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2015.05.18
わたしのための京菓子を鶴屋吉信の「菓遊茶屋」で
京都の和菓子の老舗・鶴屋吉信の本店には、生菓子の実演を間近に拝見できる「菓遊茶屋」があります。職人の鮮やかな技による自分のためだけの生菓子を、お抹茶とともに味わいましょう。
しっとり落ち着いた和の空間がお待ちかね
地下鉄今出川駅から今出川通を西へ歩くこと10分、大通りに面して風雅にお店を構えるのは、1803(享和3)年創業の鶴屋吉信です。こちらのおすすめは2階のお休み処に併設された「菓遊茶屋」。職人が目の前でつくってくれる生菓子をいただけます。 今出川通に面したお店の正面玄関を通っても2階へ上がれますが、東側にあるお休み処の暖簾をくぐって入ってみましょう。先には路地風の小路が続き、京都らしい風情に心が浮き立ちます。
京菓子のライブを楽しみましょう
お抹茶付き972円。カウンター席は6席(予約は不要)。
お休み処の一角にある「菓遊茶屋」のカウンター席に座り、こしあんを主な素材に用いて蒸した生地の“こなし”と、こしあんを裏ごししてそぼろ状にした“きんとん”の2種類から選びます。匠の手のひらであんの玉がみるみる姿を変えてゆく様子はまるで魔法のよう。流れるように美しい匠の手の動きは、まばたきするのもおしいほど見つめていたいと思えます。ほどなくして差し出された季節の生菓子は、自分だけににつくってもらったもの。ちょっぴり贅沢な気分になりますね。 つくりたての生菓子はなめらかで上品な甘さ。ほろっと苦いお抹茶とともにゆっくり味わいます。「お抹茶の作法を知らなくても大丈夫、気軽にお越しいただいてゆったり召し上がってください。」と、今回生菓子をつくってくれた二宮猛さん。「菓遊茶屋」では職人との会話も楽しめるので、和菓子について尋ねればていねいに教えてもらえますよ。
季節の移ろいを生菓子にこめて
この日選んだのは“きんとん”の「岩根つつじ」。白のこしあんに色をつけたつつじの葉のやわらかな黄緑と花のピンクが可憐です。中はつぶあんで、こしあんとの食感の違いが楽しめます。季節ごとに意匠が変わり、5月中旬~6月上旬には「あじさいきんとん」がお目見えします。 少し季節を先取りしたものがつくられるので、これからの四季の移ろいを待ち遠しいものにしてくれますね。こんなに繊細でかわいいあじさいに出合えるなら梅雨の時期さえ楽しみになりそう。(「あじさいきんとん」の終了時期は変更になることがあります。) 精彩に富み凛とした菓子をつくる技術の修練には、最低でも10年かかると言われています。伝統に新しい感性を融合させ季節の美しさを模る京菓子は、おいしいお茶とともに五感を潤し、和の心を豊かにしてくれます。
老舗の甘味を味わいましょう
お休み処の人気メニューは「きな粉ゼリーと抹茶アイス」(756円)。香味深く口あたりの軽いきな粉ゼリーとクリーミーな抹茶アイス、ふっくらとした丹波大納言小豆の取り合わせが絶妙です。和菓子の老舗ならではの質と味が楽しめる定番の「小倉ぜんざい」(972円)は滋味深く、夏には丹波大納言小豆を用いたかき氷も登場予定です。紺の毛氈(もうせん)に腰かけて、緑の植栽と白砂の庭を愛でながらのひと休みもいいですね。 甘味のあとは1階で、おいしい和菓子をおみやげに。「つばらつばら」(1個152円)は、小倉あんをやわらかな焼皮ではさんだもので、万葉のことばで「しみじみと」という意味があるそう。しみじみと心ゆくままに京の和菓子をいただいてみましょう。 2つの大通りが交差する場所に建つとは思えないほど、静かで落ち着いた和の空間が広がる鶴屋吉信。陰陽師・安倍晴明を祀る晴明神社や球技の守護神として知られる白峯神宮への参拝のあとに、ほっこりとお茶をいただきたくなるお店です。
京菓匠 鶴屋吉信 菓遊茶屋
きょうかしょう つるやよしのぶ かゆうぢゃや
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