORY
日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から福岡県糸島市の「bbb haus」を紹介します。
人気雑貨店が手がけたオーシャンビューのゲストハウス
2018年2月、福岡県糸島市の海沿いにゲストハウスが誕生しました。客室はわずか5室。しかしそれぞれの部屋はもちろん、ラウンジやダイニングからも日本海を一望する館内は、すべての場所が特等席。この気持ちの良い空間でゲストは日常を離れ、思い思いの時間に浸ることができるのです。 このゲストハウスを手がけたのは福岡市薬院にある人気雑貨店『B・B・B POTTERS』。1991年のオープンから機能的で日常に取り入れやすい雑貨だけをセレクトし続け、街の発展にも一役買った名店です。 しかし実際に糸島を訪ねてみると、その事前情報から想起するイメージとは若干異なりました。雑貨店が手がけたゲストハウスだからといって、おしゃれな雑貨を並べて表面を取り繕っただけの宿ではありません。海と木々と素敵なモノに囲まれ、日常を離れた時間に浸る。そんな特別な体験を提供すべく、無駄を省きシンプルにまとめられた施設なのです。 ただ波の音に包まれるだけの穏やかな時間。ローカルな海の景色を眺めながら味わう地元の食材。“何もしないこと”を誰に咎められるでもないという贅沢。忙しい毎日との落差があるほど、より心に刻まれる体験。誰しもの人生において、きっと何かのきっかけとなりそうなゲストハウス、その魅力をご紹介します。
見る人の心を映すような眺めは、ゲストハウスの魅力そのもの。
国定公園の豊かな自然に囲まれたゲストハウス。
「この海ね、見るお客様によって、面白いほどいろいろな海に例えられるんです」 窓の外に望む海を眺めながら、石井風子氏はそう笑いました。欧州から来たゲストは、この海を見てノルマンディーの海を思い出すと言いました。オランダ出身の夫婦は、オランダによく似た海があると言いました。あるいはアメリカ人は、西海岸を思い出すと。見る人の心に触れ、記憶を呼び起こすような風景。実はこの話こそ、ここ『bbb haus』の魅力を伝える重要なエピソード。それぞれの心象風景を映し出す景色、思い思いの過ごし方ができる空間とサービス。ではさっそく、この宿の不思議な魅力を辿ってみましょう。
多くの選択肢を提示しつつ、「何もしない」ことの意味も伝える。
麦わら帽子やサンダル、ヨガマットなどは自由に利用可能。
たとえば温泉旅行に出かけたとき。温泉に入って、広縁でくつろいで、夕飯を食べて、もう一度温泉に浸かる……。繰り返す日常を離れるために旅行に行っているのに、旅先でもなお、知らずにルーティンになってしまうことが多いもの。もちろんそれも幸せな時間ではありますが、ここ『bbb haus』はその在り方に異を唱えます。 舞台となるのは1970年代前半に建てられた海沿いの建築物。国定公園に囲まれた場所であるため、近年話題の糸島にあって、周辺が開発されることはありません。海辺にポツンと佇むこの宿にチェックインし、ゲストがまず考えるのは、「さあ、ここで何をしよう?」ということ。客室にテレビはありません。プレイルームやカラオケももちろんありません。そんな場に身を置いたゲストがやがて「無理に何かをする必要はない」と気づいたところから、ここでの時間が始まるのです。
買ってきた食材をミニキッチンで調理、汚れた服をランドリーで洗濯。それらももちろん自由。
しかし、ただ放り出されるわけではありません。ふと「あれがあったらいいな」と思うようなものは、館内の随所にさりげなく配置されているのです。無駄を省き、可能な限りシンプルに、ただ選択肢を提案してくれる。それがこの『bbb haus』のスタイルなのです。
ただオーシャンビューであること以上に、意味のある海の存在。
海と一体になるような1階客室のバスルーム。
客室は全5室。それぞれの部屋に異なるデザイナー家具が配され、雰囲気は異なりますが、オーシャンビューであることは共通。借景というにはあまりに存在感のある海が、非日常の世界へと誘います。館内を満たすパインツリーの香りは、この施設のためにオリジナルでブレンドされたアロマ。耳に届く波音や鳥の声とともに、五感すべてで海辺を感じることができます。
2階の客室からはより開放感のある海景色を眺めることができる。
1階の2室はバスルームとウッドデッキを備え、海をより身近に感じることができます。2階の3室はシャワールームのみですが、代わりにより雄大な海景色を眺めることができます。どちらも捨てがたい魅力の部屋は、ただ眠るだけではもったいない空間。デザイナーズチェアが置かれたラウンジや併設されたカフェからも、異なる角度で海を眺めることができます。浜辺まで下りたければ廊下に準備されたビーチサンダルと麦わら帽子を持って。眼の前の砂浜は周辺から隔離され、観光客はほとんどやって来ない、地元住民しか知らない場所。木々が茂るエリアを散策したいときは、オーガニックの虫よけスプレーをお忘れなく。デッキにはハンモックも吊るされています。
部屋ごとに印象が異なるインテリア。スタンダードな名作家具やアイテムを配した設え。
デッキに座ってただ波音に包まれる。海を望む客室で読みかけの本を読む。ラウンジのチェアに座って、好きなお酒を傾ける。ビーチサンダルに履き替えて浜辺を散歩する。道中に買ってきたフルーツをキッチンで剥いてみる。あるいはデスクに座って久しぶりの人へ手紙を書いてみるのも良いかもしれません。いろいろな人がそれぞれの故郷の景色を思い浮かべた海のように、訪れる人によって姿を変え、異なる魅力を発信する空間。ここには、何ひとつ強制されることのない、十人十色の楽しみ方が待っているのです。
旅の記憶が蘇る、記念グッズもいろいろ。
手紙や絵を書きたくなったらパントリーにて販売中の筆記用具を。
訪れる人により姿を変える“不定形の魅力”に浸り、それぞれの時間を過ごす。帰り際には、その思い出があれば十分かもしれません。しかしここは、博多を代表する雑貨店『B・B・B POTTERS』が手がけるゲストハウス。思い出とともに持ち帰れるお土産にも、抜かりはありません。 アメニティ、タオル、リネン、食器など、ゲストハウスで使用されるものの多くは、併設されたショップでも購入可能。館内を満たすパインツリーのアロマオイル、さらりとした気持ちの良いバスタオル、なめらかな肌触りの枕カバーも並べられています。地元糸島産のもの、オリジナルのもの、海を感じるもの。シンプルでセンス良く、日常に取り入れやすい雑貨の数々は、旅の記憶を鮮やかに蘇らせてくれそうです。 日常から離れ、海の時間を過ごし、また日常に戻ってくる。その経験はきっと、誰しもの人生に少なからぬ影響を与えてくれることでしょう。
オリジナルグッズも豊富。宿の近くにある「芥屋の大門」という岩山と海をモチーフにしたロゴが目印。
bbb haus
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