2つの顔を持つ雑貨店

「好日用品店」には2つの顔があります。一つは、金沢のカットガラス作家・廣島晴弥さんが制作する作品の直営店であること。もう一つは、贈り物をテーマにしたセレクトショップであること。 店内は模様をあしらった美しいグラスが並ぶギャラリーのようなスペースと、暮らしに寄り添う工芸品や小規模で丁寧につくられる日用雑貨など様々なジャンルのものが陳列したスペースで分かれ、空間の造りからもその二面性を感じられます。

制作のきっかけは、あるラジオ番組

晴弥さんが手掛けるブランド「h collection」は、通称“AVANTI”と呼ばれるBARを舞台にした伝説のラジオ番組からインスピレーションを受けて制作された、お酒を嗜むためのカットガラスブランド。グラスへお酒を注いだ時に美しく見えるよう施された模様は、日本古来の切子のような派手さはなく、繊細でシックな気品溢れるデザインとなっています。 購入を検討する場合は、店に立つ晴弥さんの奥様・友紀さんに相談を。要望やどのように使いたいかを話すと自分に合ったグラスを提案してくれます。「h collection」は基本的に注文してから工房で制作する受注生産制。手元に届くまでの時間も期待が膨らみます。

“贈り物”をテーマとする「好日用品店」

現在では自宅の晩酌タイムをより豊かにするアイテムとして購入されたり、バーテンダーに買い求められていたりと、お酒好きからの信頼も厚い「h collection」ですが、制作を始めた当初から引き出物や結婚祝いなど贈り物として購入されることも多かったといいます。そんな経緯もあり、現在のような形で店舗を構えるのは自然な流れだったようです。

使って実感した「良いもの」をセレクト

元々雑貨店や生活工芸の店で働いていた友紀さんは、全て自身が使って良いと思ったものをセレクトしていると話します。 器や台所道具、お茶の葉といった食にまつわるものから、タオルやハンドクリームなどのケア用品、子どものおもちゃに万年筆・・・幅広いジャンルの商品を取扱いながらも、あえてカテゴリー分けをせず陳列している店内。しかし、それでもまとまって見えるのは友紀さんが一貫したセレクト基準を持っているからなのかもしれません。

つないで届けたい手仕事の良さ

商品を選ぶうえで大事にしていることの一つに、「つくられた背景が誠実であること」を挙げていた友紀さん。訪れる人に、どこで、どんな人が、どういう想いで生み出したものなのかを伝えたいという想いは、商品を説明する言葉の端々からも感じられます。 店内は自分へのご褒美や旅の思い出にもぴったりなアイテムばかり。地元作家の作品はもちろん、石川で巡り合った“大事にしたくなるもの”は、暮らしの中でふと旅の記憶をよみがえらせてくれそうです。

想いが宿ったペーパーアイテム

贈り物をテーマにしているからこそ、包装紙やギフトカードなど商品に添えるものにも特別な想いが。カウンターの隅にはデスクが用意されており、そこでメッセージをしたためることができるのですが、メッセージカードには、金沢を拠点に装身具などを制作するユニット「初雪・ポッケ」が描いた愛らしいイラストが印刷されています。 贈答用の箱は、簡易ボックス以外にも地元紙箱メーカーが手掛けるブランド「ハコヲツム」に別注したギフトボックスも用意。 渡したときの印象を決める包装紙は、「h collection」のグラスのカット柄をモチーフにしたものや、型染め作家・山﨑菜穂子さんの図案をプリントした柄など、迷ってしまうほど素敵な絵柄ばかりです。

空間や商品、その包みに至るまで全てにおいて手仕事の温度を感じる「好日用品店」。それは丁寧なものづくりをする晴弥さんと、それを間近で見てきた友紀さんが営む店だからこそ、自然とそうなっていくのかもしれません。金沢を訪れた際は、ぜひ立ち寄ってほしい一軒です。