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2022.03.15
工芸と芸能の集落「阿寒湖アイヌコタン」で文化を学ぶツアー
雄大な自然に包まれたひがし北海道にある神秘的な湖・阿寒湖。 周辺には、アイヌ文化を学び、体感することができる阿寒湖アイヌコタンがあります。アイヌ民族が敬意と感謝の気持ちを表し、共生してきた自然。森の中を地元のガイドの方と一緒に歩き、自然やアイヌ文化を体験するツアーに参加してみませんか。
原生林と山々に囲まれた阿寒湖
JR札幌駅からは特急を利用してJR釧路駅まで約4時間。駅からはバスで阿寒湖まで約2時間
国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」生育地として有名な阿寒湖は、北海道で最も歴史のある国立公園の一つ、阿寒摩周国立公園内にあります。周囲には原生林が広がり、雌阿寒岳や雄阿寒岳などを望み、雄大で北海道らしい景色に出会える場所。阿寒湖や、そのほとりにある阿寒湖温泉街には、多くの観光客が訪れます。 羽田・関西空港から直行便が運航しているたんちょう釧路空港から、路線バスやエアポートライナーを利用して、阿寒湖までは約70分。バスを降りると、そこには自然豊かな阿寒の地が広がっています。
阿寒湖アイヌコタンでアイヌ文化を知る
阿寒湖アイヌコタンの街並み
阿寒湖は、北海道の白老・平取とともに、アイヌ文化を感じられる地です。それぞれ独自の特徴を持っていますが、阿寒湖には大きなアイヌコタンがあり、観光とアイヌ文化が共存する貴重な場所です。アイヌコタンとは、日本の先住民族であるアイヌ民族が暮らす集落。阿寒湖アイヌコタンは北海道最大級で、工芸と芸能が盛んなところです。
アイヌガイドの方と歩く神秘の森ツアー
自然と調和し、共存していくことがアイヌ民族の思想
阿寒湖アイヌコタンでは、アイヌ民族が自ら文化を伝えるツアーを催行しています。「Anytime, Ainutime!」を合言葉に、森、湖、ものづくりの3つのテーマから構成されたツアーでは、阿寒摩周国立公園の魅力を満喫し、アイヌ伝統の工芸技術や文化に触れることができます。どのツアーもガイドの方が付き、その土地に住む人々だからこその貴重な話しが聞けたり、珍しい体験をすることができます。 都会の喧騒の中で日常を過ごす人たちにとって、ツアーで神秘的な森を歩き、ガイドさんとともにゆったりとした時間を過ごすことで、心からリラックスできるひとときが過ごせます。 今回はその一つで、森歩きのロングコースと楽器・ムックリ製作体験ができる「湖の時間」ツアーを紹介しましょう。
森を知り尽くしたガイドの方たちの丁寧な説明で散策を満喫
風の音や動物の鳴き声を表す伝統楽器ムックリ
約30分でムックリを作ります
集合は、阿寒湖アイヌシアター 「イコㇿ」。最初は、アイヌ民族の伝統楽器・ムックリを作ります。ムックリは、薄い板に付けられた紐を引いて弁を振動させて音を奏で、それを口の中に共鳴させて音を響かせる口琴の一種。アイヌ民族は、風の音や動物の鳴き声などを、このムックリで表現するそうです。

どんな音を奏でられるのか楽しみ
アイヌ民族が大切に守り続けるイオルの森
ムックリづくり体験のあとは、阿寒湖のほとりにある、イオルの森を散策します。アイヌ民族にとって森は、食器や衣類・道具の元となる、さまざまなものを得ることができる大切な場所。そこで得られる恵みに感謝し、活用することで身につけた知恵が、独自の文化として受け継がれているそうです。ガイドの方から語られる伝承や自然への敬意は、興味深いものばかりです。
日々の喧騒を忘れ静謐な森で過ごすひととき
ひと休みを兼ねて、先ほど作ったムックリを森の中で奏でます。木々にこだまするムックリの不思議な音色を聞いていると、まるで森の中に溶け込むような不思議な感覚を覚えます。 最後は、アイヌ衣装を着て記念撮影です。 ツアーは約2時間30分。地元のガイドの方たちと過ごすひとときは、忘れられない思い出になります。
まるで森にこだまするようなムックリの音色

