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2021.07.29
ものづくりの文化が息づいた通りで、 愛おしい時間との出会い 鞍馬口通:後編
東西に長く続く鞍馬口通。船岡山の南東エリアには、おしゃれなカフェやショップが集まります。散策中に気になるお店をのぞくと、織物のまちとして知られる西陣らしい温もりのある手しごと品との素敵な出会いがありそうです。
ものづくりの風土が育まれた、西陣織のまち
500年以上前から通りの名前が登場していたとも伝わる鞍馬口通。堀川通を越えて西に進めば、織物のまちとして知られる西陣エリアへと入っていきます。応仁の乱に由来する西陣の地名は、のちに絹織物の産地として生まれ変わり、この地で作られた織物は次第に西陣織と呼ばれるようになりました。現在でも、耳を澄ませばトントントン……と、かすかな機織りの音が聞こえてくることがあります。 自然いっぱいの船岡山では、小鳥のさえずりを聞きながらのんびりと過ごせます。山頂にはベンチが置かれているので、京都の町並みを見渡しながらのおやつ休憩はいかが。日差しを遮る東屋や緑のトンネルの散歩道も楽しみましょう。
ふっくら穴子に大満足「鞍馬口 寿星」
「昼の寿星膳」(2640円)の突き出しやおでんの中身は季節によって変わる
地下鉄鞍馬駅からすぐのこちらは、70年続く茶道具店がプロデュースする京料理店。脂がのってふっくらした淡路島産のアナゴを使った料理を中心に、おでんや串天など気軽なメニューも展開します。 ランチでは、突き出し5種にあんかけ地鶏豆腐、おでん、穴子丼、自家製わらび餅をコース仕立てで提供する寿星膳をぜひ注文してみて。
写真左:「カレー和風餡かけ揚げそば」(1000円。小鉢2種、白ごはん付き)
江戸時代の焼き物や作家ものなど、料理を美しく彩るうつわの豊かさや、掛け軸などの粋なしつらえも、茶道具店が手がけるお店ならでは。お酒も充実しているので、ディナーにもおすすめです。
鞍馬口 寿星
クラマグチジュセイ
くつろぎのリゾートのような隠れ家カフェ「フランジパニ」
「クリームあんみつ」(650円)
店主の金澤さんが「訪れる人に、思い思いにゆっくり過ごしてもらいたい」と2005年にオープンした京町家カフェ。「フランジパニ」とは、バリ島を代表する花・プルメリアのこと。その名のとおり、店内は京町家の魅力はそのままにリゾート要素をプラスし、大人の休日を思い起こさせる落ち着いた空気感が漂います。
「モーニングセット」(600円。グリーンサラダ、ドリンク付き)プラス50円でジャムやキャラメルなどのアレンジも
メニューはモーニングセットやサンドイッチの軽食から、ケーキや甘味までラインナップも豊富です。「クリームあんみつ」は、自家製の寒天に小豆、フルーツ、バニラアイスをトッピング。自家製黒蜜をかけて召し上がれ。 ペットとともに入店できるので、お散歩途中に立ち寄って穏やかな時間を過ごすのも素敵です。
Prangipani
フランジパニ
豊かな自然に包まれる京都はじまりの地「船岡山」
山頂からの風景。眺望案内板もあるので、実際の景色と見比べ楽しいるのも楽しい
高さ112メートルほどの小さな山。「船岡山」の名は、そのかたちが船に似ていることから。古くは桓武天皇が平安京に遷都する際、船岡山の山頂からまちを見渡して、都を移すことを決めたことも伝わり、そのエピソードから「国見の丘」とも呼ばれています。
「五山の送り火」では、特に左大文字が間近に望める
山頂からは京都のまちが一望でき、特に夕暮れ時はこころ奪われるほどの美しさです。桓武天皇が見た景色を想像すると、京都のまちがいつもと違って見えるはず。 毎年8月16日に行われる「五山の送り火」の日は「鳥居型」以外の4つの送り火が見渡せます。また、野外ステージもあり、コンサートが行われたりと市民に親しまれています。
船岡山
フナオカヤマ
織田信長ゆかりの神社「建勲神社」
階段を登った先の境内からは比叡山や大文字山を見渡せる
船岡山の東南側に位置する建勲神社(たけいさおじんじゃ)は、地元では「けんくんさん」や「けんくんじんじゃ」として親しまれています。 1869(明治2)年、明治天皇の命により創建された織田信長を神様として祀る神社で、信長の愛刀「義元左文字(宗三左文字)」と「薬研藤四郎(再現刀)」を所蔵することから、近年では刀剣好きの“聖地”として刀剣ファンが多く訪れています。
織田信長公三十六功臣画がかかる拝殿
拝殿には、織田信長と一緒に天下統一を目指した功臣たちの肖像画が飾られています。 所蔵するそれぞれの刀の御朱印には缶バッチもついてきます。お参りをした後は、小凶・凶・大凶と、「やたら凶が出る」と話題のおみくじで、ぜひ運試しをしてみて。
建勲神社
タケイサオジンジャ
クラフトアートが勢ぞろい「ポーラスタ」
あたたかみのあるお皿は、使うシーンを想像しながら選ぶのも楽しい
オーナーで陶芸家の冨金原塊(ふきんばらかい)さんが、2年半をかけて自ら改装した京町家ギャラリー。ご自身の作品はもちろん、全国の作家の作品を展示しています。 ショップの隣には工房を併設。ショップの2階は貸しギャラリーになっていて、さまざまなアートの展示が行なわれます。
写真右上:冨金原さんによる「ストックホルム」シリーズ。左から豆鉢1760円、豆皿1540円
ジャンルも作風もさまざまなのに、どこか共通した温かみを感じるのは、「実際にお会いして良いと思った作り手の顔が見えるものしかおいていないんです」という冨金原さんの目利きによるもの。うつわからアクセサリーまでぬくもりのある品ばかりで、手にすると誰かに贈りたくなります。
Polarsta
ポーラスタ
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Rei Tanaka(Rakutabi) photo:Yasutaka Ogawa 編集:ことりっぷ編集部
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