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2025.10.30
ミュージアムにめぐりをたのしもう、赤レンガと運河に出会う半田へ
愛知県は、スタジオジブリの世界を体感できる「ジブリパーク」や、3年ごとに開催される国際芸術祭「あいち」など、アートと文化の発信地としても注目を集めています。 しかし、それだけではありません。アートや建築、そして「まち」に息づくデザインがあちこちに点在。“ものづくりの文化”を感じながら過ごせる愛知県を旅してみませんか? 今回は、建築や歴史、文化をめぐりながら旅する“ものづくりのまち”、愛知県半田市をご紹介します。半田市は、知多半島の中央東部に位置し、名古屋からも電車で約30分。海運や醸造で栄えた、歴史あるまちです。
レンガとともに時を刻む、「半田赤レンガ建物」
お酢づくりの歴史と技を体感できる「MIZKAN MUSEUM」
レンガとともに時を刻む、「半田赤レンガ建物」

「半田赤レンガ建物」は、1898年(明治31年)に丸三麦酒株式会社の工場として建てられた歴史的建造物。国の登録有形文化財、近代化産業遺産にも登録されています。 「横浜赤レンガ倉庫」や「日本橋」の装飾部分なども手がける、建築家・妻木頼黄(つまきよりなか)氏による設計で、レンガ造りの建物としては国内でも有数の大規模建築です。


5重の複壁
建物には、ビールの熟成に欠かせない低温を保つため、内部が空洞になった「五重の複壁」や「アーチ床状の耐火床」といった特徴的な構造が当時のまま残されています。 また、北側の壁には太平洋戦争の戦禍をくぐり抜けた証として、機関銃の射撃跡もみることができます。

カブトビールの誕生の歴史や背景をたどる「常設展示」

館内に入ると、当時の姿をそのまま残した「イギリス積み」と呼ばれるレンガの壁が姿をあらわします。 明治時代から戦前にかけて、ビールの5大メーカーのひとつとして名を馳せ、この地で製造されていた幻の「カブトビール」。その誕生の歴史が、当時の写真や資料、模型、映像とともに常設展示で紹介されています。



レトロ感のある広告ポスター
カブトビールの広告物やビール瓶のデザイン、時代ごとに変化してきたロゴなども建物の特徴とともに紹介されており、見学を進めるうちに、当時の“ものづくり”への情熱や職人さんたちの心意気が伝わってきます。

時代とともに変化してきた、ビール瓶のデザイン
次の世代へつなぐ、地域の文化を発信する「企画展示」
半田赤レンガ建物は、建物やカブトビールの歴史を伝えるだけでなく、次の世代へ地域の魅力をつないでいく場としても活動。

年4回の企画展をはじめ、展示に関連したトークイベントやフィールドワーク、親子でたのしめる体験型イベントなども開催され、地域とのつながりを感じられる場所として親しまれています。

「ショップ&カフェ」でカブトビールと地元の味をゆったりと

カフェ
2015年に耐震補強などの改修工事を終えてリニューアルオープンした「半田赤レンガ建物」。館内のカフェでは、地元の新鮮な食材を使った料理とともに、復刻版カブトビールを味わえます。

ワインのような深い味わいの「復刻明治カブトビール」、麦の香ばしさが広がる「復刻大正カブトビール」、コクと苦味が特徴の期間限定「復刻昭和カブトビール」の3種類があり、どれにしようか迷ってしまいます。

ショップでは、復刻版カブトビールのほか、地域の発酵調味料(知多郡武豊町「伊藤商店」の3年熟成豆味噌、半田市「ミツカン」の純酒かす酢ミツ判山吹、碧南市「角谷文治郎商店」の三州三河みりん)や、地元ならではの食品、グッズも販売しています。 見学の記念やおみやげに、手に取ってみてはいかがでしょうか。

半田赤レンガ建物
ハンダアカレンガタテモノ
https://handa-akarenga.com/cafe_beer/
café & beer hall & shop
お酢づくりの歴史と技を体感できる「MIZKAN MUSEUM」

黒塀が続く半田運河沿いの街では、風に乗ってお酢の香りがほんのりと漂います。その一角に建つのが、ミツカンの体験型博物館「MIZKAN MUSEUM(ミツカンミュージアム)」。MIMという愛称で親しまれています。 江戸時代から続く酢づくりの歴史や、食文化の魅力を“見て・さわって・楽しめる!”人気スポットです。

