天然鮎がとれる清流のほとりで蕎麦をたぐる。[SHIMOIMAICHI HOPPING・山帰来/栃木県南小来川] by ONESTORY
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天然鮎がとれる清流のほとりで蕎麦をたぐる。[SHIMOIMAICHI HOPPING・山帰来/栃木県南小来川] by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から栃木県南小来川の「SHIMOIMAICHI HOPPING・山帰来」を紹介します。

「ONESTORY」公式サイトはコチラ

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自家栽培、自家製粉、手打ちにこだわった珠玉の蕎麦。

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ログハウスの伝統的な工法の集大成ともいえる構造体。窓からは小来川が見える。

下今市からクルマで20分ほど走った山間地にある小来川。山里の深い緑と清流に包まれたこの一帯は、全国屈指の蕎麦どころでもあります。蕎麦農家も多く、初夏になると畑一面が白い花に包まれ、それは見事だそう。そんな長閑な山里で目を惹くのは、蕎麦処『小来川 山帰来(おころがわ さんきらい)』です。山帰来とは蔓性の落葉低木のこと。ハート型の葉が特徴で、晩秋に真っ赤な実をつけます。花言葉は「休息」「不屈の精神」。その名のとおり、天然鮎が獲れるほど清らかなせせらぎのほとりで蕎麦をいただけば、最高の休息になること請け合いです。

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鮮度の高い挽きぐるみのそば粉を使用した「もりそば『山帰来』十割」1200円。

『小来川 山帰来』では、自家栽培した玄そばを別棟で保存し、その日使う分のみを自家製粉しています。手打ちにこだわった蕎麦は十割と二八の2種。存在感のある十割蕎麦をはんなりと上品なつゆにくぐらせて口に運べば、蕎麦の香りがぱっと口中に広がり、鼻腔をも満たします。可憐な薄紫色の辛味大根を使った「辛味大根おろし蕎麦」は、みずみずしい蕎麦の喉越しの後から爽やかな辛味が追いかけてくる一品。日光名物の新鮮な汲み上げゆばの刺身を二八蕎麦の上に乗せ、さらにゆばの天ぷらを乗せた「ゆば蕎麦」も人気です。そんな蕎麦の美味しさを倍増させてくれるのは、山帰来や桜など、山間地の樹木を象嵌の技法で表現した器たち。すべて、益子の陶芸家・佐伯守美氏によるオリジナル作品です。

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「辛み大根おろしそば」1300円。ツンとした爽やかな辛みがクセになる。

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「ゆばそば(冷)」1500円。温ゆばそばもあり。大盛りは300円プラス。

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「ゆばと季節の天ぷら」500円(奥)、「ゆばのおさしみ」500円。

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自然から受けた感動を作品に込め、独自の世界を表現する佐伯守美氏の器たち。

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「桜」を象嵌の技術で表現した佐伯氏の器。手に持った時の温かな感触も印象的。

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蕎麦もつなぎも地元のものを使用。十割蕎麦は限定なので予約がベター。

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元パティシエという細やかな感性を生かし、そば粉を練ってゆく。

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別棟の粉挽き棟内に設けられた打ち場。職人の手作業を外から見ることができる。

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都会と里山を繋ぎ、地域を活性化させる『小来川 山帰来』。

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「夏場は裏の小来川に渓流釣りやBBQを楽しむ方がいらして、それは賑やかですよ」と星野氏。

オーナーの星野光広氏は、地域資源の活用や野生鳥獣被害対策支援など、街づくりのコンサルタント的会社の代表を務める人物。未来に小来川の集落を残すべく「山帰来プロジェクト」を展開しています。そのコアな活動が、食を通して都心と里山を繋ぐ『小来川 山帰来』なのです。

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取材中、見かけたのはノスリだったか? 悠々と空を旋回していた。

建物や粉挽き棟に使用されているのは、樹齢80年以上の地元の杉。切りだした杉160本をハンドカットし、組み上げたのは、現代ログハウスの神様、アラン・マッキーの薫陶を受けた日本屈指のログビルダーたちです。梁に丸太を使用しているので骨太な印象ですが、漆喰と組み合わせることでしっとりと落ち着いた空間に。「地域活性化を謳った論文や書籍は多いですが、実践してみないと説得力がありませんから」と星野氏。この他、『山帰来』では敷地内にひいた清流で山葵を育て、調理師免許を持つ地元の若者を雇用して蕎麦職人として育成。付近の耕作放棄地約3haで蕎麦を栽培するなど、地域活性化の一端を担っています。

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過疎地の隠れた宝に光をあて、地元を自立させる。

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星野氏と周辺の農家の方々による手作りの炭焼き小屋。何でも作ってしまうバイタリティーに脱帽。

もともとご実家は畜産農家だったという星野氏。周辺の農家が次々に廃業するなか農家に転業。『山帰来』で出している辛味大根もご実家で作っているものです。一方で、大きな悩みも抱えています。「この辺りは鹿が多く、食害が深刻です。対策として電気柵の導入に踏み切りましたが、保持していくにもお金がかかります。しかし、国の補助金が出るのは5年間だけ。ですから、ゆくゆくは自立した形で鳥獣対策ができるよう自分達で炭を作り、商品化のうえ販売を考えているんです」。

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試作品の炭。全て手作業のため、形や大きさはバラバラだが、燃焼時間は抜群。

店からクルマで5分ほどいった山のふもとに手造りの素朴な炭焼き小屋がありました。一帯に只ひとり炭を焼くことができる方がいたそうで、みんなで炭焼きを教わったそうです。試験的に焼いたというさまざまな樹種の炭を打ちならしてみると、キンと澄んだ音が響きました。「庭の手入れが出来ないと嘆いている高齢者の方も多いので、そんな方々のお手伝いをする代わりに、炭の材料になる枝をいただくような仕組みも考えているところです」。先人の知恵を継承し、活用先や調達先を自分達で作りだせば、無駄のないサイクルが生まれる――。星野氏が考える地元の再生は、あくまで自立が基本です。

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取材時はまだ肌寒い2月だったが、薪ストーブのおかげで店内は暖かかった。

今回、店内を取材させていただくなかで真っ先に目についたのは、温かな炎が揺れる薪ストーブでした。その話をすると、「では次は薪を切るところをご覧になりますか?」と星野氏。先の炭焼き小屋とは違う方角にクルマを走らせること数分。ついた先には大ぶりの丸太がごろごろと転がっています。「この辺りの間伐材を薪にしているんです。毎日、相当量を使いますので、とても買ってなんていられません。薪を割るのも自分達です(笑)。チェーンソーを使うところなんて、なかなか見る機会はないでしょう?」。刃に詰まったチェーンソーオイルを取り除き、混合燃料を注入してスイッチを入れれば、青空に勢いよくブルン、ブルン、チュイィィィンという音が響きます。

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チェーンソーの爆音が長閑な山間地の空に溶けてゆく。

大地に種をまき、採れた実から蕎麦を作る。それに付随する作業も全て自分達で行う。その知識を身につけている星野氏を見ていると、こういうことが真に豊かということでは?と思えてなりません。 (supported by 東武鉄道)

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丸太を切るための道具。「これを人力でやろうと思ったら大変です」と星野氏。

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星野氏の後ろに広がるのは蕎麦の畑。初夏は蕎麦の白い花でいっぱいになるという。

山帰来

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栃木県 日光市南小来川395-1

clock-icon11:00~15:00
pin-icon火曜
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