
28
2025.08.17
心ときめくアイテムを探しに、ハタオリマチ・富士吉田のテキスタイル雑貨ショップ「絹屋商店」へ
山梨県富士吉田市は長い歴史をもつ織物の産地。高い技術力があり、上質で機能的な製品をつくるファクトリーブランドが多く、注目を集めています。2024年には、ファクトリーブランドの厳選した商品がそろうセレクトショップ「絹屋商店」が、本町通りの路地にオープン。蔵の雰囲気もすてきなショップで、長く使いたくなる織物アイテムを探してみませんか。
富士吉田は平安時代の書物に残る織物の産地

本町通り商店街から小さな看板を目印に細い路地へ。そこに建つ蔵の中にオープンした「絹屋商店」
山梨県富士吉田市は、1000年以上も続く高級織物の産地。江戸時代には絹織物で全国に知られるようになり、とくに明治から昭和にかけては織物業がさかんな時代でした。技術力が高く、ハイブランドも手掛けていたのですが、OEMのため、産地や工場の名前が出ていなかったといいます。そこで2代目や3代目が、ファクトリーブランドを作ろうと立ち上がりました。現在、富士吉田の織物産地は「ハタオリマチ」の愛称で呼ばれています。
蔵と古い民家をリノベした文化複合施設「KURA HOUSE」

木のぬくもりを感じる「絹屋商店」の店内には、ファクトリーブランドの商品が並ぶ
「絹屋商店」は、富士吉田で活動するデザインと企画の会社「シーダ株式会社」が立ち上げた、ファクトリーショップの製品がそろうセレクトショップ。お店はメインストリートの本町通りと、かつて多くの織物問屋が立ち並んでいた絹屋町に面しています。店名もこの町の名前が由来。

イベントスペースとして使用する蔵の3階。ライブや展示会、映画上映会が開かれることも
この場所には築80年の蔵2つとその間に母屋が建っていますが、2022年に事務所にしていた母屋やイベントで使用していた蔵をリノベーションし、「KURA HOUSE」と名前を付け、奥の蔵はイベントスペース、母屋にはカフェ「蔵の台所」を設けた文化複合施設としてオープン。2024年7月には、手前の蔵に「絹屋商店」がオープンしました。

蔵にあった古材をうまく活用した絹屋商店の店内
この一角はかつて銀行の支店長の社宅だったそうで、質屋として使われていた時代もあったということから蔵には屏風や建具、衣類、茶箱、鏡などさまざまな古道具や古材が詰まっていたそう。蔵に収蔵されていた天板や茶箱などを使って、絹屋商店の什器に活用しています。
富士吉田のテキスタイル雑貨がそろう「絹屋商店」

リネンをのせたテーブルも蔵にあった扉を活用
町の中心の本町通りには織物を買う場所がなかったといい、「町の人たちに、いま、この産地で作られている織物を紹介したいという気持ちと、 文化や歴史、伝統産業に興味がある人に向けてお店を開こうと。それまで培ってきた機屋さんとのネットワークと、自分たちがデザイン会社ということで、ある程度しつらえをデザインできるので、お店を始めました」と代表の杉原悠太さん。

若手デザイナーとファクトリーブランドがコラボした御朱印帳なども並ぶ
機屋さんの海外出展事業にも参加しており、社員みんなで織物のことを勉強して理解を深めているそう。「伝統産業の歴史の厚みを知って感動しました。自分たちは直接織物をつくりませんが、この産地の未来に向けてお店ならではの関わり方があると考えています。やればやるほど織物が好きになっています」と話す姿に、織物への愛を感じます。
ハタオリマチ・富士吉田の多様な織物に出会う

近くの商店が解体するというのを聞き、もらったという看板猫の昭和時代の招き猫。かわいらしいがま口は「富士桜工房」ブランド
店内にはファクトリーブランドのリネンタオル、やさしい色合いのオーガニックコットンの小物、肌ざわりのいいショールなど、季節ごとの上質なアイテムが並んでいます。織物の多様性を誇る富士吉田ならではの品ぞろえ。染色工場と一緒に開発したモノトーンのムラ染めのトレーナーや、デザイナーが描いた富士山柄のTシャツなど衣類も人気です。 気になるアイテムが見つかったら、スタッフにそのファクトリーブランドがどんなブランドか、技術のすごさや思いを聞いてみると、より愛着のあるアイテムになりますよ。
使うほど柔らかくなる「TENJIN factory」のリネンタオル

