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2021.09.10
福井県・若狭小浜「みほとけの里」をめぐり仏像に触れる旅へ
豊かな自然に恵まれた福井県南西部の若狭小浜(小浜市)には、130を超える由緒ある寺院や神社が多く点在し、お寺の方々はもちろん、地域の人々にも大切に守られ伝えられてきました。 穏やかな日本海と四季の美しさが魅力的な小浜へ。豊かな食材を知るレストランやカフェにも立ち寄りながら、仏像に手を合わせて、心が穏やかになる時間を過ごしてみませんか。
旅がもっと楽しくなる♪仏像の基礎知識

左上から時計回りに、「木造薬師如来坐像(明通寺)」、「木造十一面観音菩薩立像(羽賀寺)」、「降三世明王(明通寺)」、「木造毘沙門天立像(羽賀寺)」
仏像とは、仏教の信仰対象になる仏さまのお姿を表した像。仏像には大きく分けて「如来(にょらい)」「菩薩(ぼさつ)」「明王(みょうおう)」「天部(てんぶ)」と4種類あります。 最も高い位にいる「如来」は、修行を完成し悟りを開かれた仏さまで、真理の体現者です。お姿は、悟りを開いた釈迦の姿。出家したときのまま、何も持たず飾りもなく、うすい衣を一枚体に巻いています。 次の位の「菩薩」は、如来になるための修行をされている段階で、直接我々を手助けしてくださる仏さまです。悟りに至る前なので、王家に生まれたお釈迦さまが、王子だった時代の姿で表されているといいます。髪を高く結い、耳飾りや胸飾りなどの装飾をしている美しいお姿です。 3番目は「明王」。インドのヒンドゥー教が、のちに仏教に取り入れられて発達したという「密教」特有の尊像です。邪気や禍から私たちを守り、優しい心で接して救うのが難しい厄介者を、怒りで導く役割があるといいます。 4番目は「天部」で、仏教以前から信仰されていた他の宗教の神様が仏教に取り入れられて仏さまとなり、仏法を守るのが仕事といわれます。毘沙門天、弁財天など、とても個性的な仏さまです。
知ってから手を合わせたい意味のある「みほとけの手」

左上から時計回りに、「木造千手観音菩薩立像(妙楽寺)」、「木造薬師如来坐像(明通寺)」、「御前立薬師如来立像(多田寺)」
仏像には、さまざまなお姿の仏さまがいらして、ポーズもいろいろです。とくに手の形「印相(いんそう)」、また持ち物「持物(じもつ)」には意味があります。 仏さまの意志やご利益などを知る印相。数百種以上あるといわれますが、覚えておきたいのは「施無畏印(せむいいん)」。右手を挙げて手のひらを前に開き見せて「恐れなくとも良い」という意味です。我々の恐れ・迷いを取り除き、心を落ち着かせてくださいます。 仏さまの持物は、尊名を知るきっかけにもなります。例えば「薬壺(やっこ)」は、万病を治すという意味が込められていて、仏の世界では名医ともいえる薬師如来が持ちます。 ほかにも小浜の仏さまに会いに行くと、手のすべてに目が付いている「千手千眼(せんしゅせんがん)」も。どのような人でもすべて救済するという、手を合わせて祈りたくなる慈悲深さがある仏さまもいらっしゃいます。
非日常を感じさせる山に囲まれた国宝「明通寺」

本堂と三重塔はいずれも国宝
棡谷(ゆずりだに)にあり、仁王門から苔むしる道、石段を上りたどり着く、静寂な寺院です。平安時代初期の武将、征夷大将軍として蝦夷(えみし)、現在の東北地方を平定したという坂上田村麻呂公。戦いによる亡き魂を弔う慈悲の心から多くの寺院を開かれ、叔父の所領があり日本海側で都に一番近い港があり重要な拠点であった小浜に、大同元(806)年創建されました。 ご本尊は、木造薬師如来坐像です。ひのきの一木造りで、平安時代の末期の作といわれています。右手は施無畏印、左手には8万4000の病気を治す薬が入っているともいわれる薬壺を持っています。

(左)穏やかな尊顔をされた木造薬師如来坐像、(右)怒りに満ちた形相が多い降三世明王立像。口を開いているせいか怖すぎず親しみが持てる
脇侍は向かって右側が、降三世明王立像(ごうざんぜみょうおうりゅうぞう)。貪欲、怒り、愚かさといった三毒の煩悩を戒める仏さまで、胸の前で手を交差して小指を絡ませて人差し指を立てる、この仏さま独特の印相「降三世印」を結ばれています。仏教の教えに従わず欲望にとらわれていた時のシバ神とその妃が、足で踏まれている姿も印象的。口を開けたお顔が、明通寺独特です。 そして左側が、深沙大将立像(じんじゃだいしょうりゅうぞう)。西遊記で知られる玄奘三蔵法師が、インドへ赴くときに途中で出会い、流砂から助けてくださった鬼神です。船を使った旅の守護神などといわれます。3尊とも、重要文化財です。

明通寺
ミョウツウジ
二十四面千手観音と出会える「妙楽寺」

(左)かつては33年に一度しか御開帳されていなかった秘仏の二十四面千手観音、(右上)青いお顔が魅力的な四天王像、(右下)縁結び観音としても知られる聖観音菩薩立像
霊峰・多田ヶ岳の麓にあるお寺は、大悲閣と書かれた額を掲げる山門をくぐり本堂へ。養老3(719)年、僧侶行基の開創にして、弘法大師空海が延暦16(797)年に再興したと伝えられています。 鎌倉時代に建立された本堂は、寄棟づくりの檜皮葺で重要文化財。ご本尊の二十四面千手観音は、正面のお顔の両側に、忿怒面と菩薩面を持ち、頭上に二十一面を頂いためずらしいお姿です。平安時代中期の作で、重要文化財に指定されています。 ほかにも内陣には、こちらもめずらしい群青色のお顔をした持国天像・増長天像・広目天像・多聞天像と、ひのきの一木造り聖観音菩薩立像が安置されています。

