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2020.09.23
創業は江戸時代!京都・西陣の地で200年愛され続ける、油専門店「山中油店」
観光のまちとして人気の高い京都。祇園や河原町といった華やかなエリアから一歩足をのばせば、京の人たちの暮らしや日常の風景を目にすることができます。西陣もそんなエリアのひとつ。京都の歴史と文化を感じられる情緒のあるまち・西陣で、江戸時代から続く油専門店「山中油店」を訪れてみました。
国指定登録有形文化財の京町家がお店
先祖が醤油などを取り扱っていたことから「山」に「麹」と書かれたマークが描かれている
市バス「丸太町智恵光院」から徒歩3分、丸太町通の一筋北・下立売通沿いに建つ、ひと際重厚感のある京町家が「山中油店」です。創業は江戸後期の文政年間(1818~1830年)、現在の地に初代がお店を開いたのが始まりです。
店内には歴史を感じさせる道具や看板が並んでいる
創業当時から受け継がれるどっしりとした間口の広い京町家は、国の登録有形文化財および京都市の重要景観建造物に指定されている貴重な建物。店内では、食用の油はもちろんのこと、コスメとして使われる椿油や建築物の修理のための油など、ありとあらゆる用途の油がそろっています。
創業当時は、灯用の油を取り扱う
油は祇園祭の山鉾のメンテナンスにも使われる
元々、創業当時に取り扱っていた油は食用ではなく灯として使われるものでした。神さま仏さまへお供えする灯火・お燈明(とうみょう)や、人々の暮らしを照らす光として、油は大変貴重なものだったのです。現在のように食用として油が使われるようになったのは、明治から大正にかけてのこと。
一升瓶単位でなたね油を買いに来る地元の人もいる
当時は主になたね油が使われていましたが、次第に胡麻油も取り入れられるようになりました。「山中油店」では、こうした時代の変化に応じて、さまざまな油を取り扱うようになります。
品質とおいしさにこだわった個性豊かな油を販売
国産なたね油 左:810円(180g)、右:648円(110g)
取り扱う油の種類が増えても、風味や品質を大切にした商品を提供するというこだわりは当時から変わらないもの。例えば「国産なたね油」は、国産のなたねを薪で焙煎し、手作業で搾るという昔ながらの製法で生み出されます。化学的な処理は行わないため、自然のそのものの豊かな風味と深い味わいを楽しめます。
左:芳香落花生油1296円、右:玉締めしぼり胡麻油756円(各180g)
ほかにも、「玉締めしぼり胡麻油」は、釜でじっくりと焙煎した胡麻を臼にいれて油圧でゆっくり押し上げ、上部で固定された「玉石」と呼ばれる丸い石で搾るという伝統的な「玉締めしぼり」の製法で仕上げています。胡麻そのものがもつ甘みや旨みがぎゅっと凝縮されており、だし醤油と合わせてディップとして味わうのもおすすめなのだとか。 珍しいのは「芳香落花生油」。まるで煎りたてのピーナッツのようなクリーミーで香ばしい味わいが特長。料理の隠し味にはもちろん、アイスクリームにかけてもコクが出ておいしいのだそう。
左からルスティコIGP2268円、ルスティコ1728円、ゼフィーロ2268円(各250ml)、オレンジオリーブオイル1620円、レモンオリーブオイル1620円(各100ml)
20年ほど前からはオリーブオイルも数多く取り扱っており、現在では20種ほどが並びます。オリーブオイルの輸入を始める際は、実際に現地の製造所まで足を運んで決めたという目利きの品がそろいます。シンプルで使いやすい定番のものから、レモンオリーブオイルやオレンジオリーブオイルまで、その味わいもさまざま。用途や好みをお店の方にお伝えすると、ぴったりなオイルを見つけてくれます。おすすめのレシピも教えてもらえるので、ぜひ気軽に相談してみてください。
お店のすぐ近くには、「山中油店」が手がける京町家一棟貸しのゲストハウスもあります。京の調味料や食材を手にして、お部屋でゆっくりお料理を楽しむのもよいですね。 地元の人が代々通う油専門店に訪れて、京都の食卓を支え続ける油の奥深さにふれてみてはいかがでしょうか。
山中油店
ヤマナカアブラテン
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田中 麗 写真:小川 康貴
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