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2024.03.01
心ときめく雅な列車で奈良と吉野へ。素敵なお店と歴史ある社寺、春の絶景をめぐる旅
約1300年の歴史を誇り、日本の歴史や文化の礎を築いたはじまりの地・奈良。この春は、見どころもおいしいものもたくさんあふれる古都へ、素敵な列車でおでかけしませんか? 目的地は、東大寺や春日大社といった世界文化遺産がいくつも点在する町の中心地・奈良、日本一の桜の名所として名高い吉野山の2エリア。移動から特別な時間を演出してくれる話題の観光特急と、それぞれの地で訪れたい旬のスポットやおいしいもの、この時期だけの春の絶景もご案内します。
古都・奈良にいざなう、気品あふれる列車「あをによし」
観光特急「あをによし」の車内。ゆったりと配された座席でくつろげる
奈良公園や東大寺、春日大社など、奈良を代表する主要観光地の散策に便利な近鉄奈良駅。その近鉄奈良駅と大阪難波駅、京都駅を結ぶ観光特急が「あをによし」です。 列車名の「あをによし」は、古都・奈良にかかる枕詞で、都の美しさをイメージして名づけられました。近鉄奈良駅までは大阪難波駅から約40分、京都駅から約35分。外装や内装には天平文様のデザインが施され、道中から雅な古都の世界へ誘ってくれます。
(左上)エンブレムは天平文様の「花喰鳥」がモチーフ (右上)1・3・4号車のツインシート (左下)「シェラトン都ホテル大阪」製造バターサンド (右下)車窓から見える平城宮跡の朱雀門
「あをによし」の外装には、天平時代に高貴な色とされた紫色を採用。全4車両で構成され、1・3・4号車は1~2人で利用できるツインシート、2号車は3~4人のグループで利用できるサロンシートとなっています。 ツインシートは若草山の芝生を連想させる美しい黄緑色が印象的。向かい合わせの席と窓側を向いた座席があり、いずれもゆったりと配されています。座り心地にもとことんこだわっており、快適に過ごせるのも魅力。天井や壁、カーペットには、花や葉のモチーフを繊細に描いた天平文様がデザインされ、奈良に息づく歴史・文化が随所から感じられます。
(左上)無料でもらえる記念乗車証 (左下)開放感あふれるサロンシート。大きな窓が印象的 (右)サロンシートがある2号車の通路。 アーチ状のあしらいが高級感を演出
グループで利用できるサロンシートは1両に12席だけの贅沢な仕様に。座席と通路はパーテーションで区切られ、半個室のようなプライベート感あふれる空間となっています。窓も格段に大きく、開放感も抜群。車窓を流れる沿線の景色を楽しみながら、スイーツやドリンクをいただいたり、旅の計画を相談したり、のんびり過ごしましょう。
(左)おみやげに人気の大和し美しセットやあをによしふきんなど (右上)2号車にある販売カウンター (右下)バターサンドのセットドリンクはコーヒー、紅茶、ぶどうジュースを用意
正倉院の「校倉造(あぜくらづくり)」を イメージして作られた販売カウンターでは、車内限定グッズやスイーツ、奈良のクラフトビールなどを販売。奈良の老舗「中川政七商店」とコラボレーションした、あをによしふきん700円をはじめ、デザインや使い心地にこだわったグッズをラインナップしています。「オリーブなあられこつぶ丸」「大和抹茶ティラミスチョコレート」の2つの味がセットになった大和し美しセット1000円は、天平模様のパッケージがおしゃれ。おみやげにもきっと喜ばれます。 列車旅に欠かせない楽しみといえば車内限定メニュー。わらびもち入りの「抹茶わらびもち」と「マロン」の2つの味が楽しめるホテルメイドのリッチなバターサンド1100円(ドリンク付き、単品850円)、「あをによし」の紫色をイメージして作られた紫芋のモンブランなど、こだわりのスイーツがそろっています。
大阪、奈良、京都の3都を乗り換えなしで結ぶ「あをによし」。新幹線を利用して奈良に向かうなら、JR京都駅で近鉄線に乗り換えを。新幹線中央口の改札を出てすぐ目の前が「あをによし」が停車する近鉄の京都駅なので、乗り換えもとてもスムーズです。古都の歴史・文化が息づく雅な観光特急で、旅の目的地・奈良を目指しましょう。
「あをによし」の詳細はこちら
観光特急「あをによし」
かんこうとっきゅうあをによし
【奈良】藤の花が艶やかに咲き誇る世界遺産・春日大社へ
