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2025.08.11
港町のシンボル横浜三塔めぐり♪レトロな歴史建築とクラシカルなカフェを訪ねて
異国情緒あふれる港町・横浜のシンボルとして、街の景色に彩りを添えているのが「横浜三塔」といわれる歴史のある建築物です。重厚な神奈川県庁本庁舎「キング」、優美な横浜税関「クイーン」、そして親しみやすい横浜市開港記念会館は「ジャック」と呼ばれ、昭和初期に外国の船員たちが、それぞれの塔をトランプのカードに見立てて呼んだことが由来とされています。この三塔がそろい踏みしたのは昭和初期で、いつしか船員たちが航海の安全を祈る目印となったのだそう。 この記事では三塔の歴史と建築美をたどりながら、そのすぐそばで見つけた素敵なカフェでひと休みする横浜さんぽをご紹介します。
帝冠様式が美しい神奈川県庁本庁舎「キングの塔」
クラシカルなパリの社交場を思わせる「カフェ・ドゥ・ラ・プレス」
港を見守るエキゾチックで優美な「クイーンの塔」横浜税関
隠れ家みたいなレトロビルのカフェ「cafe&shop kaguya」
赤レンガの時計塔が印象的な「ジャックの塔」横浜市開港記念会館
帝冠様式が美しい神奈川県庁本庁舎「キングの塔」

神奈川県庁正面
まず訪れるのは横浜三塔のなかでもひときわ威風堂々とした風格のある神奈川県庁本庁舎「キングの塔」です。日本大通りのイチョウ並木の先に、その重厚な姿が見えてきます。現在の建物は1928(昭和3)年に竣工。スクラッチタイルで覆われたシンメトリーな外観は、まさにキングの名にふさわしい迫力です。

アールデコと和風の装飾が調和するエントランス
最上部は五重塔を思わせるようなデザインで、昭和初期に流行した「帝冠様式」のはしりといわれています。西洋建築の力強さの中に、日本の伝統美が融合した独特のスタイルに加えて、細部は幾何学的な装飾が美しいライト様式や、直線的なアールデコ風のデザインも見て取れます。巨匠フランク・ロイド・ライトの影響を受けた意匠が随所に散りばめられており、建築好きにはたまらない見どころが満載。平日の日中には本庁舎の6階にある歴史展示室や屋上展望台が公開されているので、眺めを楽しむのもおすすめですよ。

中央階段の球形の照明は極楽浄土に咲く幻の花と言われる宝相華がモチーフ
神奈川県庁本庁舎
カナガワケンチョウホンチョウシャ
クラシカルなパリの社交場を思わせる「カフェ・ドゥ・ラ・プレス」

シャンデリアがほんのりと灯る店内
キングの塔を堪能したら、日本大通りを渡ってすぐの場所にある「カフェ・ドゥ・ラ・プレス」へ。昭和4年に旧横浜商工奨励館として建てられ今は「横浜情報文化センター」として活用されている歴史的建造物の2階にあります。「記者の集まるパリのカフェ」をコンセプトにした店内は、高い天井にアーチ型の梁、太い大理石の柱など、もともとの建築の美しさが活かされた贅沢な空間です。

「記者たちのカフェ」(840円)と一緒にオーダーしたいフランス菓子「エモア」(630円)
大きな窓から差し込むやわらかな光も魅力のひとつ。交差点に面した窓からは先ほど訪れたキングの塔が、日本大通り側の窓からは美しいイチョウ並木が望めます。エスプレッソとスチームミルクが別々に運ばれてくる「記者たちのカフェ」を自分で混ぜて好みの味に仕上げたら、手作りのケーキと一緒に優雅なティータイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。

四季のうつろいを映す窓辺
「カフェ・ドウ・ラプレス」の記事はこちら
カフェ・ドウ・ラプレス
港を見守るエキゾチックで優美な「クイーンの塔」横浜税関

エレガントな横浜税関
カフェでくつろいだ後は、潮風を感じながら海岸通りを歩いて「クイーンの塔」こと横浜税関へ向かいます。キングの塔の重厚さとは対照的に、白くスマートで優美な姿が印象的。イスラム寺院を思わせるエキゾチックな青緑色のドームが空に映え、「クイーン」の愛称がぴったりです。

アーチを描く正面玄関の屋根部分 写真協力:横浜税関
現在の建物は1934(昭和9)年に建てられた3代目。高さ51mを誇る塔は、港に出入りする船にとって、今も昔も横浜の街のやさしい道しるべとなり、軽やかでエレガントなその姿は、多くの人々に愛されています。 庁舎の1階には資料展示室があり横浜税関の歴史や役割など、見どころが満載です。入場無料なのでぜひ見学もしてくださいね。
横浜税関 資料展示室(クイーンのひろば)
ヨコハマゼイカン シリョウテンジシツ クイーンノヒロバ
隠れ家みたいなレトロビルのカフェ「cafe&shop kaguya」

