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2021.04.19
2000本の竹に囲まれた鎌倉「報国寺」。駅周辺の喧騒から離れて癒しの異空間へ
鎌倉に行ったら必ず訪れたいのが、神社やお寺をはじめとする歴史的建造物。なかでも竹の寺として有名な「報国寺」は、青々としたみごとな竹林に囲まれた別世界が広がります。 旅行者におすすめの観光地を紹介する『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』では、なんと3つ星(わざわざ旅行する価値がある)を獲得。他では味わえない“静けさ”を、心ゆくまで堪能しませんか?
竹林のほかに四季折々の風情も楽しめる、足利・上杉家の菩提寺「報国寺」
本堂の右手には、鎌倉でも屈指の桜の古木がそびえ立つ。
報国寺は、1334(建武元)年に創建された禅寺です。室町時代を率いた足利家が開基し、寺の創設には上杉家も関わっていたことから、両氏の菩提寺として栄えました。 鎌倉駅からバスに揺られ、およそ10分。停留所を降りてしばらく歩くと、ゆるやかな坂へと続きます。山門をくぐり抜けた先には、静かに佇む鐘楼。正面奥に進むと風格のある本堂が見えてきます。
鐘楼の背後には、無縁仏の五輪塔が並ぶ
鐘楼を守るのは、ずっしりとした重みが長い年月を感じさせる茅葺き屋根です。大正時代に関東大震災が起こるまでは本堂も茅葺きでしたが、現在はここだけとなっています。 さらに、鐘楼を見下ろすように立つ大イチョウの樹は樹齢300年以上。秋になるとあたり一面が黄色く染まり、四季折々の風情が楽しめます。
芸術家、文豪たちにも愛された場所
寄木造の釈迦如来坐像。南北朝時代における宗風彫像の典型とされる
本堂を覗くと、鎌倉市指定文化財でもある釈迦如来坐像が祀られています。手がけたのは絵仏師の宅間法眼。宅間氏はこの地をとても気に入り、一時期は芸術家一派とともに寺領内へ住んでいたそうです。 その後も数多くの芸術家や小説家たちが訪れ、川端康成は喧騒を離れた当寺の静けさを「山の音」と表現したのだとか。本堂には執筆に使用したとされる文机も残っています。
竹の音に浸り、心ゆくまで竹林浴を
風が吹くと竹と竹がぶつかり合い、乾いた音が甲高く響く
本堂を抜けると広がるのは、約2000本の孟宗竹が生い茂る幻想的な竹の庭。凛とした美しい竹の姿と、頭上からさらさらと聞こえる葉ずれの音に、思わず天を仰いでしまうでしょう。 環境条件によっては、森林よりも竹林のほうがより多くのマイナスイオンを発生するといわれています。竹の音を体中に浴びながら、ひそかに注目されている竹林浴の美容効果を試してみては?
竹の庭の奥には、玉砂利を敷き詰めた枯山水の庭園が。
“静けさ”の中で抹茶を味わい、五感を研ぎ澄ます
五感で竹の庭を楽しみながら抹茶をいただける、贅沢な空間。
竹の庭の中にある茶席「休耕庵」では、心安らぐ静かな空間で抹茶をいただけます。朱色の緋毛氈に腰かけ、時間帯や季節によって異なる竹林の風景を楽しむ。その贅沢な空間に身を置くことで、日頃の雑念から解放されるはずです。
抹茶(600円)は報国寺オリジナルの落雁が付く
抹茶についてくる干菓子の形は、季節ごとに変わるそう。足利家の家紋や竹の形など、そのかわいらしさにほっこりします。 干菓子がのっている懐紙に描かれているのは、先代の住職による墨絵です。至るところに日本の自然美があふれている、鎌倉の中でも特別な場所「報国寺」。ミシュラン3つ星も納得の、何度でも訪れたくなる観光スポットではないでしょうか。
報国寺
ホウコクジ
*** 今回ご紹介した内容は、2021年4月にアップデートした「ことりっぷ 鎌倉 江ノ電」に掲載中です。より実用的・よりかわいい・より便利な一冊に生まれ変わったことりっぷをぜひ手に取ってみて下さいね。
【ことりっぷ 鎌倉 江ノ電】
鎌倉旅の醍醐味である社寺めぐりをはじめ、春は花、秋は紅葉めぐりを楽しんで。江ノ電にゆられ、江ノ島さんぽや沿線のカフェに立ち寄る小さな旅もおすすめです。
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ナガシマエミ 撮影:榊水麗
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