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2020.12.15
夕闇に浮かぶ幻想的な温泉街にうっとり。山形「銀山温泉」 で非日常の時間を過ごす
山形県の北東部に位置する銀山温泉。清流・銀山川が流れる谷あいに木造旅館が軒を寄せ合う温泉街が広がります。しんしんと降る雪にガス灯がきらめく街を歩けば、そこはまるでファンタジーの世界。建築美が際立つ宿やイタリアンを味わえるオーベルジュなど、話題の宿に宿泊して、温泉街の幻想的なムードにひたってみませんか。 メイン画像:尾花沢市
大正レトロな木造旅館が並ぶ温泉街
現代の建築法では建てられない貴重な木造の高層建築
JR大石田駅からバスに乗って約40分。長い下り坂の先に広がるのが、銀山温泉の温泉街です。泳ぐ小魚まではっきり見えるほど澄んだ清流に石造りや木製の橋がいくつもかかり、その両岸に旅館が建っています。 ガス灯が並び、石畳が続く温泉街は、どこか懐かしさを覚えるレトロな雰囲気。旅館は3、4層と木造建築にもかかわらず背が高く、銀山温泉ならではの独特の景観をつくっています。
(左上)左官職人による鮮やかな古山閣のこて絵(右上)格子から光がさす共同浴場しろがね湯(左下)石畳に埋め込まれたタイル絵は雪の結晶柄(右下)無料の足湯に浸かりながら温泉街を眺めて
“銀山”という名前のとおり、銀山温泉はもともと銀鉱によって栄えた土地。廃山後、湯治場として利用され、徐々に温泉旅館が立ち並びます。1913(大正2)年の大洪水を機に、各旅館はモダンな建物へと建て直されるように。谷底にあり大規模な増改築ができなかったため、銀山温泉は今なお大正時代の面影を色濃く残しているのです。
竹、和紙、ステンドグラスが織り成す建築美「藤屋」
建て替えではなく改修することで木造3階建の構造を保っている
温泉街の中ほどに「藤屋」はあります。藤屋は、隈研吾氏が改修を手がけた宿。白木の格子が縦に並ぶ印象的な外観は、温泉街でもひときわ目を引きます。 水盤に浮かぶアプローチを抜けてロビーに足を踏み入れると、そこはまるで和のアートミュージアム。階段を透かすように、吹き抜けの天井まで4mm 幅の細竹を並べた簾虫籠(すむしこ)というスクリーンが続きます。 入り口全面に施されたステンドグラスから差し込む光を、細竹のスクリーンがやわらかく受け止め、間接照明に照らされているようなやさしげな空間がつくり出されています。
(左上)竹のスクリーンから光がさすロビー(右上)中世の工法で作られたステンドグラス(左下)貸し切り風呂は24時間利用可能(右下)和モダンな客室すべて銀山川に面している
館内を歩けば、隈氏の感性と伝統の技が織り成す完成された意匠がそこかしこに。ゆがみのある手吹きのステンドグラス、手漉きの越前和紙をはりめぐらした壁、細竹の節を波模様に並べた壁のあしらいなど見飽きることがありません。 藤屋での食事はすべて部屋食。銀山温泉の街並みを眺めながら、地の素材を活かした会席料理をゆったりと味わえます。竹や石を使ったそれぞれ趣の異なる5つのお風呂は、全て貸し切りなので、心からリラックスしてプライベートな時間を過ごしてくださいね。
藤屋
ふじや
イタリアンをいただくオーベルジュ「クラノバ」
(左)ディナーコースのメインは「尾花沢牛のアロスト トリュフの香り」(右上)イタリア野菜のサラダ「河北イタリア野菜とプロシュート フォンデュータソース」(右下)ワインとともに味わって
老舗旅館「古山閣」の別館として2017年に誕生した「クラノバ」。イタリアンのオーベルジュという、銀山温泉では異色の存在です。通りに面した明るいレストランフロアで、都心のイタリアンレストランで15年間修行したご主人が作るコース料理をいただけます。 クラノバのイタリアンには、おもに地元山形県の素材が使われます。ローストした尾花沢牛にトリュフを添えたステーキ、濃厚な味わいの河北町産イタリア野菜を使ったサラダなど、地の恵みを活かした季節のメニューが供されます。食事と併せていただきたいワインには、イタリアワインはもちろん、「高畠ワイナリー」や「タケダワイナリー」など山形県を代表するワイナリーのワインがラインナップ。おすすめのワインと山形イタリアンのマリアージュを楽しんでください。
(左上)赤い漆喰のクラノバの客室(右上)古山閣の貸し切り露天風呂(左下)4卓が並ぶ明るいレストランフロア(右下)古山閣は青い漆喰の壁が美しい
クラノバの客室は全6室。ベッドが設えられた洋室は、赤や青の漆喰がとても鮮やかです。実はこの漆喰のあしらいは、通路でつながったお隣、古山閣の青い漆喰の壁をオマージュしたもの。クラノバでは古山閣のお風呂を利用するので、入浴の際には、古山閣の昭和初期を思わせるノスタルジックなたたずまいと、クラノバのモダンな造りを比べてみるのもおもしろいですよ。
クラノバ
温泉街のおみやげに山形県産のお酒はいかが
(左)オリジナルペールエールは998円(右上)立ち飲みスペースでは試飲(有料300円)ができる(右下)「銀山温泉地酒2本セット」1400円
おみやげには、酒店「八木橋商店」の銀山温泉ラベルのお酒をチョイスしてみてはいかがでしょうか。 おすすめは、米沢市のブリュワリーで醸造したペールエール。銀山温泉を代表する宿・能登屋のシルエットが描かれたラベルがモダンでおしゃれです。ほかに銀山温泉のラベルの日本酒もあるので、相手の好みに合わせて選んでくださいね。
八木橋商店
やぎはししょうてん
ノスタルジックな雰囲気が魅力の銀山温泉。日帰りはもちろん、ぜひ宿泊で楽しんでみてください。宿に明かりが灯り、ガス灯がきらめく幻想的な街並みを楽しめるのは宿泊者だけの特権です。浴衣姿でそぞろ歩きしながら、非日常の世界観にじっくりひたってみてくださいね。
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星マチコ 写真:板元義和
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