東北は問いかける。「生きる術を持っているか?」[Reborn-Art Festival 2019/宮城県石巻市]by ONESTORY
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東北は問いかける。「生きる術を持っているか?」[Reborn-Art Festival 2019/宮城県石巻市]by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から宮城県石巻市の「Reborn-Art Festival 2019」を紹介します。

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失われてはじめて、「あった」ことに気づいた。

2011年の東日本大震災で、私たちは不可抗力の自然の猛威により多くのものを失いました。命、建物、文化、歴史。しかしその災害は「喪失」だけを私たちに与えたのではありません。逆説的ですが、震災で全てが失われたことをきっかけに「あったものは何か」を認識するようになったのです。 被害を受けた東北地域には、人の手の加えられていない自然が多く残され、人の営み、地域の伝統芸能、豊かな食と暮らしがありました。同時に、私たちにはかつて「生きる術」があったことに気づきました。思想家・人類学者の中沢新一氏によると、生きる術とは、食や住や経済などの「生活の技」、アートや音楽やデザインの「美の技」、地域の伝統と生活の「叡智の技」、これらを発見し、地域が繁栄していけるよう子孫に受け継いでいくための道筋であると言えます。 「Reborn-Art Festival」とはすなわち、「Art=人の生きる術」を「Re・born=蘇らせる」総合芸術祭。東北だけではなく、全国各地で今、私たちが失いつつある「生きる術」を、被災地である石巻でもう一度取り戻し、未来へ繋げよう—。そんな想いから2017年にスタートしました。

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中沢新一氏は今回、石巻駅前エリアでのキュレーターを務める。

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東北の地で、人々がアートと音楽と食で繋がる。

音楽プロデューサーの小林武史氏が代表理事を務める非営利団体「ap bank」が主催となり小林氏は実行委員長も務めます。中心となるのは、「アート」「音楽」「食」。石巻市の牡鹿半島を中心に、国内外のアーティストが地域や地元の人々と触れ合いながら作品を制作・展示し、音楽ライブや、各地から集まった有名シェフたちが地元の食材を活かした料理を提供。初回は名和晃平、ルドルフ・シュタイナー、宮島達男らのほか、音楽でもエレファントカシマシ、Chara、スガ シカオら著名アーティストが参加しました。

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「10年という長いスパンでRAF(Reborn-Art Festival)を企画している」と小林氏。

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今回は新たに「マルチキュレーター制」を取り入れ、より多彩に。

プレイベントとなる昨年の「TRANSIT! Reborn-Art 2018」を経て今年、盛大に2回目が開催されます。テーマは「いのちのてざわり」。小林氏は「現代社会の状況は、人が生きることの本質からどんどん遠ざかりつつあるように思える。石巻でしか生まれ得ない『いのち』という我々の根源に深く触れることのできる作品を、そこで新たなポジティブをみつける未来に向けたダイナミズムを、ぜひ体感していただきたい」と語っています。 今回のポイントは、新たにマルチキュレーター制を取り入れ、7つのエリアで7組のキュレーターがそれぞれのテーマをもとに作家をセレクトし、作品を展開すること。例えば桃浦エリアでは小林氏がキュレーターとなり、草間彌生氏、増田セバスチャン氏、パルコキノシタ氏、村田朋泰氏などの作品で展示を構成。「リビングスペース」をテーマに、震災によって居住空間が変貌したものの、強烈な過去の記憶も残る牡鹿半島・桃浦で「現在進行形でのリビングスペース=生きる場とは何か」を探るアートプロジェクトとなります。

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世界的アーティスト集団「WOW」と、DAISY BALLOON、小林氏がコラボした『D・E・A・U』。

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貝殻で埋め尽くされた荒涼とした白浜に、名和氏の『White Deer(Oshika)』は佇む。

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今年も、牡鹿半島を和多利兄弟や草間彌生らが彩る。

また前回のメインキュレーターだったワタリウム美術館の和多利恵津子・浩一氏が牡鹿半島の網地島にアートによる「楽園」を作るなど、今年の参加アーティストたちが牡鹿半島の各エリアをそれぞれの思いで彩ります。普段はキュレーションをしない作家もどのような展示を繰り広げるか、国内外のアート業界から注目を集めています。

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2017年に、牡鹿半島の先端「御所番公園」に展示された草間氏の『真夜中の花』。

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いにしえと現代を融合させたライブや舞台作品も。

もちろん音楽イベントも予定しています。8月3日、4日に石巻市中央体育館で行われるオープニングイベントでは、様々な時代の名曲たちによる日本語歌詞のオリジナリティを掘りさげ表現するライブを開催。また、7月13日(岩手県釜石市)と9月22・23日(宮城県塩竈市)には宮沢賢治の作品をベースに中沢新一氏が脚本を書き下ろし、小林氏がオペラに仕上げた「『四次元の賢治 -完結編-』」を公演。キャストには俳優の満島真之介氏、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、Salyu、ヤマグチヒロコ氏を配し、異色の音楽舞台作品となります。

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『四次元の賢治』は2017年バージョンからキャストも新たに加わった。

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東北は食の宝庫。海、山、野の自然をテーマに「食を冒険」する。

また、今回も「食」をより充実させています。前回に続き、牡鹿半島の明るく元気な浜のお母さん達の浜の営みを感じられる食堂「はまさいさい」と、荻浜を眺めながら地元の食材を楽しめるレストラン「Reborn-Art DINING」が登場するほか、地域の食材や自然をテーマにしたツアーに参加し、ゲストシェフがその食材に関する体験をお皿で提供する「石巻フードアドベンチャー」などを実施。フードディレクターはパリ出身の料理人兼アーティストであるジェローム・ワーグ氏と、ジェローム氏とともに神田に「the Blind Donkey」をオープンした原川慎一郎氏が務めます。

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浜の母さんたちの味が楽しめる「はまさいさい」。

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名和氏の鹿を眺めながら、東北ならではのスペシャルな料理をいただく。

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復興への足取りを、一歩一歩。

「Reborn-Art Festival」は、より地域との結びつきが強く、よりアート性が高い、まさに総合芸術祭という名にふさわしいイベントです。前回の来場者は51日間の会期中延べ26万人にのぼり、その経済効果は22億円と言われています。 日本の名だたるミュージシャンやアーティスト、シェフなど、ものづくりに携わる人々が、東北の未来、そして日本のこれからを真剣に考えると、これほどに壮大なムーブメントを起こせるのか—。その強く真摯なメッセージに心を動かされることでしょう。

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2017に行われたSalyu×小林武史Live。今年の音楽イベントも楽しみだ。

写真提供:Reborn-Art Festival

Reborn-Art Festival 2019

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宮城県 会場:牡鹿半島、網地島、石巻市街地、松島湾(石巻市、塩竈市、東松島市、松島町、女川町)

clock-icon開催期間:2019年8月3日~9月29日(網地島エリアは8月20日より開催)
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※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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