牛窓で捕れた活魚。ひと手間加え料理にするのがaccaマジック。[acca/岡山県瀬戸内市]by ONESTORY
heart

52

牛窓で捕れた活魚。ひと手間加え料理にするのがaccaマジック。[acca/岡山県瀬戸内市]by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から岡山県瀬戸内市の「acca」を紹介します。

「ONESTORY」公式サイトはコチラ

arrow
image

かつて東京・広尾に数ヵ月先まで予約で埋まる超人気のリストランテがありました。イタリア人が食べて、「これは紛れもなくイタリアの味」と絶賛した店の名は『acca』。そしてオーナーシェフの林 冬青(はやし とうせい)氏といえば、ミスター・ストイックと言われるほど、料理や食材と真摯に向き合い、その研ぎ澄まされた感性で食通たちの賛美を浴びていたのです。 それが人気絶頂の最中、突如2013年に閉店し、林氏は行方知れずに。あのどこまでも澄んだ味わいのイタリアンには、二度と会えないのかと失意のファンも多かったところ、しばらく経った2014年に、久方ぶりに『acca』林氏の名前が聞こえてきたのです。

image

穏やかな牛窓の海。この美しい漁港の景色こそが移転のきっかけに

そう、瀬戸内海に面した牛窓という漁師町で店を再開した、と。その後も、林氏が取材を受けるメディアは限られ、『acca』の存在自体は確認できるものの、林氏の料理がどうなったのか、更にはなぜ牛窓に移転したのかなど、謎も多かったのです。 それが今回、『ONESTORY』ではウェブメディアとして初の取材許可を頂き、林氏に密着。2017年7月現在の氏の料理、そして林氏を取り巻く牛窓という町の魅力を取材できました。そこには林氏らしい、林氏でしか成し得ない瀬戸内イタリアンがあり、イタリア人が食べてもイタリア料理だと太鼓判を押す、変わらない『acca』の料理が並んでいたのです。

leaf

土地と向き合い、土地を理解する等身大の料理を求めて。

image

その日に揚がった活けの小魚をアーリオ・オーリオで提供。運ばれてきた瞬間に海の香りが広がる

2017年7月、林 冬青(はやし とうせい)氏の料理は実に「自然」という言葉がしっくりくるイタリアンになっていました。そこには毎朝、訪れる『高祖鮮魚店』で仕入れる牛窓の魚を、ただ純粋に美味しくしたいという想いがひしひしと伝わってくるのです。 華美な盛りつけもなければ、驚くような演出もなし。 「広尾での経験があり、その際に感じたギャップもひとつの転機です」と林氏。

image

お茶屋や銀行跡、神社など、今なお古い町並みの残る牛窓の町

超人気リストランテであった広尾時代、現地の味を忘れないためにも毎年、休みを捻出し訪れていたイタリア。そこで自分が食べたいと欲した料理は、シンプルかつ素材をダイレクトに感じさせる郷土色豊かな料理だったのです。いわば広尾時代とは真逆。 「そのギャップを感じたからこそ、今後の舵取りをどうするか、当時は悩んでいました。このままでは何かが違うと感じていたのかもしれません。単純に一歩を踏み出すには勇気がいりましたが、母の介護をしなければいけなくなり、東京で店を続けつつ介護をするのは不可能だったので、思い切ったという感じですね」と林氏は語ります。

image

『acca』があるのは『牛窓オリーブ園』の敷地内の一角。オリーブ園の頂上は見晴台になっており瀬戸内の絶景が広がる

とはいうもののリサーチにリサーチを重ね、地方への移転の構想は約2年。日本地図が頭の中を駆け巡り、どこであれば自分の理想とする料理ができるかをシミュレーションしていたと言います。そうしてたどりついたのが瀬戸内海。そして、牛窓での今があると林氏は言います。そう、広尾の店は突如閉店したと思われがちですが、実は長く温めていた構想を現実のものにするため用意周到に準備し、林氏の頭の中で理想を最適化していたのです。 その土地でしかできない、料理を作る。それは郷土色豊かなイタリア料理の精神そのもの。 「今は自分が使いたい食材で、作りたいものだけを作っている」と林氏は笑います。それが氏の料理と対峙した際の「自然」という印象に集約されているのかもしれません。そこには無理もなければ、無駄もない、牛窓という土地に根ざした料理が待っていたのですから。

leaf

活けの雑魚を使える幸せ。それこそを牛窓で表現

image

「高価でなくていい、最良の素材があれば、料理は勝手に美味しくなってくれる」と林氏

「牛窓に来てから、極力調理するのをやめました。“勝手に美味しくなる料理”が今の僕の理想なんです」と林氏。 確かにこの日最初に登場した『牛窓の雑魚で作るアーリオ・オーリオ』は、朝買った小フグ、小アジ、シャコ、ガラエビ、メダカガレイなど多くの雑魚に、ニンニクと鷹の爪で香りを引き出したオリーブオイルで火を入れただけ。しかし、これが味わうと絶品。次から次へ旨味が洪水のように押し寄せ、異なる食感で楽しませてくれるのです。この旨味の元こそが、牛窓だから可能にさせる雑魚と食文化だと林氏は教えてくれます。 「今日使ったようなミネラル豊富な小魚を活けで仕入れられる場所は、本当に少ない。まさにイタリアの海にも似た環境が、瀬戸内海と伊勢などの一部なのだと思います。更にそれを的確に処理してくれる鮮魚店が牛窓にはある。『高祖鮮魚店』の3代目・高祖 豊さんはどこでも通用するほどの魚の処理技術を持っていらっしゃると思います。本当に素晴らしいんです。豊さんに出会わなければ今の自分の料理はないかもしれません」と林氏。