「洗いざらしリネンタオル」2200円~はハンド、フェイス、ボディの3種類。「プレミアムワッフルリネンバスタオル」14300円は手ざわりが抜群
おすすめのファクトリーブランドをいくつかピックアップしてご紹介します。 まずは、リネン製品で知られる「TENJIN factory」。高密度でリネンを織り上げる技術をもつファクトリーです。平織りでかために仕上げられた人気の「洗いざらしリネンタオル」は、水をよく吸うリネンの糸をたくさん使っているため、吸水性が高いといいます。殺菌力もあるので、年中部屋干しでも匂わないとか。「育てるリネンといわれ、惚れて6年間、使い込んでいますが、使うほどに柔らかくなっています」と杉原さんも愛用。 もう1つのおすすめは、近年登場した「プレミアムワッフルリネンバスタオル」。ワッフル織のため、ふわふわの肌ざわり。吸水力も高く、乾きもいいそう。いいとこどりのプレミアムシリーズです。値段は高めですが、日々の暮らしを豊かにしてくれ、長く愛用できる1枚です。
肌ざわりのいい「Watanabe Textile」の極上ショール

「Watanabe Textile」の「blanket」シリーズ22000円~
「渡邊織物」の3代目で、もともと建築を勉強されて、現在は織物を作りながら写真やアートなどの創作活動も行う渡邊竜康さんのテキスタイルブランド「Watanabe Textile」。経糸(たていと)にキュプラ、緯糸(よこいと)にウールをいれるという革新的なことに挑戦しているブランドです。 上質で美しいブランケット・ショールが話題で、「8年以上続いているシリーズ。watanabe textileの定番商品です。富士吉田の人たちはもちろん、吉田によく来る方々はみんな使っているのではないかなと思うほど。ハタフェス(ハタオリマチフェスティバル)でも女性に人気が高い商品です」と杉原さん。ウール、アルパカ、キュプラなどを組み合わせたチクチクしない生地で、肌にやさしいブランケットです。渡邊さん自身が敏感肌だからこそできた商品だとか。夏はリネンとコットンを合わせた、ショールに使えるブランケットもあります。
赤ちゃんにも安心の「前田源商店」のオーガニックコットン

「前田源商店」のオーガニックコットンはどれも人気
「前田源商店」は、90年代初頭からいち早くオーガニックコットンの織物を製造しているファクトリーブランド。赤ちゃんの肌にあたるものと意識して製品を作っていて、素材も作り方も染料もやさしいというこだわりをもっているとか。 富士山麓で暮らす動物柄のふんわりやわらかな手ざわりのオーガニックコットン100%の2重ガーゼハンカチや、履き心地のいい「足首ゆるふわそっくす」、ストールなどがあります。やさしい色合いは草木染めで染めたもの。富士山麓の天然素材と富士山の湧き水で染めているので、安心できるアイテムです。
デザイナーとファクトリーブランドのコラボにも注目

堀田ふみさんがデザインした「サコッシュ」6600円やワンピース、ミニバッグなど
富士吉田のお隣、西桂町で活動していた(現在は愛知)テキスタイルデザイナーの堀田ふみさんのブランド「Aneqdot」も人気。ファクトリーブランドと協同で制作したバッグや衣類も並びます。その前はスウェーデンで制作活動をしていたことから、北欧の空気感も取り入れられたデザインもすてきです。 東京造形大学のOGが温泉をイメージしたタイルのデザインを考案し、機屋さんの「光織物」に提案して制作した「IIYU TEXTILE(イイユテキスタイル)」も、遊び心のあるデザインが人気です。若手とのコラボも積極的におこなっているのも、ハタオリマチの魅力のひとつ。

「IIYU TEXTILE」を代表する「IIYUサコッシュ」の男湯と女湯
町の人たちとの作ったオリジナル手ぬぐいも

富士山の絵柄もみごとな「本町通り手拭い」1500円
杉原さんがデザインを担当した商品もあります。本町通り商店街「本町大好きおかみさん会」プロデュースのオリジナル手ぬぐいです。商店街の看板がなくなっていっているので、町の景色を残したい、外国人にも喜ばれるものをという依頼を受けて制作。作画を担当した友人の画家と一緒に絵のタッチなどを決めながら制作に取り組み、染色もプリントではなく、注染にこだわった一品。市内の老舗「山口染物店」に依頼して、染め上げました。 富士山が見える商店街をうまく表現した手ぬぐいはおみやげにもぴったり。看板のあるお店で販売しています。
古い民家で楽しむカフェ

ショップ隣の日本家屋をリノベーションした「蔵の台所」
ショップ隣の日本家屋はランチが楽しめるカフェ「蔵の台所」。昭和時代のテーブルなどもレトロな雰囲気を醸し出しています。杉原さんは移住する前、韓国に滞在していたこともあり、韓国の食文化が好きだったそう。カフェの店長はじめ、KURA HOUSEを運営するメンバーたちもアジアの食文化が大好きで、蔵の台所ではアジアンメニューを中心に提供しています。営業日はInstagramを確認してくださいね。 ドラマでも話題になった富士吉田の本町通り。訪れた際には、富士吉田の織物にも目を向けてみてはいかが。
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。
文:細江まゆみ 写真:加藤熊三
雑貨
の人気記事
の人気記事









