本殿の前にある中門と、中門から左右に約13m、鳥が翼を広げたように延びている御廊。本殿は春日造の4棟からなり、国宝に指定されている
近鉄奈良駅に着いたら、奈良公園でのんびりくつろぐ鹿に癒やされながら散策を。春日山 原始林を背景に鎮座する春日大社には、緑が滴る表参道を歩いて約30分で到着します。 平城京の守り神として768(神護景雲2)年に創建され、世界遺産にも登録されている古社。3月下旬頃からしだれ桜、4月中旬頃から藤が艶やかに咲き誇り、壮麗な朱塗りの社殿や境内を彩ります。
摂関近衛家から献木されたという砂ずりの藤。花の房が地面の砂にすれそうに なるほど伸びることから名づけられた
神聖な山々には創建当時から藤が自生し、古くから藤の名所として知られています。とりわけ御本社の砂ずりの藤は、樹齢700年以上の名木。万葉植物を植栽する境内の「萬葉植物園」にも20品種、約200本が咲き誇る藤の園があります。春日大社の神紋でもある藤の優雅な花どきを愛でましょう。
(左)奈良の鹿は春日大社の神使とされ、愛護されている(右上)藤の時期限定の藤まもり1000円 (右下)陶器製の白鹿みくじと木彫りの鹿みくじ各600円
参拝後は、愛らしい鹿みくじをひいたり、藤の時期限定の藤まもりを授かったりするのもお楽しみ。約30万坪の境内には、御本社のほかに摂社や末社が62社あり、「春日大社国宝殿」やカフェ・ショップ「鹿音」などもあるので、時間に余裕をもってめぐりましょう。
春日大社
カスガタイシャ
【奈良】「中川政七商店」が手がける「奈良御菓子製造所 ocasi」へ
2022年10月にオープン。ショーケースや店内にはどら焼き(和菓子)、シルクチーズケーキ(洋菓子)、ペアリングジャム(水菓子)が並ぶ
近鉄奈良駅からは、歴史情緒あふれる町並みが残る「ならまち」へのアクセスも便利。奈良で創業し、約300年の歴史がある「中川政七商店」の本店やその新展開である「奈良御菓子製造所 ocasi」など、細い路地奥で素敵なお店に出会えます。 「奈良御菓子製造所 ocasi」では、水菓子、和菓子、洋菓子の3つを重ね合わせて楽しむ“奈良御菓子”を提案。奈良の三笠山になぞらえて三笠とも呼ばれるどら焼き、シルクロードから伝わった絹織物から発想を得たシルクチーズケーキ、大和橘をはじめ奈良の旬の果実とスパイスで作るペアリングジャムを販売しています。
イートイン限定のocasiプレート935円
店内ではその3種類の重なりを味わうocasiプレートを提供。奈良のハチミツを使った味わい深いどら焼き、クリーミーで口どけ滑らかなチーズケーキにみずみずしい季節のジャムをつけて、ペアリングの妙を楽しみましょう。 どら焼きやほうじ茶、和紅茶はテイクアウトができるので、ならまちの散策のおともにもぴったり。シルクチーズケーキとジャムのセット、どら焼きとジャムのセットもあり、大和橘の葉がデザインされたパッケージにも心がときめきます。奈良をルーツにした新しいお菓子は、奈良みやげや贈り物にもおすすめです。
(写真左)どら焼き385円、奈良県産のほうじ茶や和紅茶各330円 (右上)ペアリングジャム756円~ (右下)中庭には、奈良ゆかりの日本最古の柑橘・大和橘が植えられている
奈良御菓子製造所 ocasi
【奈良】新店「奈良水晶」できらきら輝く新感覚スイーツを
お店の看板メニュー、水晶餅に合う緑茶のセット1540円
2023年8月にオープンした話題の新店「奈良水晶」も奈良旅の目的地のひとつです。風情ある古民家でいただけるのは、店主の菅佳奈さんが試行錯誤の上に完成させた「水晶餅」。ほんのり甘い生地は透明感にあふれ、トロトロぷるんとした食感もやみつきになります。 水晶餅の下に敷かれている季節のエディブルフラワーが可憐な彩りをプラス。京都産大豆のきなこ、コクのある黒蜜をかけていただだきましょう。
透明感あふれる水晶餅。セットで付くお茶は知覧茶をはじめ、店主が厳選した茶葉を使用
古民家の趣が宿る店内。月ごとに内容が変わるランチもInstagramから予約を
「奈良水晶」では、目と舌で楽しめる趣向を凝らしたランチも評判。ランチと水晶餅の両方を楽しみに訪れる人も多いのだそう。氷の器で提供させる旬のお刺身の御膳や、耳型のパスタ・オレキエッテを使った洋食のセットなど、ランチの内容は季節ごとにガラリと変わります。情緒ある和の空間でお腹と心を満たしましょう。
