飛騨高山に家族で移住しゲストハウスを開業 自然体で地域の仲間とつながる「ゲストハウスとまる」横関真吾・まどかさん byココロココ
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飛騨高山に家族で移住しゲストハウスを開業 自然体で地域の仲間とつながる「ゲストハウスとまる」横関真吾・まどかさん byココロココ

首都圏と地方のご縁を結ぶ「移住・交流」をテーマとしたWEBマガジン「ココロココ」から、岐阜県・飛騨高山の「ゲストハウスとまる」を紹介します。

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岐阜県高山市。JR高山駅から徒歩2分、築70年は経つという元洋装店を改装した小さなゲストハウスが「飛騨高山ゲストハウスとまる」です。 「とまる」を運営しているのは、横関真吾・まどか夫妻。高山とは縁がなかったお二人が、自然豊かで日本の伝統美がある飛騨高山に惹かれ、家族で営める生業をと考え移住、2011年8月にゲストハウスを開業しました。 開業してからお子様が誕生、子育てをしながらのゲストハウス稼業や、縁がない場所での地域とのつながり方など、これから移住を考える方、夫婦で営む仕事のかたちの参考例となりそうです。インタビュー形式でどうぞお楽しみください。 聞き手:西村祐子(ゲストハウスプレス編集長)

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カナダでツアーガイドをする中で知り合い、二人で帰国。

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穏やかな表情でお話しくださる横関夫妻

西村:お二人の出会ったきっかけを教えていただけますか。確か、カナダでお知り合いになったとか? 真吾:はい。僕らもともとは、カナダのバンフにいて同じ会社でツアーガイドをしていました。1996年にカナダに行って現地で知り合い、二人とも帰国したのが2006年頃です。当初はワーキングホリデー制度で行きました。 まどか:わたしはカナダへは当初インターンシップという制度で行って、ツアーガイドをしながら日本語を教えていました。その後、運良く会社に労働ビザを出してもらえたので、そのままガイドの仕事をしていました。 西村:ゲストハウスをやろうと決められたのは、帰国してご結婚されてからですか? 真吾:二人でカナダから帰ってきて3年位経ってからでしょうか。「海の近くに住もうか」と鎌倉に1年くらい住んだあとですね。 まどか:当時は鎌倉のような海に近い生活に憧れていました。でも住んでみたら結局1年間一度も海に入らなかった。やっぱり山が好きなんだなと思って、それで山の近くに住もうということになりました。 西村:なるほど。実はそれって結構すごいことですよね。意外に思われるかもしれませんが、「好きだから行ってみて、住んでみた」って、そのままやれない人のほうが多いので、その素直さは素晴らしいです。 真吾:基本、僕らはそれが多いですね。「やってみたい、やってみよう」っていう。やるまでにやってみたらどうだろうか?とかあまり考えない。もともと山登りは好きだったので、その後鎌倉から長野県の茅野市に移って結婚し、地元のホテルで数年働いていました。

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高山の観光名所「古い町並み」は人通りがいつも絶えない人気スポット

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高山で物件探し。宿は駅前の立地とサイズ感にこだわった

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レトロなタイル柄や和洋折衷なソファが落ち着くとまるの共有リビングスペース

西村:高山駅から徒歩2分と立地のよい場所ですが、こことの出会いは?この物件に会うまでは時間がかかりましたか? 真吾:3ヶ月くらいは探しました。物件も10~20軒くらい見たでしょうか。他の候補は駅から遠かったり、物件的に廃業した旅館などを紹介されて、自分たちのイメージしていた大きさとは違っていて。家族で経営することを思うとそれほど大きな規模ではやりづらいなと。 西村:この家はかなり古そうですが、もともとはどういう場所だったのですか? 真吾:長く空き家でしたが、その前は洋服屋さんですね。前方が店舗で奥が事務所。大家さんが横の入り口から出入りして二階に住んでおられたようです。この物件を内見したときは既に駐車場になっていたのですが、よく見ると当時のショーウィンドウが残ってたりします。 西村:アットホーム感がある素敵なインテリアですが、この内装へのこだわりはどんなところでしょうか? まどか:あまり以前の雰囲気を壊しすぎないように意識しました。築70年は越えていて、もともととても大切に使われていてきれいだったので。

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地域に溶け込む努力は「雪かき」から

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西村:移住してきて、その後ゲストハウスを開業されたわけですが、地元の人との間で軋轢(あつれき)のようなものはありませんでしたか?地域によっては地元のしがらみとか、来た人に対して若干排他的なところもあったりすることもあると聞きますが。 真吾:高山市は地方ではありますが、(高山市は日本一面積が広い市町村で人口は9万人弱)高山駅周辺は結構大きなまちなので、そういう雰囲気はあまり感じたことがないですね。 まどか:全然そんな風に感じたことはないです。強いて言えば、移住した最初の頃だけ、近所の人に「どこのヤツがきた?」と好奇心混じりで見られていた気もしますが、冬に自ら進んで近くの道路まで雪かきしてみたりして。そうすると一気に認めてもらえたという気がします。ゴミ捨てをきっちりするとか、そういうことは重要ですね。 真吾:町内会の決まりごとをきちんと守るなど、当然ですがきちんとそうやって地域の人たちと関わるというのは大事だと思います。

