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2022.06.11
初心者もOK♪ 喜多方の竹細工工房「竹工房 たけや」で物づくりを楽しむ
福島県喜多方市の雄国地区では、伝統工芸品「雄国の根まがり竹細工」を今も職人たちが作り続けています。そこで修業をした佐々木智子さんの工房が喜多方にオープン。そこでは竹細工の体験や、竹細工の購入もできます。手作りの楽しさを体験しに行きませんか。
喜多方の酒蔵が縁で、別府と喜多方の雄国で竹細工修業
工房のオーナー、佐々木さん。手にしているのは別府での修業時に作った真竹の花かご
明治や大正時代の蔵が多く建ち並ぶ喜多方の「おたづき蔵通り」に、2021年3月、竹細工の工房「竹工房 たけや」がオープンしました。店主は佐々木智子さん。「雄国の根まがり竹細工」の地域おこし協力隊として、喜多方の自然豊かな雄国地区で3年間活動をしたことが縁で、この地で工房を持つことになりました。 じつは青森県八戸市出身の佐々木さんは、20数年前から喜多方の酒蔵「大和川酒造店」で行っていた酒造り体験が好きで、ずっと通っていたそう。のちに呼ばれたお酒の会で、浴衣を着ていこうとバッグを探していたら竹細工のバッグと出会い、興味を持ちました。当時は喜多方の竹細工は知らず、竹細工の学校がある大分県別府市で2年間、修業したそうです。
約400年も受け継がれてきた「雄国の根まがり竹細工」
店舗や住居に使われていたという古い建物。土間はショップになっており、おみやげにもぴったり
別府ではたくさん採れ、よく竹細工に使われる「真竹」を使って学んだ佐々木さん。その後、高齢化で「雄国の根まがり竹細工」を継ぐ人がいないという話を聞き、竹職人へのきっかけになった喜多方のために何かできないかと、6年前に地域おこし協力隊として喜多方に移住しました。ちなみに竹は気候によって違うので、喜多方では真竹は採れません。
左の「かご」800円と1000円が真竹で、右の「豆かご」1000円が根まがり竹。いずれも佐々木さんが作った作品
「雄国の根まがり竹細工」は約400年前の江戸時代から続く工芸品です。地域には雄国山があり、そこに自生していたのが根まがり竹でした。それを見つけた当時の代官が、この地に移住してきた人たちの冬の仕事として、山の根まがり竹を採り、竹製品を作ることを推奨したのが始まりだそう。
竹職人の仕事のほとんどは竹を割って、皮をはぐこと
まずは根まがり竹をきれいにする。喜多方をテーマに描いた後ろの絵は、空き店舗時から展示されていた日本画家の川合南菜子さんの作品
「根まがり竹は柔らかくて、折れにくく、柔軟性が強い。竹細工では、九州の言い方で“ねばい”竹といいます。形になってから割れたり、折れたりしにくいので重宝されたのかもしれません」と佐々木さん。 「まずは節に残っている皮や芽を取る作業をします。昔は子どもも手伝っていたそうです。そして、根まがり竹を2つに割って、さらに半分に割り、皮と身の間に刃物を入れ、皮を薄くはぎます。指を台にして刃物で皮の裏面を削り、さらに厚みを整え、この薄い皮を細工に使います。使いたいのは硬い皮だけなんです」と、佐々木さんが実演してくれました。
この地域で使われている刃物を使って、丁寧に根まがり竹を割っていく
「竹細工の8割方は材料の加工です。割って皮をはぐのが職人の仕事の全容です。編むのはそれほど難しくありません」といいます。刃物も地域によって違うので、別府の時とは違うものを使っているそうです。 「雄国の根まがり竹細工」で作るのは、農業用のかごや台所用品などの素朴な日用品。昔から作っているものが変わらないことも特徴です。この地は他の竹製品生産地と文化交流が少なかったようなので、変わらなかったのではと佐々木さん。
初心者でもできる竹細工に挑戦
竹細工体験は2500円。右上の状態からスタートして編んでいく。「花かご四海波」はお菓子や小物を入れるのにぴったり
工房でおすすめなのが竹細工体験。大分の真竹を使って、「花かご四海波」を作ることができます。根まがり竹は真竹に比べて節が多く、重ねる作業が初心者には難しいそうです。 体験は竹ひごを十字に組んだ状態からスタート。教わりながら竹を4枚ずつ重ねて、結んで、差し込むという作業を行い、1時間ほどで完成します。「自分の手で使えるものを生み出すのがすごいと思ったので、ぜひ体験してもらえたら」と佐々木さん。体験したい方は3日前までに必ず予約をしてくださいね。
ショップで長く愛用できる竹細工探し
棚には根まがり竹や真竹のかご、青竹の丸ざるなどが並ぶ
工房では竹細工も販売。佐々木さんの作品をはじめ、根まがり竹細工の師匠の作品、友人の作品もあります。また、九州で作られた竹のスプーンや竹ざるのほか、奥会津編み組細工のマタタビざる、民芸品など竹ではない手仕事の商品も並び、佐々木さんが気に入ったものをセレクトして置いています。
師匠が根まがり竹で作った、素朴な風合いが美しいかご。お買い物バッグにもいいかも
ショップには竹の種類がいくつかあるので、たとえば油抜きした真竹はつやがあり、根まがり竹は素朴な色合いと竹の違いがわかるのも楽しいです。実用性がありながら、日々の暮らしに温かみを添えるのが竹細工の魅力。実際に手に取って、お気に入りの竹細工を探してみてくださいね。
喜多方の手仕事もおみやげにどうぞ
「漆アイススプーン 会津喜多方漆器 長ヘラ 丸塗分け」各500円。短ヘラは450円
気軽に買える喜多方や会津のおみやげも販売しています。喜多方のたまり煎餅や会津ソースセンベイ、人気の漆器店「漆器蔵 会津野」の「喜多方らーめん箸」などがあります。会津喜多方漆器の地域おこし協力隊として活動している若い人たちが作った「漆アイススプーン」も人気だそう。自分たちで採った喜多方産のうるしを塗っています。 2か所で修業したことにより、雄国の根まがり竹細工と別府竹細工の両方のいいところを知ってもらえるお店だと話す佐々木さん。竹細工の手仕事のよさを実感できる工房なので、体験を兼ねて訪れてみてはいかがですか。出張販売に出ていることもあるので、訪れる前に電話で問い合わせておくのがおすすめです。
竹工房 たけや
タケコウボウタケヤ
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細江まゆみ、写真:加藤熊三
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