地域の魅力を発信する、新しいカタチの器店を目指して。三重・菰野町「かもしか道具店」
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地域の魅力を発信する、新しいカタチの器店を目指して。三重・菰野町「かもしか道具店」

300年以上の歴史があると伝えられる三重県・四日市の伝統産業、萬古焼。時代と共にさまざまな器を作り、発展してきた焼き物です。その歴史と技を次世代へとつなげたいと、新しいスタイルで器づくりをし、人気を集めている萬古焼の窯元があります。今回はその窯元の商品が並ぶ実店舗を訪ねました。 お店があるのは、目の前に田んぼが広がり、鈴鹿山脈の山並みを望むことができるのどかな土地。器が生まれた背景や、どんな場所で生まれているのかを知ってもらいたい、そんな思いを込め、この土地でお店を開いています。

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実は身近なところにたくさんある、萬古焼

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昔懐かしい、萬古焼の蚊やり豚

萬古焼と言われてもすぐにどんな器かイメージできる人は少ないかもしれません。しかし、白い模様がついた灰色の土鍋や、蚊取り線香を入れる豚の形をした陶器を見たことがある人は多いはず。国内で生産される土鍋の約8割が四日市や菰野町の窯元で作られているといわれています。 そんな萬古焼は江戸時代からの歴史を持っていますが、土鍋で発展したのは戦後。ガス火にかけても割れにくい土を開発したことで、土鍋の一大産地として発展しました。 「萬古焼の土鍋は四日市の窯元が海外の鉱石を混ぜ合わせてが独自に開発したもの。それにより土鍋の産地として発展していきました。さまざまなノウハウがあるので、今でも全国から土鍋のオーダーが入りますが、産地としてブランド化されておらず、どこで作られているのか知られていないのが現状です」と語るのは今回紹介する「かもしか道具店」を立ち上げた、「山口陶器」の代表・山口さんです。

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10年ほど前に「山口陶器」の2代目社長となった山口さん。萬古焼がどんなところで作られているか、どんな陶器なのかを知ってもらいたい、自分のお店だけでなく地元産業に循環できるブランドを作りたい、と一念発起し作り上げたのが「かもしか道具店」でした。 ブランド名の「かもしか」は地元菰野町の町獣。鈴鹿山脈に連なる7つの山とかもしかをモチーフにしたロゴマークを旗印に、道具としての機能美を追求したさまざまな暮らしの器を生み出します。今では「中川政七商店」など、数多くのセレクトショップで取り扱われるようになりました。

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最高に美味しいご飯を追求した「ごはんの鍋」

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「ごはんの鍋」(2800円~)

「かもしか道具店」を立ち上げるにあたって山口さんが一番最初に開発したのが、萬古焼の特性を生かした耐熱性の高い土で作る「ごはんの鍋」。日本人の食の原点である美味しいご飯を追求しようと試みました。 「鍋の圧力を高めるため蓋に蒸気穴を開けず、吹きこぼれにくくなるよう縁を高くするなど、ご飯を炊くことに特化したデザインに仕上げました。さまざまな大きさの鍋を試作して、炊く量で味が変わるのかも実験して試食を重ねています」という力作。2合炊くときは、2合用のサイズの鍋で炊くと一番美味しい、という結論になり、炊く量に合わせて3つのサイズを展開しています。

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陶器の力を最大限に生かした、美味しく便利な道具たち

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「陶の飯ひつ」(2000円~)

この「ごはんの鍋」からスタートし、山口さんは吸水性や保温性を持つ萬古焼の特徴を生かしたさまざまな道具を開発していきます。「ごはんの鍋」で炊いたご飯を美味しく保存できるようにと、冷蔵庫で保存でき電子レンジにも対応した「陶のおひつ」を作ったり、ご飯茶わんや箸置きなど、ご飯にまつわる道具も萬古焼で作り上げました。 さらに最近人気を集めているという商品が、溝のないすり鉢。すりこぎが当たる部分をザラザラとした粗い土で仕上げ、すりこぎも陶器に当たる部分を丸くして、摺りやすくしました。すり鉢は溝に胡麻が詰まって洗うのが大変…そんなストレスを解決してくれる、ありそうでなかった品となっています。この中で材料を和えて、そのまま食卓に置いても様になるサイズとデザインも魅力です。

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「すりバチ」(3400円)と「すりコギ」(1600円)

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萬古焼を守りながら独自の製法を追求する工房

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そんな「かもしか道具店」の商品が作られる製造現場はショップから車で5分ほどの場所にあります。萬古焼の土はきめ細かく、白っぽいのが特徴。型を使って成形していくのも特徴で、先代の頃からの道具を今も使い続けています。工房内には何種類もの型がずらりと積み上げられていました。型を使っているといっても、その工程のほとんどは手作業。見ていると、表面を滑らかに整えたり、取っ手を付けたりと、職人による技術が求められる仕事ばかりです。

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「かもしか道具店」には、土鍋のような直火調理ができる器のほか、耐熱性の高い器、磁器のように固く薄い器など、さまざまな種類の器があり、すべて自社で製造しているとか。それぞれ土の種類から焼き方まで、ひとつひとつ異なるといいます。 「先代が植木鉢や食器など、いろいろなものを作っていたので、そのノウハウがあったことも理由のひとつです。今では、釉薬も自社で調合していています」という山口さん。小規模な工房だからこそできることがあると、オリジナリティを出すことに力を注いでいます。

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地元の魅力を発信するコミュニティスポットに

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菰野町の名所や名物が描かれた「菰野町手ぬぐい」(1600円)

お店の店内には、自社ブランドである「かもしか道具店」の商品だけでなく、地元窯元にオーダーして製造した器や昔ながらの器など、萬古焼のさまざまな商品が並んでいます。 「自分たちの会社だけをPRしていたら、萬古焼の発展にはつながらない。地元の窯元や作り手を巻き込んで一緒に発展していかないと意味がない」といい、個性や技術に注目して近隣の窯元にも発注するなど、窯元全体が盛り上がるようにとさまざまな商品を企画・デザインしています。 さらに地元菰野町の名物をモチーフにした手ぬぐいやトートバッグなど、器以外にもさまざまな商品を作り上げ、地域の魅力をさまざまなプロダクトを通して発信しています。

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地元の窯元にオーダーし、レトロな色合いとデザインを復刻させたシリーズ「COZAN」

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まずはお店に来て、触れて、体験してほしい

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萬古焼体験で作ることができる器のサンプル

お店の一角には、ワークショップスペースもあり、萬古焼の制作体験や地元の作り手とコラボした体験イベントなどを開催しています。好きな型を選んで、スタンプを押したり、釉薬の色を選んだり…と、簡易ではありますが、萬古焼作りを体験することができますよ。 ほかにも器の魅力を直接お客様に伝えるために、さまざまなワークショップが行われています。 地元の伝統産業を後世に伝えたい、その思いが形となった「かもしか道具店」の商品の数々。ひとつの器を通して萬古焼に興味を持ってもらい、ひいてはその陶器が作られている菰野町にも関心を持ってもらえたら…生まれ育った土地への思いが「かもしか道具店」にはぎっしりと詰まっていました。

かもしか道具店

カモシカドウグテン

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。

Writer

田口真由美

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好物は古いものと発酵したもの。名古屋を拠点に町や人、美味しいものを訪ねる日々を過ごしています。

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