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2020.09.19
温もりを感じる作家ものが見つかる、松本・中町通りをおさんぽ
かつて城下町として繁栄した長野県松本市。古くからものづくり文化が根づくこの街には、地元作家が手がける生活道具や雑貨を扱うショップが点在しています。なかでも蔵造りの建物が並ぶ中町通りは、お土産店や雑貨店が軒を連ねる人気のスポット。歴史を感じる街並みを歩きながら、雑貨めぐりを楽しんでみませんか。
なまこ壁の土蔵が並ぶレトロな中町通り
なまこ壁の蔵が並ぶ通りから美しい山々が望める
市内中心部にある中町通りは、白と黒のなまこ壁の蔵が並ぶ街並みが印象的です。 江戸末期や明治時代に一帯が大火に見舞われ、その後、火事から守るために建てられたのが、漆喰のなまこ壁の土蔵。中町通りにはその歴史ある建物が今も多く残っており、古き松本の風情を感じられる通りとして親しまれています。 通り沿いには、レトロな蔵を改装したギャラリーやショップがいくつも並んでいます。その多くが陶器や木工クラフトなど、地元作家の作品を扱っていて、松本ならではのおみやげを探すのにぴったりなところです。
陶器や木製カトラリーなど、地元作家のクラフトを集めた「GRAIN NOTE」
ギャラリーは築70年の建物を改装
中町通りの中ほどにあるGRAIN NOTEは、木工クラフトをメインに扱う老舗のギャラリーです。地元でものづくりをする人たちの作品を展示販売する場所を作ろうと、1984年にオープンしました。 店内には、松本を中心に信州を拠点とする陶芸家や木工作家、ガラス作家などの作品をディスプレイ。小皿や木さじなど、普段使いができそうな手ごろな価格の生活道具が多いのも魅力です。
りんごをモチーフにした小皿(左上)など、信州ならではのアイテムもかわいい。使い込むほどに味わいを増す天然木のカトラリー(左下)は値段も手ごろ
1階は陶器や木製小物、ガラスなどの作品が並び、2階にはオーナーである3組の木工作家によるイスやテーブルなどの家具が展示されています。 天然木で作られたコーヒーカップやカトラリーなどは、手に持ってみると、木目の美しさや手ざわりのよさを実感。作家さんが丹精込めて仕上げた木の道具は、自分の生活にも取り入れたくなりますね。
GRAIN NOTE
グレインノート
若手アーティストの雑貨を中心に集めた「coto.coto」
白壁にカラフルな色合いの作品が映える
GRAIN NOTEの斜め前に立つcoto.cotoは、2011年になまこ壁の蔵を改装してオープンした小さなギャラリーです。 店内には、オーナーの佐藤さんが自ら全国のクラフトフェアなどに足を運んで作り手と会い、作品に触れて集めたものがところ狭しと並んでいます。
右下はスミレ研究所の屋号で活動する松本在住の陶芸家・金井三和さんの作品。陶器のブローチは各1600円
若手アーティストのものを中心に揃えているという作品の数々は、陶磁器や木工小物、アクセサリーに、ファブリック雑貨や絵画など、そのジャンルは多岐にわたっています。 どの作品にも共通しているのは、アーティスティックな雰囲気の中に、温もりや優しさが感じられるという点。「シンプルでちょっとモダンなものが好き」という佐藤さんのセンスが光るセレクトに、定期的に店を訪れるリピーターも少なくありません。
coto.coto
コトコト
工場跡をリノベした「NAKAMACHI CAFÉ」はランチにもおすすめ
1階奥のソファ席が居心地がいいと人気
雑貨めぐりの合間の休憩に立ち寄りたいのが、NAKAMACHI CAFÉ。外観は中町通りの景観に合わせた蔵造りですが、中に入ると、インダストリアルでスタイリッシュな空間が広がっています。 鉄骨がむき出しの吹き抜けの天井や、あめ色のつやを放つフローリング、アイアンと木を組み合わせたイスやユーズドのソファなど、無骨でシンプルなインテリアが印象的な店内は、まるで友人宅のリビングにいるような居心地のよさで、のんびりとくつろげます。
看板メニューはふわふわのスフレパンケーキ
ベリーのパンケーキは1000円(左上)、ベーコンとエッグのパンケーキは1200円(右下)
お店のイチオシは、看板メニューのスフレパンケーキ。オープン以来、地元のリピーターを引き付けてやまない人気の秘密は、極上のふわふわ食感です。 注文を受けてから作る生地は、長野県産の小麦粉をベースに4種類の素材を独自の配合でブレンド。かなりの厚みがありながらも、ナイフを入れるとシュワっと音を立て、舌の上ですぐにとろけてしまいます。 パンケーキはチョコレートやベリーなどのスイーツ系のほか、ソーセージと目玉焼きをのせた食事系もあり、ランチにもおすすめ。厳選されたスペシャルティコーヒーとともに、驚きの食感を体験してみてください。
NAKAMACHI CAFÉ
ナカマチカフェ
「手仕事商會すぐり」では、キュートな松本みやげが見つかります
もとは漬け物屋だったという蔵を改装
スフレパンケーキでお腹を満たしたら、向かい側の細い路地を入ったところにある雑貨店、手仕事商會すぐりへ行きましょう。 築140年の蔵を改装したという重厚感のある店内には、木工やガラス、布小物など、信州にゆかりのある作家のすぐれた手しごとの品々が並んでいます。 屋根裏部屋のような2階は小さなギャラリーになっていて、工芸作家の個展や世界各地の手仕事を紹介する企画展などが毎月開催されています。
モダンにアレンジした伝統の松本手まりは3080円〜(左)、黒豆きな粉飴680円(右上)、マスキングテープ540円(右下)
こちらのお店では、デザイナーと一緒に立ち上げたブランド「旅スル紙」のオリジナルアイテムが評判です。松本の街並みや北アルプスの自然を描いたマスキングテープやポストカードなども人気があり、登山帰りの山女子もわざわざ買いに来るのだとか。 また、縁起のいい“松本だるま”がモチーフの小箱に入ったご当地菓子、黒豆きな粉飴も密かな人気。安曇野特産の黒豆のきな粉を黒砂糖で包み込んだ飴菓子で、香ばしい味わいとサクサクした食感がクセになりそうな逸品です。
手仕事商會すぐり
テシゴトショウカイスグリ
雑貨とカフェをめぐる中町通りさんぽ、いかがでしたか? 松本市内には、ほかにも地元作家のクラフトを扱うすてきなショップやギャラリーがいっぱい。ゆっくりと見てまわれば、一生大切にしたくなる一点ものの道具や雑貨に出会えるかもしれません。
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小野澤啓子 写真:清水ちえみ
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