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余白があるから面白い。第一歩は町民シェフのランチから。[厨ファミリア/島根県津和野町] by ONESTORY

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余白があるから面白い。第一歩は町民シェフのランチから。[厨ファミリア/島根県津和野町] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から島根県津和野町の「厨ファミリア」を紹介します。
山すそにある『厨ファミリア』。宿泊棟もある。
「津和野にこんな美味しい食材が育っていたなんて!」。そんな歓声がお客さんから上がります。地元の人々の毎週木曜日のお楽しみは、『厨ファミリア』のランチ。昨年まで空き家だった山裾の元ユースホステルに、今では明るい笑顔の花が咲きます。
高津川天然稚鮎のオイル煮などを盛り合わせた『たべるを定食』。
県内者、県外者、U・Iターン者……。様々な人がキッチンに立つ。
『厨ファミリア』は2016年7月にオープン。週替わりで地域の人がシェフとしてキッチンに立ち、地元食材を使った「モク曜日の昼餉」を提供します。ある日は今年初めて稲作に挑戦した山田氏の「新米を美味しく食べる昼餉」だったり、またある日はイギリス人ニュートン夫妻のイングランド料理だったりと、シェフの年代も国籍も職業も様々。献立も魅力的で、例えば農家の中湯氏の日は、豆腐グラタン、若鶏の和風ソース、胡桃とレーズンのパン、鰹のカルパッチョなどに、ビュッフェ式のサラダとスープつきで1,000円! 20食が毎回売り切れてしまうのも納得です。
在来ワサビを復活させようと奮闘中の山口敦央氏。
きっかけは「地域の人と交流できる場が欲しい」「空き家を改修して自分たちが集まれる場をつくりたい」という津和野高校の生徒の声でした。同校の高校魅力化コーディネイター・中村純二氏がその想いを温め、「リノベーションプロジェクト(リノプロ)」を始動。閉館したユースホステルを高校生12人や町民と一緒に改修しました。そして、「たべるを」という食のブランドでレストラン監修などを行う國方あや氏、実家が津和野町で150年続く種苗店で、「タネの図書館」の企画を実施する俵志保氏の3人で『厨ファミリア』を立ち上げました。
県外シェフによる出張も。写真は山口市『オットバル』の鳥居シェフ。
様々な生産者が食べ物を持ち寄ってマルシェが開かれることも。
箱ができたら、次はどのように活用するか。町には、若い人が集まったり飲んだりする「場」がないだけではなく、若者同士のコミュニティや上の世代との交流も固定化していて、横のつながりという「輪」も不十分でした。中村氏はこの場所を高校生だけでなく、集う場のない若い世代や、減少する若年女性、まだまだ地元人との間に壁を感じている移住者など、誰もが気軽に集まれる場にすることを目指しました。
津和野なごみの里近く、田園風景が広がる山あいにある。
「人のつながりに関する課題を解決していかなければ、急激な人口減少によりサービスも活力も失われているこの町を元気にすることはできない」。そして始まったプロジェクト第一弾が、誰もがキッチンに立ち、誰もが集うことのできる「モク曜日の昼餉」でした。

単なる食堂ではありません。津和野で採れた野菜のマルシェを開いたり、地元のトチコロビ谷の野良ワサビの再生活動を紹介したり、音楽を楽しむ「キン曜日のDJナイトファミリア」や「ド曜日の美食昼餉」など企画も広がっています。最近では、猪ジビエの流通で起業を目指す町内の若い女性が月1で猪BBQイベントをスタート。また宿泊棟を利用してゲストハウスをやりたいという女性が実現に向けて建築基準や消防法をクリアできるか検討中だとか。

石黒トモエ氏の『星空食堂』の昼餉「雑穀プレートビュッフェ」。高きび味噌ジャガやコーンご飯など魅力的な料理ばかり。
そう、『厨ファミリア』――名前はスペインの「サグラダ・ファミリア」に由来しているのです。中村氏はここは未完成の場だと話します。人と人が「つながる場」であり、アイデアや可能性を「生み出す場」であり、アクションのはじめの一歩を「踏み出す場」。安心して失敗できる、実験室のような場として活用してほしいというのが願いです。まだまだ余白をいっぱい残していますが、それを町のみんなで埋める作業そのものが、ワクワクして面白そうです。津和野のファミリア、どんな大作になるのか楽しみですね。

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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