image

雑魚のアーリオ・オーリオをオーブンへ入れる。ここまで調理という調理は施していない

更には隠し味に、アミの塩辛。そう、岡山を代表する保存食で、どこの家庭でも一度は食べたことのあるアミエビの塩辛を忍ばせているのです。 一点の曇りもない抜群の素材と、岡山が育んだ食文化、この2つを理解し、長所を引き出すことで唯一無二、牛窓でしか成し得ないイタリアンが生まれているのです。それらがあればひと手間で、料理はぐんと旨味を増す。まさに林氏の言う「勝手に美味しくなる料理」が、完成するというわけです。

leaf

魚を生かすイタリアンに。シェフの想いがひしひしと

image

歯応えあって、味が濃い真ゲタを使った『ゲタのアラ ムニャイア』

更にはこの日、撮影に登場した残りの料理も『蟹とズッキーニのリゾット』に『ゲタ(舌平目)のアラ ムニャイア(ムニエル)』、『オコゼのアクアパッツァ』と全てが魚料理。林氏がこの場所で何を伝えたいかは、取材班にも手に取るように伝わってきました。 林氏は、「ウチへは岡山の人でさえも、牛窓で捕れた魚介を食べに来るんです。普段自分たちが普通に食べている魚がどう変わるのかを楽しみにしているそうなんです」と語ります。

image

ズッキーニなど夏野菜のミネラルを引き出したいとオリーブオイルをベースにした『蟹とズッキーニのリゾット』

聞けば、現在のお客さんの大半は県内の人。東京からは1割ほどで、その他、近隣の広島や神戸などから訪れる人がちらほら。東京時代からのファンが多いのかと思いきや、圧倒的多数が岡山県人なのです。 「店を始めた頃は、ひとりで店を切り盛りし、1日1組しか予約が受けられず、更には訪れた人がリピーターとして、また予約をしてくれました」と林氏。 メディアにもほとんど出ない状況も重なり、オープン後まもなく、店は自然と地元・岡山の人々で埋まり出したといいます。 「地元のお客様に何を出そうか。岡山にはない食材を楽しんでもらおうか。悩んだ時期もあったのですが、なじみのある魚を食べたいと言ってくれる人がいらっしゃって、頭の中が晴れたような気がします」と林氏は語ります。

image

熱せられた牛窓の雑魚が、それぞれの旨味を重ね合い、極上のひと皿へ

であるから、撮影した料理も魚一色。牛窓だからこその思いの詰まったもてなしこそが、この地で表現する『acca』の料理。その怒涛の構成に、訪れるゲストは皆心ゆくまで、牛窓のイタリアンにどっぷりと浸かれるのです。

「acca」の記事はこちら

arrow

acca

アッカ

pin-icon

岡山県 瀬戸内市牛窓町牛窓496牛窓国際交流ヴィラ

0

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。

sunshine
pin岡山県
×

ごはん

の人気記事

sunshine
pin岡山県

の人気記事

sunshine

おすすめ記事

sunshine
pin岡山県

× したいことから

他の記事を探す

旅プラン日帰り旅ひとり旅ご利益めぐり絶景旅街さんぽいやされる避暑地花さんぽニュースポット雨の日ランチ
sunshine

あわせて読みたい

onlinestore
onlinestore
magnifier
アプリでもっと便利に
おすすめスポット90,000件を掲載
あたらしい情報を毎日お届け
季節の景色や名所、おいしいスイーツやグルメ情報などこれからの旅、週末に行きたい素敵なスポットが見つかります♪
point
自分だけの旅行・おでかけ
情報がみつかる
map
気になるスポットを
お気に入り登録
これから行きたいスポット情報や記事投稿を
クリップしてあなただけのリストを作れます。
search
便利な検索機能で
行きたい場所が見つかる
旅行前の情報収集で使える観光エリア、
ジャンル、ハッシュタグ検索から、
今いる場所から周辺の見どころや
カフェを探せる現在地まで
役に立つ検索機能がたくさん。
passport
電子書籍が手軽に読める

ことりっぷガイドブック・マガジンの
電子書籍版の購入ができます。
旅行・お出かけ中にさくさく閲覧♪
月額500円で100冊以上が
読み放題になる「ことりっぷpassport」も。
point
旅の思い出を共有、
旅好きユーザーとつながる
photo
かんたんに
思い出の写真を投稿
旅先のとっておきの瞬間や、
お気に入りのスポットをアップすることができます
app
さぁ、あなただけの
小さな旅を
見つけましょう♪
ios_download