奈良水晶
山全体が桜のグラデーションに包まれる吉野山
3月下旬頃、下千本から咲き始める。初夏の新緑やアジサイの季節も美しい
数ある奈良の観光名所のなかでも、春に訪れたいのが日本随一の桜の名所として知られる吉野山。約200種3万本の桜が下(下千本)・中(中千本)・上(上千本)・奥(奥千本)に密集。「目に千本見える豪華さ」という意味で「一目千本」といわれ、心に留めておきたくなる絶景が広がります。吉野山に咲く桜は、日本古来のシロヤマザクラが中心。品種ごとに花の色や開花時期が異なり、標高の低い、高いでも見頃が変わるため、1か月もの長い間、桜が楽しめるのも魅力です。 2004年には吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に認定。奈良時代に創建された金峯山寺や歴史ある社寺が立ち並び、参道には希少な吉野葛を使ったスイーツや奈良の郷土料理が味わえるお店が軒を連ねます。
上質な旅時間を紡ぐ列車「青の交響曲」で吉野山へ
シックで落ち着いた雰囲気の「青の交響曲」。1・3両目は座席スペースで、すべて2列+1列の幅広のデラックスシート。テーブルをはさんだ2人用のツイン席と3~4人用のサロン席がある
その吉野山へは、大阪阿部野橋駅と吉野駅を約78分で結ぶ観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」に乗車を。「上質な大人旅」がコンセプトのクラシカルな列車で、特製のケーキをいただきながら優雅に吉野を目指しましょう。
(左上)照明もクラシカルな雰囲気 (左下)上質な雰囲気のラウンジスペース (右上)雄大な吉野川や沿線の自然を満喫 (右下)奈良や沿線にまつわる書籍が並ぶライブラリー
「青の交響曲」の車内は、空間全体が深みのある木材やシックなグリーン、ブルーでまとめられており、高級感が漂います。アンティーク調の装飾や特注の照明がアクセントを添えるシックなラウンジ、ライブラリーもあり、思い思いの旅時間を過ごすことができます。 2両目のラウンジは、ソファや照明、窓の大きさなど、細部までこだわりが息づく落ち着いた空間。本を片手に飲み物を飲んだり、景色を眺めたり、会話を楽しんだり、自由にくつろげます。青の交響曲では、車窓から吉野や沿線の豊かな自然が眺められるのも魅力。大きな窓から見える四季折々の自然にほっと心が和みます。
(左上)近鉄ふぁーむごちそうトマトシャーベット、あすかルビーいちごジェラート各400円 (左下)和ハンカチ650円、バニラジェラート400円 (右)季節のオリジナルケーキセ ット1300円
「青の交響曲」でも車内限定メニューやおみやげにぴったりのグッズを販売。おすすめは「大阪マリオット都ホテル」のペストリーシェフ・山口祐シェフ考案の季節のオリジナルケーキセット。素材の組み合わせや口どけにもこだわった繊細なケーキは、食べると幸せな余韻を奏でます。 ほかにも、西吉野の名店「柿の専門いしい」の西吉野の柿スイーツセット、奈良の郷土料理・柿の葉寿司など、地元の名店の味や沿線の豊かな食文化が堪能できるメニューを用意。販売カウンターには大型のバーカウンターもあり、ワインや地酒などのアルコールメニューも楽しめます。
(左上)「青の交響曲」の記念乗車証 (左下・右上)吉野沿線の景観に調和するクラシカルな外装 (右下)車内限定販売のオリジナルサイダー 550円
吉野山へは、大阪阿部野橋駅や橿原神宮前駅などから近鉄線に乗って、玄関口である吉野駅へ。非日常に誘う上質な観光特急「青の交響曲」に乗車すれば、吉野山への旅のはじまりも締めくくりも、さらに格別なものになるはずです。 吉野山の桜が見頃を迎える4月1日~14日は、混雑が予想されるため臨時ダイヤで運行予定なので注意が必要です。吉野山全体も大変混雑するため、事前にしっかりと旅の計画を立てておきましょう。桜の時期以外にも、鮮やかな新緑に包まれる初夏やアジサイの季節、紅葉に染まる吉野山も絶景ですよ。
「青の交響曲」の詳細はこちら
観光特急「青の交響曲」
かんこうとっきゅうあおのシンフォニー
【吉野】吉野山を象徴する修験道の総本山で世界遺産の金峯山寺
国宝の蔵王堂。本尊に金剛蔵王大権現を祀る。蔵王堂拝観料は800円。国宝の仁王門は改修工事中で、2026年頃に完了予定
