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2018.07.30
おいしいごはんと人の輪で移住者や地域を結び続ける 五島列島・福江島のコミュニティカフェ「ソトノマ」by ココロココ
首都圏と地方のご縁を結ぶ「移住・交流」をテーマとしたWEBマガジン「ココロココ」から、五島列島・福江島の「ソトノマ」を紹介します。
「ソトノマ」は、長崎県五島列島・福江島にあるコミュニティカフェ。2013年に娘の有川智子さんとともにUターン帰島した有川和子さんが切り盛りしている大人気のお店です。美味しいランチをいただきながら、オーナーの有川和子さんにお話をうかがいました。
食堂、野菜販売など多彩なコミュニティカフェ「ソトノマ」
福江島は、長崎県西岸・五島列島最大の島。長崎や佐世保などからの高速船で約1時間、フェリーだと3時間ほど離れた島です。島には空港もあり、長崎空港から40分、福岡からも50分ほどで来ることができます。 福江島をはじめとした五島列島では、最近、九州各地をはじめ、全国からの移住者が増えています。その増加を後押しするような存在なのが、2013年に福江島にオープンしたコミュニティカフェ「ソトノマ」です。

ソトノマ外観 テラス席もあります

元気なグリーンたちがお出迎え
「ソトノマ」は、モーニングやランチ・ときに夕食も提供する食堂機能だけでなく、多彩な機能を持つ施設です。島の野菜やオーナー厳選の雑貨の販売もありますし、畳になっているくつろぎスペースの本棚には、漫画や本が並べられています。

五島だけでなく各地からセレクトした調味料や雑貨の数々

ピカピカのトマト!もちろん福江島産です
なによりここは食事が美味しい!と聞いて、福江島の素材をふんだんに使った愛情たっぷりに作られたランチをさっそくいただくことにしました。
美味しい日替わりランチは地元産の野菜や魚で大人気

見た目も彩りあざやかな本日の日替わりランチ
今日の日替わりランチ2種類の中から、たけのこ・新玉ねぎ・塩豆腐がたっぷりのスリミあげを選びました。スリミあげとは、五島の島どうふ、鯵のすり身をマッシュしてつくった魚のすり身を揚げたもの。 他にも五島産のキュウリやパプリカのマリネ、ごぼうといんげんのきんぴらなど、地元産の食材を使い、愛情を込めて作られたおかずがたくさん盛り付けられたランチプレートはボリュームたっぷりです。 味はもちろん最高!「ちょこちょこいろんなものが食べたい」女子にはたまりません。
毎朝地元の旬な食材を使った献立を考案

ダイヤモンドのように輝く「富江の塩」
美味しいこの食事をつくっているのが、「ソトノマ」オーナーの有川和子さん。御年60歳を越えてもイキイキと毎日現場でカフェを支えています。娘で建築デザイナーの智子さんとともに、このカフェをつくり、運営してきました。 和子さんはスタッフが朝、地元の市場で仕入れをしてきた食材を確認しながら、その場で今日の日替わりメニューを決めています。ほとんどのものに地元・五島産の食材をつかっているのもこだわりのひとつ。 また、塩も福江島で手作りで製塩している「富江の塩」を使っています。「この塩は満月の大潮時に海水を汲んで作ってるの。ダイヤモンドみたいにキラキラ光っているでしょう!」と目を輝かせながら紹介してくださいました。舐めてみると、天然のミネラル成分からなのか、塩なのに甘く感じるほど。
一度は離れた福江島。都会での暮らしに疑問を抱き、Uターンを決断
和子さんは、もともと福江島出身。娘の智子さんが小学生の頃までは家族で福江島に住んでいました。その後、長崎市内に居を移し、子育ての傍ら住宅メーカーに勤務していました。長女の智子さんが独り立ちして大阪の会社で働いている頃には、お孫さんの世話を手伝うために大阪に数年同居。 元来、子ども好きだった和子さん。2011年東日本大震災が起こった頃、大阪にいた有川さんファミリーは、智子さんの仕事が激務続きだったこともあり「子ども(孫)の環境を考えると、このまま都会に住んでいていいのか?」という疑問にぶつかります。結果、家族で福江島に戻るという決断をすることになりました。

福江島にUターンした当初は学童保育ができる施設をつくりたいと考えていた和子さんですが、その実現にはさまざまな障害があり、やむなく断念。ならば、子どもも大人もふらっと立ち寄れて、美味しいものが食べられるカフェをつくろう、と方向転換の舵が切られました。コミュニティカフェ「ソトノマ」の誕生です。 ソトノマとは外の居間という意味。家の中ではなく、外にある居間のように、ゆっくりくつろいで安心できる場になってもらいたい、という思いが込められています。
子どもが立ち寄れ、子育て支援にもなるこだわりの空間
「ソトノマ」には、子どもたちが靴を脱いでくつろげる畳のスペースがあり、遊べるおもちゃ、貸し出しもできる図書なども置いてあります。これらがあることで、子どもたちだけでなく、小さなお子様を持つ両親にとっても、安心してゆっくりできる場所として利用でき、結果、地元ママの子育て支援にもなっています。

小上がり座敷はお子様連れも安心のスペース

遊べるおもちゃもさりげなくかわいらしく置かれている
また、「ここはいつまでもゆっくり落ち着いていられる」とよく言われるそうですが、実はその雰囲気づくりには、空間デザインを担当した娘の智子さんだけでなく、住宅メーカー勤務だった和子さんのアイデアも取り入れられています。 それは、いすとテーブルの高さ。人間工学に基づき、普通カフェや食堂などで置かれているものよりも5㎝低くつくってあるのです。目線が低くなることで、平均身長の低い女性がよりくつろげる高さにしてあるのだとか。他にも壁の色や照明、レイアウトなど、建築目線での空間のつくりこみに工夫が凝らされています。

目線を低く、照明の色にもこだわったくつろぎ空間
移住者と地元の住人、観光客にも長く愛される地域のハブ
オープンして5年。「ソトノマ」は地域コミュニティのハブとしてなくてはならない存在になっています。特に最近増えている他県からの移住者にとっては、「ここがなかったら移住しなかった」という人がいるほど。 取材した日も、東京から移住して4年になるという男性が来店し、和子さんや常連のお客さんと談笑していました。この方は、町と協力して旧小学校の施設を利用したジビエ加工処理場をつくることになったと話してくれました。多様なバックボーンを持った移住者が増えることで、確実に新しい経済の動きも出来てきているようです。

「ソトノマ」有川和子さん
和子さんに、今までに「ソトノマ」に来て移住することになった人はどれくらい?と質問すると、なんと「最近はほぼ毎日、移住希望の人が来る」との答えが!五島市で把握しているだけでも年60〜70人程度、実際にはその倍くらいは島に移住者として来ているのではないか?とのこと。 気さくな和子さんの人柄と、美味しいごはん。居心地よい空間にと子育てにもやさしい店内環境。地元の人も観光客も、福江島に来たら情報収集兼ねてまずは「ソトノマ」へ。いろんな人をやさしく包み込むそんなコミュニティカフェです。

文・写真:西村祐子
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ココロココ

「モノ」と「お金」の交換ではなく、「ココロ」と「ココロ」の交換による人間関係の構築が、豊かな暮らしには必要であるという考えのもと、都市から地方への移住、地方と都市の交流のきっかけ・拠点となる、ヒトやコミュニティを紹介しています。
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