レトロなビルの2階のカフェ
クイーンの塔からほど近く、隠れ家のようなカフェ「cafe&shop kaguya」。築90年近いビルの、当時の面影を残す細い入り口やタイル張りの階段を上ると、そこは外界の喧騒を忘れるほど静かで穏やかな空間です。白い壁にアンティークの椅子やテーブルが配された店内は、どこか懐かしく、心がほっと落ち着きます。

「ベイクドチーズケーキ」(500円)「アイス抹茶ラテ」(700円)
ここでは、家庭的でやさしい味わいのランチプレートや、日替わりの手作りケーキがいただけます。京都・宇治の契約農家から仕入れる抹茶を使ったラテや、丁寧にハンドドリップで淹れるスペシャリティコーヒーも絶品。耳を澄ませば、船の汽笛が聞こえてきて、旅情をかき立てられます。ぜひ港町らしい贅沢なカフェタイムを満喫して。

一人で訪れてものんびりと過ごせる店内
「cafe&shop kaguya」の記事はこちら
cafe&shop kaguya
カフェ&ショップ カグヤ
赤レンガの時計塔が印象的な「ジャックの塔」横浜市開港記念会館

赤レンガ造りの横浜市開港記念会館
三塔めぐりの最後は、横浜のシンボルとして親しまれている横浜市開港記念会館「ジャックの塔」へ。赤レンガに花崗岩の白いラインが映える外観は美しい、どこか懐かしさも感じさせます。
クラシカルな窓の装飾 写真協力:横浜市開港記念会館
横浜開港50周年を記念して市民からの寄付により1917(大正6)年に創建されました。三塔の中では最も古く、国の重要文化財にも指定されています。
2階ロビー 写真協力:横浜市開港記念会館
東南隅にそびえる高さ約36mの時計塔、西南隅の八角ドーム、西北隅の角ドームと、見る角度によって表情を変えるデザインが特徴的。館内に足を踏み入れると、色鮮やかなステンドグラスや、大正ロマンを感じさせる優雅な階段、美しい講堂など、見どころがたくさん。横浜の歩んできた歴史のロマンに浸ってみるのもおすすめです。
横浜市開港記念会館
ヨコハマシカイコウキネンカイカン
豪華な特別室で味わう老舗喫茶店の極上コーヒーとランチ

オーキッド特別室
ジャックの塔のすぐそば、歴史ある街並みに溶け込むように佇むのが、1974年創業の老舗「コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ」です。昭和の時代にタイムスリップしたかのようなレトロモダンな喫茶店で、奥の「オーキッド特別室」では、シャンデリアがまばゆい光を放つ豪華な空間が広がります。それでいて不思議と心が安らぐのは、長年人々に愛されてきた喫茶店ならではの懐の深さかもしれません。

「パフェ ルミエール」(1200円)
サイフォンで淹れるコーヒーは、通常の約2倍にあたる20gもの豆を贅沢に使い、香り高くコク深い味わいです。レトロなグラスで提供される「パフェ」も創業当時からの人気者。一度ワインに漬けてから揚げるという「仏蘭西風エビフライ」など、手間ひまかけた洋食ランチも絶品です。特別な空間で、極上の一杯と共にのんびりと過ごせますよ。

「仏蘭西風エビフライ 」ライスとコーヒー付き(1600円)
「コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ」の記事はこちら
コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ
コーヒーノダイガクイン ルミエール・ド・パリ
レトロな三塔が織りなす風景に時を忘れる横浜さんぽ
日本大通り歩道のスポット案内 写真:高橋茉弓
キング、クイーン、ジャック。それぞれに個性豊かな横浜三塔は、かつて船員たちが航海の安全を祈り、港へ戻る目印とした希望の塔でした。この三塔の美しい姿を、一度に望めるビュースポットが横浜の街に点在してしています。代表的なのは、開放的な「赤レンガパーク」、歴史的建造物が並ぶ「日本大通り」、港を一望する「大さん橋国際客船ターミナル」の3か所です。最後にこれらのスポットを訪れて、三塔が織りなす特別な景色を眺めてはいかがでしょうか。
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高橋茉弓
Writer
高橋茉弓

おやつの時間を何よりも大切にするライター&カメラマン。波の音とカフェがあればそれで幸せ。
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