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息子はゲストハウスネイティブ。おもしろい子に育ってほしい

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息子のハルくんは宿泊ゲストからも大の人気者

西村:高山に来てゲストハウスをスタートされたのは、子育てのことも視野に入れていたのですか? 真吾:いえ、もともと子どものことを考えてというよりは、「とにかく夫婦でできる仕事を」という方がまずありました。ただ、子どもができたことで、まわりの人との距離も一気に縮まった感じはします。 自分たちがゲストハウス始める前から、お子さんが二人いらっしゃるゲストハウスの方と交流がありました。その方に電話で相談したら「大丈夫、むしろお客さんが増えるから」なんて、後押しもしてくれました。 西村:実際いかがですか?子育てしながらゲストハウス経営をするにあたって、苦労したことはありますか? まどか:やっぱり最初は大変でしたね。けれども、この子が生まれてすぐにたくさん世界の人と会っているというのは、なかなかない貴重な経験ですごいことだと思うんです。生後1ヶ月位から家族じゃない人に抱かれて。そうやって育っていくと、おもしろい子に育つんじゃないかなと思いました。

西村:彼はもう生まれた頃からのゲストハウスネイティブですね!どんなふうに育つのか楽しみです!今後、息子さんをどういう風に育てたいという理想はありますか? まどか:みんなかわいがってくれるし、たくさんの外国人に出会えるこんなおもしろい環境はないと思うので、それをプラスにして、英語や多国語ができるなど自分のものにしていってくれたらいいですね。 真吾:逆にあまりに普通にいろんな国の人がいるから外国の方への「特別」っていう意識もないかもしれない。 まどか:子どもが生まれる前は「ゲストには赤ちゃんは泣き声もするし邪魔かな」と思ったりしていたんですが、実際は、子どもがいてくれるほうが話題にもなるし、逆に助かるくらいです。 真吾:宿に子どもがいるのを知っていて、来てくれる人もいるぐらいです。うちも子連れで他のゲストハウスに泊まりに行ったことがありますが、以前はバックパッカーで旅をしていた人が、これから将来、家族連れでゲストハウスに泊まりたいっていうことも増えてくると思うんです。僕たちはそういう人の受け皿になっていけたらいいなと思っています。

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地元と移住者をつなぐ「ひだマンデー」

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ひだマンデーはゲストも地元住人も一緒に楽しく過ごせるアットホームなイベント

西村:お二人はご夫婦になってから宿を開業されていますが、出会いがゲストハウスというご夫婦もいますよね。とまるで出会って結婚する人はいましたか? まどか:結婚まではまだ聞かないけど、カップルになった人たちはいますね。お客さんと地元の人とか。月1回のイベント「ひだマンデー」で知り合ったりだとか。 西村:「ひだマンデー」は、どういう経緯でスタートしたどのようなイベントなのですか?  真吾:オープンした当初は、移住してすぐの頃で、僕らも知り合いも少なかったんですね。それで年末を迎えたときに、高山で知り合った人を集めて、ありがとう的な忘年会をしたのがきっかけです。その後、宿泊ゲストや地元の人も両方に声をかけてわいわい集まるという今のかたちでスタートしたのが「ひだマンデー」です。月に一度、月曜の夜に集まっています。

このイベントをやってみてわかったのが、高山といっても広いので、意外と地元に住んでいてもお互い知らなかったりする。僕らも知り合いがいなかったので、これをやることで知り合いもどんどん増えて、楽しいだけでなくいろいろな地元の情報をもらったりしています。参加者はだいたい10人くらい。キャパの問題もありますが、それ以上になると場の収拾がつかなくなるので、15人くらいまでで開催しています。 食事は一品持ち寄りで、最初はもともと高山出身の人が多かったのですが、最近はIターンで移住してきた方や、仕事で高山に来て、地元の知り合いがもっと欲しいからという理由で来てくれる人なども増えました。 西村:移住者同士の知り合うきっかけにもなっているのですね。高山に移住される方自体も増えているのでしょうか? 真吾:実感としては増えている気がします。移住者で多いのは、飛騨は木工が有名なので、木工の学校に来てそのまま就職したりだとか、木工関係の人が多い印象でしょうか。

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中の様子がわかるガラス戸でオープンな雰囲気づくり

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高山駅から行ける観光地の数々。夏場は長期滞在してあちこち巡る外国人ゲストも多いのだとか

