淡路島・風が体を駆け抜けていく、島のふく
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淡路島・風が体を駆け抜けていく、島のふく

旅行に出かけるとき、洋服選びに困りませんか? どこかに行けばいつの間にか誰かのカメラに納まって記録に残ってしまう今、SNSにタグづけされた自分を見返すたびに、「あ~あ」とがっくりすることがあります。私を例に挙げるならば、それまで似合っていると思っていた洋服が、エイジングにともなう肌質や体型の変化によって似合わなくなっているのを如実に感じます。がっくり。そろそろ、自分の変化にあわせてクローゼットの中身を更新するときに差し掛かってきたのでしょうか。前回ご紹介した「233」のギャラリーで見つけた、手触りのいい「島のふく」は、ちょっと見た感じ、体型をあまり気にしなくてよく、しかもおしゃれで着心地のよさそうな雰囲気が気に入りました。もっとラインナップが見たくなり、南あわじ市の津井にあるアトリエ兼ショップに伺うことにしました。

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233のある洲本市内から南下すること20分。津井は淡路島の名産である瓦づくりのメッカの場所で、周囲にいぶし瓦がたくさん積み上げられていました。ぐるぐるとカーナビに惑わされ、海沿いを走ったり、高台を走ったりしているうちにやっとお店に到着。清々しい海風の吹いてくる高台に、「島のふく」のアトリエ、古民家Char*はありました。

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アトリエのオーナー、cheep-cheepは、夫婦ふたりのユニットです。 ご主人の清岡正明さんは、某高級アパレルブランドなどでパタンナーや経営に関わり、奥様のまなみさんは、某有名カジュアルブランドのパタンナーと企画をしていたとのこと。ふたりは横浜でcheep-cheepというパターンメーカーを始め、2005年には「Char*」という オリジナルブランドを立ち上げました。そして、2007年に住み慣れた横浜から奥様の実家のある淡路島に引っ越してきたそうです。築75年の古民家をセルフリノベーションした住まいとアトリエ、そしてショップにしている古民家Char*は、予約をして訪れるシステムになっています。

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お店に入ると、カラフルな品揃えに嬉しくて小躍り。オリジナルブランドの「Char*」にセカンドラインの「島のふく」、ユニセックスの「茶」、国産デニムが漆喰壁のナチュラルな空間にきれいにディスプレイされていました。 やっぱり車を飛ばしてきてよかった♪ 置いてある端から手に取ってみますが、テンションが上がってしまって頭がぐるぐる。どれも選べないような状態に。何はともあれ、身長158㎝、ずんぐりむっくり。中年なって体型に不安あり、でも今後あまり断捨離をしたくない私としては簡単に買うことはできません。ふだん着として暮らしのなかで活躍し、いつでもそれを着て旅に出かけられるもの。顔色が明るく元気に見えるもの。色んな洋服とあわせやすいもの。着心地のよいこと。丈夫なこと。体型がしっかりと出ないこと。作り手の顔が見える丁寧なもの。何よりも自分に似合うかどうかー。さあ、試着!何枚も着ますよ~。趣味趣向や暮らしが定まってきた40代からの洋服選びは、かなりワガママなのです。 cheep-cheepの洋服作りのベースにあるのは、流行に捕われず、オンオフ境目のない“毎日のふく”のであること、洗濯するごとに風合いが増していき、愛情の持てるものになること、オーガニックコットンや麻など自然素材であること。「現在中学3年生の子どもがいますが、彼が生まれてから自然素材を生かした洋服作りをしていこうと方向が定まりました」とまなみさん。2012年から始めた「島のふく」は彼女の暮らしから出た知恵と洋服づくりの哲学が盛り込まれたもので、身にまとうことで島を体現できる衣として誕生しました。

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かの古事記において、日本最初の夫婦、イザナミとイザナギは天沼矛(あまのぬぼこ)で混沌とした海をかきまわし、矛先からぽたりぽたりと落ちた塩の雫でオノゴロ島ができたといわれています。その、オノゴロ島の最有力候補、淡路島の南方にある沼島(ぬしま)でインスピレーションを得たというこの「島のふく」は、まさに日本の原風景を身にまとう気持ちで着れそうです。 「この服は着物と同様、平面を意識して型紙をおこしています。でも着用することで洋服のような立体に変化します。一枚の布で 包む、着る、纏う、巻き方を何通りにも変化する、ということができる新しい衣のあり方を提案したいんです」と熱っぽく語るまなみさん。ここにある服はすべて彼女がデザインからパターンなどすべて手がけています。 さて、10着は試着したでしょうか。どの服も一度洗いをかけてあり、ぱりっとしたままではなく洗濯後の感じがわかるのが嬉しいところです。まなみさんは、各服をデザインするに至った背景を丁寧に教えてくれ、それを聞いて納得して、一枚選びました。着るだけで肩の力が抜けるような、でも着用する人の個性が出てくるような、そんな服。そんな色。沼島をグリーンカラーでイメージしたそうですが、私には里山や森の緑にも見えてきます。自然の天日干リネンを使用した上着は、秋から春先まで暮らしや旅のシーンで活躍してくれそうです。14256円(税込)は普段着のシャツにしては決して安くはない額かもしれませんが、洗えば洗うほどに体になじみ、味となっていく「島のふく」は、まるで1本のデニムを育てていくような感覚となりそうです。

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太陽の光を受けた明るいグリーンが、健康そうな肌に見せてくれています。適度なゆるやかさを持たせた布が体の上を泳いでくれているのでずんぐりとした体型もさらりと隠れ、首もと、胸元が女性らしく見えるように空きが計算されています。肩に力が入らないから、上半身が軽やかに動く!これならば、長く着られそう! 翌日は、この装いで「ノープランパーティー 島の小さなお祭り」に参加することにしました。淡路島の爽やかな海風が体を抜けていくような服を着てお祭りの日を過ごすのが楽しみ。それは次回にご報告をする予定です。 藍染めや淡路島に伝承されていた漁師の「はたらくふく」を調べてさらに風土になじむ服作りを進めるまなみさん。冬の「島のふく」も注文してしまおうかしら♪

連載コラム「暮らしと、旅と...」バックナンバーはこちら

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