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2020.02.07
春の海風と自然を感じる、ゆったり八丈島の旅へ
東京から南へ287kmの太平洋に浮かぶ八丈島は、伊豆諸島の最南部にある人口約7300人の島です。 八丈富士と三原山のふたつの火山の間にある谷に空港や集落があり、海に森にとお楽しみどころが盛りだくさん。2月には朱色のアロエ、3月にはカラフルなフリージアや可憐なオオシマザクラなどの花が咲き、暖かな春のいぶきを感じられます。 八丈島で穏やかな日差しと爽やかな海風に触れたなら、うきうきと心弾ませて春を迎えられそうです。
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木漏れ日あふれる森のカフェで、の〜んびりと
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標高700メートルの三原山は10万年以上前に誕生した場所。深く、静かな森に癒される。
八丈島は長崎県佐世保市や高知県の室戸岬と同緯度にあり、年間を通して温暖で湿度が高いのが特徴です。2〜3月の平均気温は高いほうで12〜15℃くらい。森の中でだって、陽が射せばぽかぽか陽気に包まれます。 羽田空港から飛行機に乗り、朝の一便で到着したならまず、「自然ガイドサービス 椎 」ガイドの大類由里子さんと待ち合わせて島の東側にある三原山方面へ。 途中、神社に立ち寄り山から湧き出る清らかな水を汲んでから、緑濃き三原山の自然の中を歩きます。ガイドの大類さんは八丈島の海から山までの自然を知る達人。地形や植生など、丁寧に教えてくれます。 お楽しみは、森カフェ。森の中に腰をおろし、先程汲んだ水を使ってホットサンドやおしるこをつくります。今回は、岩盤を流れる水路にできる穴「ポットホール」のそばでのすてきなランチタイム。水の音が、気持ちいい。
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しいたけなど島内の材料をつかったホットサンドのランチが人気。汲んできた八丈島の清らかな水で淹れたコーヒーを飲めば、心も体も島になじんでいく。
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自然ガイドサービス 椎
シゼンガイドサービス シイノキ
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自然からの授かりものをかたちにして
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天然素材の染めと織は鮮やかなまま、家族に代々伝えられるものとして珍重されてきた。
鮮やかな黄色に黒や鳶色の格子柄が印象的な絹織物、黄八丈。森を歩いた際に見た、八丈島に自生するコブナグサ、シイノキ、タブノキのほか、ヤブツバキの葉を刈り取って染料や媒染液をつくり、それぞれ20〜40回ほど丹念に絹糸を染めてやっと織り機で織ることができる希少な織物です。 そんな黄八丈の製作工程を見学できる「黄八丈めゆ工房」は、東京都指定無形文化財技術保持者であった故山下めゆさんが開いた工房です。今では島に一軒しかない貴重な染織元だけに、ここでしか見られない、触れられない、本物の美しさに目を奪われてしまうはず。
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今も現役の江戸時代の機織り機を使って織る山下誉さん。重しに玉石が使われているのが八丈島らしい。
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黄八丈めゆ工房
キハチジョウメユコウボウ
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自分でつくる、黄八丈のアクセサリー
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所要時間は1時間程度。スワロフスキー、天然石など自分好みのビーズと組み合わせてピアスまたはイヤリングをつくる。
着物は高価ですが、アクセサリーなら気軽に手に入れられそう。「雑貨屋ラミ」では、黄八丈の糸でつくったストラップやブレスレット、ピアスを販売しています。 オーナーの松本恭子さんは、黄八丈の着物を持っていても袖を通す機会があまりなく、もっと手軽に身につけられないかと模索していたところ、偶然知り合いからもらった糸でアクセサリーにすることを思いついたのだとか。 せっかく訪れたのなら、本物の黄八丈の糸を使ってピアスやブレスレットを自分でつくってみてはいかが? 事前に黄八丈アクセサリーづくり体験に申し込んでおけば、マンツーマンで教えてもらえます。
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こちらは、販売しているもの。タッセルピアス、ストラップ、ブレスレット、ミサンガなどがある。
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雑貨屋ラミ
ザッカヤラミ
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1日の終わりに、海辺で深呼吸をするひととき
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岩に打ち付ける波、吹き抜ける風、黒々とした玄武岩。八丈島が火山の噴火によってできた島だということを実感する場所。
夕暮れどきは、「南原千畳岩海岸」へ。八丈富士が噴火した際に流れ出た溶岩が海にそそぎこみ、黒く、ゴツゴツとした玄武岩の岩場をつくり上げました。 長さ500mほどの範囲の岩場を歩いてみたら、真っ黒に固まった溶岩流と大海原が広がる島ならではの絶景に、地球の胎動を感じることができるでしょう。 八丈小島に沈む夕日を眺めたら、深呼吸をして島の1日は終わります。
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南原千畳岩海岸
ナンバラセンジョウイワカイガン
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2日目は、朝からはしご湯