西村:今後、「とまる」をどのように運営していきたいですか? 真吾:近々というのはないのですが、「ひだマンデー」を続けていることで、地元に知り合いがどんどん増えたので、そういう人と一緒になにかおもしろいことをやれたら、という思いはあります。 まどか:観光客の人にもっと役立つソフトづくりとか。 真吾:たとえば、高山に来て、(近くにある世界遺産の)白川郷を見に行くだけだと、その人が、次にここに来るのは何年後か?となりますけど、高山には伝統のあるものがたくさんあるし、隣の飛騨古川にも、よい文化も根付いている。そういうものを紹介するようなことがやれたらな、なんて思うこともあります。

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1階共有ラウンジ。全面ガラス戸で外の様子もよくわかる

西村:宿の運営についてはいかがですか? まどか:ずっと家族だけで運営していたのですが、去年からはヘルパーさんにも入ってもらっています。スタッフが入ることで自分たちは他のことができますし、宿の雰囲気もよい意味で変わるので。 西村:今の規模はドミトリーが2つと個室が1つ、ご夫婦でやるにはよい規模ですよね。 真吾:元店舗というのがいいと思っていました。そうすると、お客さんが出入りしやすいから。 まどか:ゲストや地元の方も含めて、宿への入りやすさを重視しています。今は寒いのでカーテンで覆っているんですが、夏はそれも取って、外から見えるようにと入り口がガラス戸にしているのはこだわりのひとつです。

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子連れにやさしい落ち着けるゲストハウスを続けていきたい

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まどか:子どもが2歳になりイヤイヤ期が始まったので、お客さんが定員いっぱいのときは、ラウンジに余裕がなくなりがちで、ちょっとドキドキします。そういうときは、子どもを連れて家に帰ったりします。みなさん「かわいい」って言ってくれるけど、本当は子どもが苦手っていう人もいると思うので、そこは少し気遣いますね。 西村:逃げ場というか、逆に職住が完全に一体ではなく、歩いて数分でも別の場所にご自宅があるのは、まどかさんの精神衛生上もよいですね。 まどか:最近ゲストハウスを始める人は、比較的若い方が多いですよね。今は独身でバリバリやっているけれど、きっとこれからやっぱり結婚して、子どもができてという流れになる。そういう人にアドバイスのようなものが求められたら、答えられるような存在でいられるといいな、と思います。 西村:ひとつのモデルケースとして、家族でやるのにいい規模とか、家族経営をする上での工夫としてきっとよき見本になるのではないでしょうか。 まどか:わたしたち自体も今40代なので、ゲストハウスの雰囲気として「いえーい!」みたいな元気なノリは、ちょっと厳しいですよね。落ち着いていて、子連れにもやさしくて、お客さんがほっとできるような場所でありたいです。 西村:わたしもゲストハウスが好きのひとりですが、一階に広い共有ラウンジがあって、親しめる雰囲気があるのが好きなのであって、予算上そうすることも多いですが、特別に相部屋スタイルが好みというわけでもないんですよね(笑)。 例えばもっと個室があるゲストハウス、シャワートイレなどは共同で、もう少し自分の空間が確保できて、さらにこうした共同スペースもあるような宿が増えたらうれしいな、と個人的には思います。 真吾:そういう流れも含めて、これからまた新しいスタンダードをつくっていけたらいいですよね。

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2号店「とまろっとホステル」ができました!

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Tomarotto Hostelラウンジ「harubaru」

インタビュー取材から3年が経ち、その後ゲストハウスとまるでは、2号店の計画が立ちあがり、2018年春「Tomarotto Hostel 」(とまろっとホステル)がオープンしました。 「Tomarotto Hostel」の特徴は、古民家ではなくレトロなビルを改修していること。1階は「harubaru」という宿泊ゲスト以外の方も気軽に利用できるコーヒーやビールが飲める交流スペースになっていて、イベントにも使える場所として開放しています。2階には個室3部屋とドミトリー2部屋。家族連れの方にも使いやすい宿を目指しています。 また、宿への改修にあたっては、地元建築士さん協力のもと、過去とまるに宿泊したゲストの方や友人、近隣の方の巻き込んだ改修ワークショップを開催。出来るところはDIYで工事を行い、8ヶ月かけてゲストハウスに変貌を遂げました。 「飛騨高山ゲストハウスとまる」と2号店「Tomarotto Hostel」。ともに横関夫妻のすてきな感性と気遣いが反映された空間。ぜひハートフルなご夫妻に会いに、飛騨高山に訪れてみてはいかがでしょうか。 聞き手:西村祐子(ゲストハウスプレス編集長)—2014年3月取材 ゲストハウスプレスより記事編集・転載 文・写真:西村祐子

飛騨高山ゲストハウスとまる

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岐阜県 高山市花里町6-5

clock-icon8:00~11:00/16:00~21:00
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「モノ」と「お金」の交換ではなく、「ココロ」と「ココロ」の交換による人間関係の構築が、豊かな暮らしには必要であるという考えのもと、都市から地方への移住、地方と都市の交流のきっかけ・拠点となる、ヒトやコミュニティを紹介しています。

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