うどんを軸に、地域に新しい「モノ」や「コト」を創り出す会社。[瀬戸内うどんカンパニー/香川県三豊市]|by ONESTORY
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うどんを軸に、地域に新しい「モノ」や「コト」を創り出す会社。[瀬戸内うどんカンパニー/香川県三豊市]|by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から香川県三豊市の「瀬戸内うどんカンパニー」を紹介します。

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実在します、「うどんビジネス専門商社」。

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七宝山から瀬戸内海を望む。ハンググライダーやパラグライダーの飛び場として有名。

「うどんが主役の会社です。」とは、斬新な謳い文句です。しかしうどん店でも、製麺所でもありません。言うなれば「うどん」をはじめ地域の様々な資源を発掘し、新たな商品やサービスを発信していくプロデュース会社。いったいどのような展開を目論んでいるのか、探ってみましょう。 香川県三豊(みとよ)市は、愛媛県や高知県にも近い県西部にある瀬戸内海に面した地域です。創業100年以上を誇る製麺機メーカー「さぬき麺機」や、その関連施設「さぬきうどん技術研修センター」「さぬきうどん情報プラザ」があり、2006年公開の映画『UDON』のモデルとなったうどん店にファンが「巡礼」するなど、うどんの聖地としてブームを支えてきました。

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三豊(みとよ)を「うどん止まり」で終わらせない。

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年に2日間、夏季大祭の日しか渡ることができない津島神社。夕焼けが見事だ。

ただ、うどんはもちろんですが、農産物や自然、食など、まだまだ三豊(みとよ)には発信されていない魅力がいっぱいあります。瀬戸内海に突き出た半島の独特な地形を生かしたサイクリングコースやマリンレジャー、浦島太郎伝説が残る紫雲出山(しうでやま)、夕陽が美しい父母ヶ浜、仁尾(にお)の朝獲れ朝市……。市場に認知されず、眠ったままになっているこれらの観光資源を、県内外の人に知ってもらうきっかけをつくろうというのが今回のプロジェクト。認知度の高い「うどん」をフックに、観光や地域の産品と連携させ、地域活性化を図る――その目的で設立されたのが、地域商社『瀬戸内うどんカンパニー』です。

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チーフ・うどん・オフィサーに選ばれたのは32歳のキレ者。

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「縮小していく地域を自分たちの力でなんとかしたい」と北川氏。

地域商社とは、地域に眠る産品やサービスを掘り起こし、マーケティングや販路開拓・流通・プロデュースなどを行う会社。香川県三豊(みとよ)市と地域商社協議会などの構想から2017年に設立されましたが、100%民間の手による会社です。そのCUO(チーフ・うどん・オフィサー、最高うどんビジネス責任者)兼社長は、民間からの公募によって2017年9月に選ばれました。その人物とは、高知県出身、32歳の若きベンチャー企業経営者・北川智博氏です。

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高知はガンガン、三豊(みとよ)はおだやか。だから一緒に未来を考えたい。

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うどんだけではなく柑橘も生産。三豊(みとよ)には食の資源がいっぱいある。

北川氏は2016年、地域創生に乗り出す第一歩となる「株式会社MISO SOUP」(東京)を起業。1次産業者が作った産品をブランド化する6次産業化(産品企画〜開発〜販売)の重要性を見出し、ITなどを駆使した独自のノウハウに基づいて、地域産業においての価値創出に取り組んできました。うどんビジネスに関しては、「うどん経験値」は高い方ではありませんでしたが、出身が高知ということで、三豊(みとよ)市には親近感を持っていたといいます。「実家から三豊(みとよ)まで車で1時間ほどと近距離なのですが、人の気性が全く違うんです」と北川氏。高知は坂本龍馬の人柄からもイメージできるように、攻めの姿勢でガンガン行く性格の人が多いのに対して、三豊(みとよ)は温かく穏やかな性格の人が多い一方、自ら売り込むことが苦手な印象があるそうです。「だからこそ三豊(みとよ)の魅力発信をお手伝いできたらと思いました。自分自身も、三豊(みとよ)の人たちと相性がいいと感じています」と北川氏は話します。

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たかがうどん、されどうどん。コシを入れて地域活性化。

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浦島太郎が亀を助けたという伝説が残る浜・鴨之越。マリンスポーツで有名。

『瀬戸内うどんカンパニー』で北川氏が目指すのは、「地域外への価値の発信」と「地域内での交流の創出」。漠然としているように聞こえますが、会社の事業の柱はしっかり定まっています。それは、「商品開発事業」「『UDON HOUSE』事業」「ツーリズム事業」です。