古事記や万葉集にも名が記され、日本の歴史とも関わりが深い吉野山。その吉野山を象徴する寺院が金峯山寺です。修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)によって奈良時代に創建されたと伝わる古刹。日本古来の山岳信仰に道教・儒教・密教などが結びついた「修験道」の総本山であり、世界遺産に登録されています。高さ34m、間口36mの威容を誇る蔵王堂は、東大寺の大仏殿に次ぐ木造大建築といわれ、国宝に指定されています。
蔵王堂の堂内はスギやヒノキなど巨大な自然木を使った柱で支えられている
3月23日から5月6日の期間は、国宝・仁王門の大修理勧進のため、国重要文化財で日本最大の秘仏である「金剛蔵王大権現」3体が特別に開帳されます(特別拝観料1600円)。青い体に憤怒の形相、右足を持ち上げた姿は迫力に満ちています。普段は公開されていない秘仏を、ぜひ間近で拝みましょう。
金峯山寺から階段を約500段下りた先には、頭脳の神様・ 脳天大神龍王院も
金峯山寺
きんぷせんじ
【吉野】吉野山の桜景色を表現したさくら羊羹を買いに
さくら羊羹(ハーフ)550円~。日持ちがするので、おみやげにも人気
金峯山寺をお参りした後は、その参道にあるお店めぐりを楽しみましょう。「萬松堂」は金峯山寺の仁王門前にあり、明治時代から吉野詣の参拝客に愛され続けている和菓子店。店主の橋本英之さんが先代からの味を大切に守り続けています。 こちらのお目当てが、見た目も麗しいさくら羊羹。「一年中、吉野の春を楽しんでもらいたい」という思いから生まれた和菓子で、透明な寒天の中に桜の塩漬けをふわりと咲かせ、吉野の花盛りを表現しています。桜の繊細な風味を引き立てるため、下の羊羹はあっさりと甘さ控えめに仕上げられています。
草餅1個150円。もちもちの食感は作りたてならでは。賞味期限は当日限り
さくら羊羹と並ぶ看板商品が、ヨモギたっぷりの生地に、丁寧に炊き上げた北海道産小豆の自家製こし餡を包んだ草餅。昭和天皇にも献上した、「萬松堂」を代表する銘菓です。注文が入ってから一つひとつあんこを包み、作りたてを提供。こし餡も甘さ控えめで、ヨモギの風味がふわりと鼻を抜けます。1個から購入できるので、散策のおともにもぴったりですよ。
萬松堂
まんしょうどう
【吉野】吉野山の入口にある神社で、お守りと御朱印を授かる
帰り道には吉野山の麓に鎮座する吉野神宮へ。1889(明治22)年に創建された、後醍醐天皇を祀る神社で、桜の時期でもそこまで混み合うことはなく、静かな時間が流れています。社殿は御所帰還を熱望していた後醍醐天皇の心情を汲みとって、京都のある北向きに。厳かな雰囲気に包まれた本殿には魔を払って福を招く大きな「猪目(いのめ)」があり、御守にも用いられています。
(左上)猪目御守1000円~。季節限定の猪目御守が授与されることも (右・左下)境内のご神木である桜の花びらを納めた桜玉守4000円(桐箱、小瓶、御守袋付)
心静かに参拝した後は、ご神木の桜をとじこめた美しい桜玉守や御朱印を授かりましょう。桜玉守に納められた桜の花びらの色や形は一つひとつ異なり、同じものはありません。桜玉守を入れて持ち運ぶ御守袋も吉野神宮で丁寧に作られており、数種類から選ぶことができます。 人気なのでSNSで頒布される日が告知されるのですが、もし参拝日になくても、受付でお願いすれば後日郵送で送ってくれるので安心。このほかにも、本殿の猪目を模して奉製された猪目御守や季節ごとにデザインが変わる切り絵の御朱印などを授かることができます。
(左)繊細な切り絵の御朱印1500円 (右上)うさぎみくじ500円。後醍醐天皇が崩御された年が卯年だったことから、うさぎに関連する御守も多い (右下)季節の飾りで彩られる手水舎
吉野神宮
よしのじんぐう
移動手段としてだけでなく、乗車した瞬間から奈良の魅力に触れられる観光特急「あをによし」と「青の交響曲」。上質で特別な車両で過ごす時間も、奈良や吉野旅の素敵な思い出になりますよ。
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山本恵里 写真:保志俊平
近畿日本鉄道 公式Instagram「わたしは、奈良派。」
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