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末吉エリアにある「みはらしの湯」は、露天風呂から眼下に見渡せる雄大な風景で人気がある。行くなら朝一番、もしくは星空のタイミングを狙って。
島の南東部の「坂上(さかうえ)」と呼ばれる樫立・中之郷・末吉地区は、温泉の宝庫。島にある7ケ所の温泉施設がすべてここにあります。中には無料のものもあり、水着を持参しての温泉めぐりは八丈島ならではの自然を感じる「はしご湯」となりそう。 車があるなら、最初に行った場所で1日周遊券を購入すると有料の温泉施設4ケ所に入れますが、もし車がなくても、路線バス乗り放題で島湯めぐりのできるチケット「BU・S・PA」があります。2日間温泉入り放題なので、道中に宿泊地を決めて回ってもいいですね。 海沿いの温泉施設では、運がよければクジラを見られることもあるとか。
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「裏見ヶ滝温泉」は無料で入れる温泉。男女混浴なので水着着用で入浴する。そばに滝があり、気持ちがいい。
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末吉温泉 みはらしの湯
スエヨシオンセン ミハラシノユ
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裏見ヶ滝温泉
ウラミガダキオンセン
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春が旬のトビウオ、生でもくさやでも
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写真はくさや加工で知られる藍ヶ江水産の工場内 にある『地魚干物食堂』のトビウオの干物とランチの「地魚の漬け丼」。毎日くさや液を撹拌しているので、食べやすい。
八丈島の春の味といえば「八丈春とび」です。産卵期に合わせて伊豆諸島あたりの海域にやってくる世界最大級のトビウオ、ハマトビウオ。その中でも八丈島で水揚げされたものを、そう呼んでいます。八丈島では、新鮮なものを刺身やたたきでいただきます。ふっくらとした身と淡白な味わいは、老若男女問わず多くの人に人気。その甘みのある旬の味わいを知ってしまったら、滞在中、毎日でも食べたくなるはずです。 特に八丈島を代表する発酵食「くさや」にしたトビウオは、あっさりとして食べやすいので、くさや初挑戦の方にもおすすめですよ。
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藍ヶ江水産工場内 『地魚干物食堂』
アイガエスイサンコウジョウナイ ジザカナヒモノショクドウ
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明日葉スムージーでリフレッシュして帰途へ
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明日葉の生葉をたっぷりと使い、八丈島ジャージーヨーグルトドリンクやカシューナッツ、蜂蜜、豆乳と一緒にミキサーにかけてスムージーに。ビタミン豊富で抗酸化作用もあり、食物繊維も豊富。
温泉上がりの乾いたのどには、健康的な飲み物が飲みたい! 島の薬草で抽出するハーブティーや八丈フルーツレモンをふんだんに使ったソーダなど健康志向なメニューを提供する「癒香 大里店」で、オリジナルの「明日葉スムージー」をいただきます。 アロマとヨガのセラピストであるオーナーの玉井由木子さんが、美容と健康を意識したスムージーを開発。3月いっぱいまでは明日葉、4月からは島いちごのスムージーが味わえます。新鮮な地の素材をつかったスムージーを飲めば、温泉でゆるんだ心と体がしゃっきりと元気に再生しそうです。
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12月中旬から3月上旬の八丈フルーツレモン収穫の時期には、レモンをたっぷり使ったソーダも。
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「癒香 大里店」は、大里地区の玉石垣の集落にあり、窓から集落の風景が見える。時間があれば、温めた玉石を使ったセラピーもおすすめ。
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癒香 大里店
ユコウ オオサトテン
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フリージア満開の季節に、圧巻の風景を体感しよう
春の八丈島といえば、毎年恒例のフリージア祭り。3月下旬には空港そばの八形山に植栽された35万株ものフリージアが咲き誇り、カラフルに島を彩ります。 2020年のフリージア祭りの日程は、3月20日(金)から4月5日(日)まで。八形山フリージア畑がメイン会場です。 会場では、フリージアの摘み取り体験のほか黄八丈の着付け体験、明日葉の八つ橋が食べられる野点体験などが開催され、記事でご紹介した内容と合わせて気軽に八丈島の文化を楽しめます。八丈富士を望むフリージア畑の見事な色彩の中に立ち、ポーズをとったなら、とても素敵な記念写真になりそうですね。花畑では、甘い花の香りに包まれる五感の体験も。 ひと足早い春の訪れる八丈島へ旅立つならば、東京からは空路で50分ほど。渋滞なしの移動です。春の週末は、ゆったり構えてのんびりと八丈島で過ごしてみませんか?
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今から100年前にフリージア栽培を始めた八丈島。島とフリージアの歴史は長い。
第54回 フリージアまつりの詳細はこちらから→
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もりことり 写真:tsukao
TAMASHIMA.tokyo
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山頂から望む真っ赤な夕焼け。クジラやイルカたちが泳ぐ大海原。100年以上の歴史を持つ老舗酒造に、話題のアクティビティも。一度知れば、きっと驚く。 「東京に、こんなすごい場所があったんだ」と。このホームページでは東京の多摩と島の魅力を様々なテーマで紹介しています。
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