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ストーリー性がある商品を。第1弾は『さぬきうどん英才教育キット』。

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『さぬきうどん英才教育キット』。祖父母と子、孫の3世代で「うどん体験」を。

「商品開発事業」とは、単に新しい商品を作るだけではありません。『瀬戸内うどんカンパニー』では「モノ」だけではなく「コト」も含めて価値化し、既存の商品をデザインしていくことを目指しています。そんな商品第1弾は、『さぬきうどん英才教育キット』。麺棒や小麦粉、打ち粉、だしなどが入ったセットで、子供が家庭で麺作りから行う工程を通じて、さぬきうどんを「知って」「体験して」「五感で感じられる」キットです。「うどんは美味しいだけでなく、日本の食文化を学べる食育ツールにもなるんです」と北川氏。近日中(2018年春)に発売予定だそうです。

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「食べた」だけよりも、「自分で打って食べた」という『体験』を伴った記憶の方が深く心に刻まれる。

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打って、食べて、うどんの夢を見ながら眠る宿(!?)を開館予定。

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JR本山駅から徒歩約1分の好立地に立つ空き家をリノベーション予定。

面白いのは「『UDON HOUSE』事業」。三豊(みとよ)には「うどん」を目当てに来る観光客が多いにも関わらず、「うどん屋さんでうどんを食べたらおしまい」で、その先につながるものがありませんでした。また、増え続ける外国人観光客に対し、食文化としてのうどんを伝えられるようなコンテンツが不足しています。そこで考えたのが、うどんをテーマにした宿泊・観光施設を造ること。それが『UDON HOUSE』です。目指すのは「24時間どっぷりうどんのことを考え、語り、学び、文化を体験する場」。チェックインすると、まず麺棒とエプロンを渡され、 ①うどん文化についての座学 ②専門講師の指導によるうどん打ち体験 ③業務用の製麺機の体験 ④出汁の取り方 ⑤天ぷらの揚げ方 みんなでうどんパーティ……と、ディープにうどんの文化と体験を楽しみます。 うどんの生地を寝かせている間には周辺の観光スポットを案内し、翌朝には「うどんホッピング」として地域のうどん屋をはしご。施設内には専用の薬味畑も設置されるとか。『UDON HOUSE』は四国八十八ヶ所の第70番札所である本山寺から徒歩15分ほどの空き家をリノベーションし、現在クラウドファンディングで一部資金を集め、5月末のオープンを目指して計画進行中です。

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「うどんをフックにこの地域に長く滞在してもらえる場にしたい」と北川氏。

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うどんとマリンスポーツ、「点」を「線」でつなぐ。

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そして「ツーリズム=旅行事業」ですが、これまで三豊(みとよ)ではシーカヤックやオリーブ観光農園など、魅力的な体験コンテンツはあるものの、各事業者が別々に発信し、別々に営んでいるため、有機的な連携ができているとはいえませんでした。これを『瀬戸内うどんカンパニー』がハブとなって事業者同士をつなぎ、情報発信や予約システムを集約させることで、需要と商品をうまくマッチングさせることができるようになります。今までは「点」だったものを「線」にすることで、うどん・体験・宿泊といったコース提案ができるなど新たな動線をいくつも作り出すことができるのです。

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よそ者だからいい。知らない街だからできる。

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まだ『瀬戸内うどんカンパニー』は走り出したばかりで、プランが形になるのはもう少し先のこと。ですが北川氏は地域と一体となり、商品の企画や試作、様々な交渉などプランを具現化している最中です。ここで、地元出身者ではない人物が地域おこしをすることで、住民とのハレーションはないのか?との問いに、北川氏からは「よそ者だからいいのかもしれません」と意外な答えが返ってきました。更に北川氏は「地元だと、土地の先輩への畏敬や遠慮が先に立って正直に自分の意見を出せないこともあります。よそ者だからまず自分から地域の仲間に入れてもらって、みんなで進めていこうという気持ちになります」と続けます。地域のために行うビジネスは、引っ張っていく・教える・指導するなど「上に立つ」のではなく、「一緒にやる」姿勢が大切なのでしょう。 「うどん県。それだけじゃない香川県」をコンセプトとして掲げる香川県。三豊(みとよ)から、「うどんプラスアルファ」のコンテンツが次々と発信されれば、香川での旅がより面白くなりそうです。

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