運河をのぞみながら黒塀の道を歩くと、隣接するミツカン本社の木の扉も目に入ります。蔵造りの建物が並ぶ風情ある景観の中で、まるで時間がゆっくりと流れているような気分に。

歴史と最新技術が出会う、進化するミュージアム

2015年の開館以来、約56万人(2023年12月末時点)が訪れたMIMは、2024年3月にリニューアルオープン。約5,000枚もの来館者アンケートをもとに、「もっとたのしく、もっと身近に」ミツカンの世界を感じられるよう展示や体験内容を一新しました。


エントランスでは「味ぽん®」などミツカン商品のARコレクションを取得でき、スマートフォンを使って一緒に写真撮影ができます。 館内の見学コースは、「大地の蔵」「風の回廊」「時の蔵」「水のシアター」「光の庭」の5つのゾーンで構成されています。今回はミニコースで5つのゾーンの中から「太陽の蔵」と「光の庭」を見学します。
まるで江戸時代の醸造蔵にタイムスリップしたような「大地の蔵」

最初のゾーン「大地の蔵」では、ミツカンの原点となる酢づくりの歴史や、発酵文化を支えた自然の恵みについて紹介。 巨大な木桶や当時の道具が並び、まるで江戸時代の醸造蔵に舞い込んだような臨場感を味わえます。

ミツカンの法被姿が、なんともかわいらしい「みむみん」。
10時から15時30分までは、法被(はっぴ)姿の案内ロボット「みむみん」が15分ごとに登場。「ついてきてください。」と来場者を導きながら、静置発酵室(せいちはっこうしつ)までの見学ルートを順に案内してくれます。丁寧な説明と愛らしい姿に、思わず笑顔になるひとときが過ごせます。


お酒に酢酸菌を加え、2週間かけて発酵させる「静置発酵法」も紹介され、発酵の仕組みを“見て学べる”展示がたのしめます。

廊下のエリアには、蔵で働いていた人々にまつわる展示やお酢作りに欠かせない桶や樽を作る道具なども展示。 ミツカンと半田の人々との深いつながりを感じることができます。
ミツカンの酢づくりへのこだわりが感じられる、アトラクション体験コーナー

アバターを通じて、お酢づくりが体験できる「あなたも酢づくり職人」
「大地の蔵」後半の体験コーナーでは、江戸時代の職人の知恵や工夫を再現したアトラクションが登場。 酢の入った「いない桶」をかついでみる体験や、自分のアバターを通して酢づくりに挑戦できる「あなたも酢づくり職人」など、五感で楽しめる仕掛けが満載です。
オリジナルラベルも作れる、子どもから大人までたのしめる「光の庭」
1階の「光の庭」は、子どもから大人まで“おいしくて地球にやさしい食”について楽しく学べるエリア。未来の食をテーマに、来館者の想像力を刺激する展示が並びます。

人気の「味ぽんスタジオ」では、自分の顔入りマイ味ぽんラベルが作れる体験も。 「そうぞうファクトリー」や「みらいウィンドウ」では、自分だけの“未来の食卓”を考える体験ができ、親子で夢中になる姿も見られます。

MIMの美しい中庭

フルーティスりんご酢「マンゴー」

オリジナルカンタン酢のラベルも作れるコーナーも。
ここでしか出会えない、とっておきのミツカングッズが勢揃い

見学の最後は、ユニークなグッズが並ぶショップエリアへ。 ミツカンの歴史を感じる法被や前掛けのほか、ここでしか手に入らない商品やオリジナルグッズが充実。見ているだけでも楽しく、おみやげ選びにもぴったりのスペースです。

MIZKAN MUSEUM
ミツカンミュージアム
半田のまちとミュージアムを満喫

赤レンガ建物や運河沿いの街並みを歩きながら、歴史やものづくりの息吹を感じる半田の一日。ミュージアムを見学しながら街並みを歩くだけで、心までゆったり満たされます。魅力がぎゅっと詰まった半田の街へ、ぜひ出かけてみてください。
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モリサワ ジュンコ
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