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2026.07.20
横浜・野毛で受け継がれる老舗の味。「洋食キムラ野毛店」で味わう幸せな洋食時間
横浜・野毛の街を歩くと、どこか懐かしい空気をまとった洋食店が現れます。1938年創業の「洋食キムラ野毛店」です。創業以来、多くの人に愛されてきた味は、三代目店主へと受け継がれ、今も変わらず鉄皿の上で香り高く湯気を立てています。長い年月を重ねてきたデミグラスソースには、この店ならではの工夫と歴史が息づき、昔から通う人には変わらない安心を、初めて訪れる人には新しい発見を届けてくれます。野毛散策の途中に立ち寄りたくなる、横浜を代表する洋食店をご紹介します。
三代にわたり守り続ける変わらない味へのまなざし

JR関内駅から徒歩約12分
80年以上の歴史を持つ「洋食キムラ野毛店」。現在店を切り盛りするのは三代目店主です。 職人気質だった初代の祖父、その背中を追った二代目の父。そして今も、その姿勢は三代目へと受け継がれています。

壁には常連客が描いた絵画が並ぶ
代々受け継がれてきた味は、細かなレシピは残されていないのだそう。料理は先代の仕事を見ながら覚え、自ら試行錯誤を重ねながら磨いてきたものです。 季節によって肉や野菜の状態は少しずつ変わるため、その日の素材を見極め、火加減や煮込み具合を細やかに調整しながら、一年を通して変わらないおいしさを守り継ぐ老舗の洋食店です。
受け継がれる河童の物語とデミグラスソース

店頭の看板
店先で目を引く河童の看板には、野毛らしい物語があります。初代店主が芥川龍之介の『河童』に感銘を受け、この界隈の文化人たちと結成した「河童の会」にちなみ、自ら描いたものです。上を向く河童の後ろ姿は、現在も店のシンボルとして親しまれています。店内には彫金で作られた河童のご本尊が大切にしまわれているのだとか。

昔ながらの洋食店らしさが漂う
洋食の味の要となるデミグラスソースは、手間と時間を惜しまず仕上げます。牛肉と香味野菜を煮込んでブイヨンスープを作り、赤ワインや生クリームなどを合わせたブラックルー、さらにブールマニエを加えて、もう2日間ゆっくり煮込みます。こうして生まれる深いコクに、最後のひとさじとして自家製梅酒が加えられます。これは、ワインが手に入りにくかった戦後に、梅酒を使ったことが始まりでした。やがてそれはこのお店ならではの味わいとなり、今も変わらず守られています。長年つぎ足しながら使い続ける鍋にも、歴史そのものがしみ込んでいるようです。
鉄皿いっぱいに広がる名物ハンバーグのごちそう時間

シェル型の鉄皿がおしゃれ
メニューにはビーフシチューやオムレツなど、昔ながらの洋食が並びます。その中でも長年愛され続けているのが「ハンバーグセット」です。 シェル型の鉄皿にのせられたハンバーグは、テーブルに届いたときも熱々のまま。ぐつぐつと音を立てるデミグラスソースから立ちのぼる香りに、思わず食欲をそそられます。

サラダとごはんまたはパン付「ハンバーグセット」(2010円)
ソースは長時間煮込まれたことで角が取れ、まろやかな甘みと奥深いコクが感じられます。やわらかなハンバーグとよくなじみ、一口ごとに昔ながらの洋食らしいやさしい味わいが広がります。 仕上げにそっと割り入れた生卵に、鉄皿の上で少しずつ火が入り、まるで貝殻の中で真珠が輝くような姿に。見た目にも楽しく、最後まで熱々のまま味わえるのも、この店の魅力です。
サクッと軽やかに頬張る昔ながらのカニクリームコロッケ

「カニクリームコロッケセット」(2620円)
もうひとつ、多くの人が目当てに訪れるのが「カニクリームコロッケセット」です。 ナイフを入れると、きつね色に揚がった衣の中から、なめらかなクリームがふんわりと顔をのぞかせます。衣は軽やかな歯ざわりで、サクッという心地よい音とともに、カニの豊かな風味が口いっぱいに広がります。 手づくりのマヨネーズや、トマトの酸味が広がるケチャップと合わせれば、また違った味わいに。長年培われてきた洋食店ならではの技が、一皿の中に息づいています。
野毛を代表する洋食店のやさしい味わい

「ドリップパックコーヒー」(500円/3個入り)「洋食キムラのドレッシング」(800円)
昔ながらの洋食を守りながら味を磨き続ける「洋食キムラ野毛店」。受け継がれてきたデミグラスソースや、熱々の鉄皿でいただくハンバーグには、三代にわたって積み重ねられた時間が感じられます。店で提供されているものと同じレシピで作られた自家製ドレッシングや、コーヒーのドリップパックコーヒーなど、老舗の余韻を持ち帰ってはいかがでしょうか。
洋食キムラ野毛店
ヨウショクキムラノゲテン
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文:高橋茉弓、写真:依田佳子
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