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2020.10.30
倉敷生まれの椅子敷き「倉敷ノッティング」に魅せられて
岡山県を代表する観光地、倉敷美観地区。美しい白壁の町並みが続く倉敷川沿いに、「倉敷ノッティング」と呼ばれる椅子敷きを織る小さな学校「倉敷本染手織研究所」があります。その魅力をのぞきに、倉敷を訪ねてみました。
ていねいな手仕事で作られる「倉敷ノッティング」の魅力とは

今の暮らしにもしっくりと溶け込む洗練されたデザイン
木綿の経糸(たていと)に、160本もの羊毛を束にした緯糸(よこいと)を結び付けて織る「倉敷ノッティング」は、英語の「結ぶ=knot」を語源に持つ椅子敷きのこと。今から約80年前に生まれた手仕事のひとつで、この技術を学ぶ女性たちによって、今も一枚一枚ていねいに作られています。

昔から変わらぬ製法で作られる
倉敷ノッティングの魅力は、何といっても座り心地の良さ。毛足を長く残すため、クッション性はしっかり。何十年たってもくたびれない、丈夫な造りもポイントです。もう一つの魅力が美しさ。洗練された幾何学模様が特徴で、その多くが当時に編み出されたデザインというから驚きです。
倉敷ノッティングが生まれる日本一小さな学校「倉敷本染手織研究所」

町家を校舎として開放。内部の見学は不可
倉敷ノッティングが生まれる場所は、1953(昭和28)年に開設された「倉敷本染手織研究所」です。創設者は、倉敷ノッティングの考案者であり、民藝運動にも深くかかわった外村吉之介。彼の自宅である伝統的な倉敷の町家を校舎として開放し、倉敷ノッティングをはじめとする染織の技術と民藝の精神を、1年かけて女性たちに教えていきます。

(左上・左下)椅子やカゴなど手仕事の逸品に囲まれた日本家屋を学校として開放 (右上)昼食の用意は研究生の持ち回り制。使う器もすべて民藝品 (右下)倉敷美観地区に建つ
現在は、外村の四男・石上信房さんとともに研究所を引き継ぐ梨影子さんが、その指導にあたり、67期目となる2020年には全国から6人が入学。日本各地の民藝品に彩られた空間で、一年間の共同生活を送りながら、「ていねいなものづくり」を体に染み込ませていくのです。
「手染め」「手織り」を大切に、一目ずつ結び織ってゆく

160本の糸をひとつの束にし、一目ずつ結んてゆく
倉敷ノッティングは、ここで学ぶ研究生たちが最初に作る織物です。何色にも染め分けた糸を準備したら、いよいよ手織りに取り掛かります。1目ずつ絡めて結び、毛足をハサミで切りそろえる作業を何度も繰り返し、ようやく1枚が完成するといいます。「手染め」「手織り」を大切に、ていねいな手仕事で作られる倉敷ノッティング。在庫があれば、研究所で直接購入(要問い合わせ)もできますよ。
倉敷本染手織研究所
クラシキホンゾメテオリケンキュウジョ
日本で二番目に誕生した「倉敷民藝館」に立ち寄り

国内外のカゴやザルを紹介する展示室
倉敷を訪れたら、研究所のすぐ近くに建つ「倉敷民藝館」にもぜひ足を運んでみてください。ここは外村が初代館長を務めた、日本で二番目に誕生した民藝館です。江戸時代後期の米倉を活用した館内には、国内外の陶磁器やガラスなどが約1万5000点を収蔵し、うち約600点を展示。なかでも、編み組細工が好きだった外村が集めたかごのコレクションは、全国の民藝館のなかでも屈指の所蔵点数を誇るとか。

倉敷手まりは、外村の指導で作り手が育ったもの
併設のミュージアムショップには、倉敷手まりや備中和紙など倉敷や近県の手仕事の逸品を販売。民藝の魅力を発信する場所にも、ぜひ足を運んでみてくださいね。
倉敷民藝館
クラシキミンゲイカン
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