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2020.08.25
美しくて愛らしい和菓子がたくさん!京都・西陣の地で茶人から観光客まで愛され続ける老舗和菓子店「千本玉壽軒」
季節を映したものから地域にちなんだものまで、彩り豊かな和菓子を生み出す「千本玉壽軒」。職人のまちであり、京都の人たちにとっては暮らしのまちでもある西陣で、多くの人を魅了するその秘密を求めてお店を訪ねてみました。
元は機織のお店がはじまり
千本今出川の北西に位置する
千本通と今出川通が交差する「千本今出川」のバス停からすぐに位置する「千本玉壽軒」。創業は昭和13年の老舗和菓子店ですが、元々は江戸後期に西陣で綴織を織る「井筒屋」というお店の一角で一文菓子を販売していたことに始まります。このお菓子が好評であったことから「玉壽軒」という和菓子屋が誕生し、後に「本家玉壽軒」に。この「本家玉壽軒」で修行した初代が独立し、開いたのが「千本玉壽軒」です。
店内に入ると使い込まれた大きいカウンターが迎えてくれる
ちなみに、「千本玉壽軒」が建つのは、元々「玉壽軒」があった発祥の地にあたる場所なのだとか。歴史を感じさせる建物は、京都らしい趣きもありながら、どこかレトロで親しみやすい雰囲気も漂います。
初代が生み出した「西陣」にちなんだお菓子
西陣風味は5個入で1080円
代表銘菓は西陣織の反物をイメージした「西陣風味」。羽二重餅で、黒胡麻が入ったこしあんを巻き込んでいます。絹の生地のならではのなめらかな手触りをイメージした、柔らかな口当たりが特徴。初代が生み出した和菓子で、着物を連想させるたとう紙に包まれた華やかなパッケージも当時から受け継がれるものなのだとか。
職人さんの手によってひとつひとつおめかしを
やわらかく仕上げた和菓子をたとう紙でくるんで、観世よりできゅっと結ぶところまですべて職人さんが手作業で行っているそう。「西陣風味」は手に取ると、そういった職人さんの姿を思い起こさせる愛くるしい和菓子です。
眺めているだけで笑顔になれる美しい生菓子
羊羹など日持ちのするお菓子も充実
生菓子の種類も豊富で、常時5~10種ほどが並びます。お茶席に合うものから、自分へのちょっとしたごほうびになるような愛らしいものまで、そのバリエーションは非常に豊か。「お菓子を見て味わって、ちょっと気分が明るくなったり、お菓子の存在がその場の話題となり、笑顔のきっかけになればうれしい」と三代目の元島真弥さん。
透明と青色の葛を二重に重ねた手の込んだ「天の川」453円
こちらの天の川は、毎年7月に行われる「貴船の水まつり」がきっかけで誕生した和菓子。こしあんを爽やかな色合いの葛で包み、上から金粉で星を表現した、涼やかなお菓子です。旧暦の7月に当たる8月上旬まで楽しめるこの時期ならではのひと品で、お茶席でも人気が高いお菓子なのだとか。
「京のしおり」は15個(831円)から55個入(2862円)まで、用途に合わせて選べる
また、季節によってモチーフが異なる干菓子がぎゅっと詰まった「京のしおり」も人気です。夏は水面や青葉だったお干菓子が、秋になると松茸や稲穂に変わるなど、季節を変えて何度でも手にしたくなります。
お菓子の種類が書かれた昔ながらの看板
大覚寺や金閣寺、仁和寺など名だたる寺院の御用達も務め、なかでも毎年中秋の名月の頃に行われる大覚寺での「観月の夕べ」のお茶席では、月をテーマにした和菓子を提供。少し暗い夜のお茶席でも和菓子の美しさを感じていただけるよう、場面にあわせて和菓子に一工夫加えているのだとか。 生菓子ひとつからでも気軽に購入できるので、西陣の路地巡りの途中にぜひ立ち寄ってみてください。
千本玉壽軒
センボンタマジュケン
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田中 麗 写真:小川 康貴
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