本堂内には木造不動明王坐像も安置されている

妙楽寺
ミョウラクジ
「羽賀寺」で女帝のお姿をした美しい観音さまに祈る

(左上)重要文化財の木造千手観音菩薩立像は平安時代の作、(左下)木造毘沙門天像は平安時代後期の作で重要文化財、(右)心のやすらぎを覚える木造十一面観音菩薩立像は女帝元正天皇に似ているという
鳳凰が飛来し、この地に羽根を落としたという伝説が寺名の由来。霊亀2(716)年に、女帝元正天皇の勅命により僧の行基が創建したと伝えられています。 気品のある柔和なお顔とスタイルの良さ、膝まで伸びた細く長い手が印象的なご本尊は、重要文化財に指定されている木造十一面観音菩薩立像です。かや材の一木造り、平安時代の作で、かつては秘仏だったため当初の色彩が極めてよく残っているといいます。

地元イラストレーターによる絵御朱印も人気
ほかにも、わずかに笑みを浮かべるように見える木造千手観音菩薩立像は、ひのき材の一木造り。胎内に記された墨書銘によると長寛3(1165)年に松林寺の本尊として造像され、今は羽賀寺にいらっしゃるそうです。 本堂は、後花園天皇の勅命で奥州十三湊の将軍安倍康季が再建した重要文化財です。

羽賀寺
ハガジ
旬の小浜食材を使う総菜が選べるデリランチ「和久里のごはんやおくどさん」

ごはん・汁物・豆皿・サラダ・小鉢・お惣菜3品に飲み物付き「今月のおきまり御膳」1700円に、地魚のお刺身とデザート付きの「鯖街道御膳」2500円などがある
舞鶴若狭道「小浜IC」から車ですぐ、道の駅若狭おばまの隣に、2021年初夏にオープンしたプリフィクスビュッフェスタイルのレストランです。 魚介やお野菜など地元食材を90%以上使う洗練された料理が並び、メニューに合わせて好みを選べます。お米は、小浜市宮川地区のひまわり米を使用し、おくどさんで羽釜を使い炊き上げます。

開店の少し前に炊き上がるごはんはおかわり自由
かつて小浜は、朝廷の食を支えた御食国のひとつで、それ以降も、若狭の美味なるものを都に運び、京の食文化を支えてきたといいます。その京都で代々料亭を営んでいる家系の中東篤志さんがオーナー。NY のミシュラン星付き精進料理レストランで GM 兼副料理長を務めた中東さんが、小浜の食材の魅力を知り、その良さを引き出す料理が味わえますよ。

和久里のごはんやおくどさん
ワクリノゴハンヤオクドサン
果物スイーツが人気の隠れ家的カフェ「緑茶房ニューグリーンカフェ」

秋の定番、地元の栗をたっぷり使うスイーツ。2021年は栗のムースケーキとクレープをマッチングさせた「モンブランパフェ」1200円
築160年という商屋の土間をリノベーションしたカフェ。飴色をしたレトロ空間には陽光が差し込み、観葉植物などと相まって癒し時間が過ごせます。できるだけ地元の食材、手づくりを心がけるメニューがそろいます。

(右)店名を意識する緑色したソファチェアが素敵、(左下)地元野菜いっぱいの「グリーンなカレーセット」1000円は、400円のドリンクから1種選べる
小浜で作るケールをたっぷり使ったヘルシーなグリーンカレーやタコライスといった食事メニューも充実していますが、人気はスイーツ。旬のフルーツを使ったパフェやパンケーキなど季節ごとに変わるメニューが味わえます。

緑茶房ニューグリーンカフェ
リョクサボウニューグリーンカフェ
小浜を体感できるオーベルジュ「松永六感 藤屋」

(左上)囲炉裏のあるライブラリーでコーヒーを飲みながらのんびり、(左下)小浜の季節の野菜を味わえる夕食など食事は中東篤志さん監修、(右上)朝食は精進弁当に朝粥やお味噌汁が付く、(右下)お庭を見ながら静かな時間が過ごせる
小浜の山あいにある松永地区、国宝「明通寺」からすぐのところにある山里のオーベルジュ。阿字観瞑想をしたり、創業300年のお酢醸造所を見学したりと、さまざまな体験ができます。 お楽しみの食事には、夕食が、自らが宿の前にある藤屋農園で収穫した採れたて野菜やハーブを、ふんだんに使ったスペシャリテなど8品から10品。また朝食は、明通寺で瞑想体験(希望者のみ+1500円)をした後に、精進弁当を味わえます。

松永六感 藤屋
マツナガロッカンフジヤ
日本海が印象的な若狭小浜ですが、山あいにも素敵なところがたくさんあるので泊りがけで訪れるのがおすすめです。なかでも静寂な小浜のお寺は、一般的な観光地とは違い、どちらも仏さまのお傍へ行き、まるで対話するように手を合わせることができます。だからこそ「見る」のではなく「会う」感覚を忘れずに、礼儀を持って。伺うとお話が聞くこともできるお寺もありますから、時間をとってゆっくり訪れましょう。
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Union Synapse 写真:増田えみ
若狭おばま観光協会

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