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2021.02.08
文明開化の時代に思いをはせて♪全国のちょっと不思議な擬洋風建築6選
幕末から明治にかけて全国で生まれた、ホテルや工場、学校、病院などの近代的な施設。大工さんたちが限られた情報をもとに自分なりの解釈で建てたことから、洋式でありながら和の伝統技術も駆使した、洋風とも和風ともいえない独特で愛すべきデザインも数多く生まれました。今回はユーザーのみなさんの投稿から6つをご紹介します。
【山形県鶴岡市】「致道博物館・旧鶴岡警察署庁舎」
鶴岡公園のお隣・致道(ちどう)博物館にある「旧鶴岡警察署庁舎」。明治初期に建てられて移築されたもので、ルネサンス様式を模した窓まわりと屋根の破風妻飾りなど日本の伝統の融合が見事です。2013年から数年にわたる修復で、壁は創建時と同じ水色に、内部構造も当時の姿になりました。博物館はもとは庄内藩主のお屋敷。収蔵展示する文化財や庭園、こちらに移築された庄内エリア各地の歴史的建造物など、見どころも豊富です。
致道博物館・旧鶴岡警察署
チドウハクブツカンキュウツルオカケイサツショ
【福島県伊達市】「旧亀岡家住宅」
明治時代後期、地元で代々続く豪農・亀岡氏の自宅として建てられた「旧亀岡(かめおか)家住宅」。外観は赤と白のモダンな色づかいや八角形の展望室、風見鶏、とがった屋根などが印象的な擬洋風建築です。実は内部の洋間はひとつだけ。それ以外は純和風の書院造りとなっています。地元のケヤキや秋田杉などの銘木をふんだんに使い、伝統の職人技が光る意匠も満載。遊び心を感じるさまざまな彫り飾りもあり、探して回るのも楽しみです。
旧亀岡家住宅
キュウカメオカケジュウタク
【長野県松本市】「旧開智学校校舎」
明治9年に建てられ、90年近くも使われた小学校「旧開智(かいち)学校校舎」。地元の大工棟梁・立石清重氏が設計した擬洋風建築の代表的存在で、石積みを漆喰で表現するなど、伝統技術が駆使されています。特徴的なのが車寄せ(写真)。塔や天使の彫刻、バルコニーといった洋風の要素と、唐破風や瓦屋根、龍の彫刻といった和の要素が絶妙なバランスで同居しています。その意義が評価され、近代学校建築で初めて国宝にも指定されました。
旧開智学校校舎
キュウカイチガッコウコウシャ
【静岡県磐田市】「旧見付学校」
旧開智学校より少し早い明治8年、同じく小学校として建てられた「旧見付(みつけ)学校」。名古屋から招かれた宮大工・伊藤平右衛門氏が中心となって建築し、現存する小学校校舎では日本最古です。真ん中にパルテノン神殿のような柱や塔を持つ木造擬洋風建築で、国の史跡にもなっています。館内には明治から大正にかけての教科書やオルガンなどが展示され、授業風景の再現も。当時の気分にひたりながらゆっくり見学できます。
旧見付学校
キュウミツケガッコウ
【岡山県真庭市】「旧遷喬尋常小学校」
陣屋町として栄えた旧久世町エリアにある「旧遷喬(せんきょう)尋常小学校」。明治40年に建てられ、平成の初めまで使われていた小学校です。白亜の外観が印象的なルネサンス様式の建物と広い校庭は、ロケ地としても大人気。映画やドラマ、CMなどで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。デザインは完全なシンメトリーで、二重折り上げの洋風の格(ごう)天井や、ベネチア窓の飾り窓など、美しいモチーフも見逃せません。
旧遷喬尋常小学校
キュウセンキョウジンジョウショウガッコウ
【島根県松江市】「興雲閣」
擬洋風の流行末期、明治40年に明治天皇の滞在のために建てられた「興雲閣(こううんかく)」。松江城のすぐ近くという場所と、装飾や彫刻を多用した華麗な仕上がりが特徴です。訪問は実現しませんでしたが、皇太子時代の大正天皇がここに宿泊。当時は“ロシア宮殿風”ともいわれた外観ですが、壁は漆喰で屋根は瓦葺き、一部畳敷きの場所があるなど、和の要素も多くあります。館内には「亀田山喫茶室」があり、洋菓子やお茶も楽しめます。
興雲閣
コウウンカク
いかがでしたか?今回は、過去に「ことりっぷWEB」で紹介した投稿の中から、全国の擬洋風建築をまとめてご紹介しました。オープン時間や定休日などの情報は、事前に確認しておでかけくださいね。
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高柳涼子
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