記念撮影では、アイヌ衣装をまとえる貴重な体験も

「食の時間」のメニューの一例(1人3,500円)
ツアーには食文化を体験できるオプションも。「食の時間」では、「アイヌ料理の店 民芸喫茶ポロンノ」で、自然の恵みを活かしたアイヌ民族のハレの日の食事をいただけます。メニューは、日高地方のアイヌ料理をベースにした、伝統的なアイヌ料理。山菜は、お店を経営するご夫妻が山で採ってきたものも。滋味溢れる食材をふんだんに使用し、阿寒湖の山の恵みや湖の恵みを活かした料理が味わえますよ。 今回ご紹介したツアー「湖の時間」以外にも、さまざまなツアーが用意されているので、ぜひ公式HPをチェックしてみてくださいね。
ツアーの詳細はこちら
アイヌコタンの店でお土産探し

民芸品のお店があるので、ゆっくり時間をとって街歩きを
ツアーの後には、温泉街の一角にある阿寒湖アイヌコタンに立ち寄りましょう。アイヌ民族の伝統工芸品が並ぶ民芸ショップや、アイヌ料理を楽しめる飲食店が軒を連ねます。アイヌ民族に古くから伝わる、木彫りのチャームやインテリア雑貨は、お土産にもぴったりです。 また、ツアーの集合場所になっている阿寒湖アイヌシアター イコㇿでは、ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統的なアイヌ古式舞踊を観ることができます。
カラフルな木彫りのキーホルダーやイヤリングなど、あれこれ目移りしそう
阿寒湖アイヌシアター 「イコㇿ」で公演しているアイヌ古式舞踊
阿寒湖アイヌコタン
アカンコアイヌコタン
釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-7
アイヌ文化を知るには「オンネチセ」へ
2020年にリニューアルオープンした「オンネチセ」は、阿寒湖のアイヌ民族の特長を表す生活用品や祭具などの工芸品が集まるアートミュージアムです。伝統を守りつつ新たな文化創造を重ねる阿寒湖のアイヌ民族が、この地で集め、ここでしか見られないという作品を多数展示。巨匠たちの作品や、今を生きる阿寒湖のアイヌ民族の作り手が生み出す工芸品を蒐集しています。 アイヌ語でオンネは「大きな/完成に近づいた」、チセは「家」のこと。「オンネチセ」は、阿寒湖アイヌコタンの中央に建つシンボル的な施設です。
以前は、阿寒湖周辺に数多く自生していたオヒョウの木。アイヌ民族は、この繊維を加工して「アットゥシ」という着物を作っていました。木の内皮を温泉につけてやわらかくし、割きやすくして、細い糸状にしたものを紡いだそうです。1着の着物を完成させるために、膨大な時間がかかります。
アイヌ民族では、神が姿、形を変えて人間界にやってきた化身を「カムイ(神)」と敬っています。イクスパイは、カムイに酒を捧げるときに使用する祭具で、表面には個性豊かな彫刻が施されています。いずれも1本の木から削り出していて、彫りが深く立体的です、漆が塗られたものや、動物が描かれたものなどさまざま。裏面は杯の上に載せるため、平らになっています。
捕ったサケを余すところなく使うという考え方から、皮で靴(チェプケリ)を作りました。卵を産んだ後のメスのサケをホッチャレと言い、その皮が厚くて丈夫なため、靴が長持したそうです。アイヌ民族にとってサケは大切な食料。皮だけでなく内臓や骨も大切に、生活のなかで活用していました。
オンネチセの外には、秋のまりも祭りで使用したイナウという祭具が立てかけられています。イナウは祭りが行われる前に、ヤナギの木を削って一本ずつ製作。行事が終わった後も大事に祀られています。
伝統・創造 オンネチセ
デントウ・ソウゾウ オンネチセ
阿寒湖温泉でお湯めぐり

ショッピングやカフェタイムを楽しんだ後は、阿寒湖温泉にもぜひ触れてみて。北海道の名付け親と言われる松浦武四郎が1858年にこの地を踏査した際、既に先住民族であるアイヌ民族が利用していたという歴史ある温泉です。 町に数多く点在する手湯・足湯はそれぞれ個性的。たとえば民芸品店の歓光堂前にある「梟(ふくろう)の手湯」はニレの木の洞をそのまま手湯にしていたり、「弁慶の足湯」はボッケ遊歩道の横にあり、阿寒湖を眺めながら浸かることも。お湯の温度も場所によって違いがあるので、タオルを持って、手湯や足湯巡りをするのも楽しいですよ。
阿寒湖温泉
アカンコオンセン
いかがでしたか? アイヌ民族の歴史や文化を学びながら阿寒湖周辺の旅をぜひ楽しんでくださいね。
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浅子百合(クレッシェント)
アイヌ民族とともに時間を過ごす阿寒湖旅 Anytime,Ainutime!

自然を敬い、阿寒湖で生きてきた地元ガイドの案内で自然散策、ものづくりを楽しむガイドツアー。森歩きや刺繍、木工、食を通じて、アイヌ民族の思想や暮らしの知恵が、生きるヒントとして心に宿ります。
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