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2022.06.17
京都の新スポット「嵐山 祐斎亭」で、青もみじの織りなす絶景を満喫
古くは平安貴族たちのリゾート地でもあり、天皇が離宮を構えたという嵐山。その麓では大堰(おおい)川が豊かな水をたたえ、とうとうと流れています。近年、大自然にいだかれた山の中ほどにたたずむ染色作家の染色アートギャラリーが「嵐山 祐斎亭」として一般に公開され、知る人ぞ知る絶景スポットとして足を運ぶ人が絶えないといいます。その魅力が際立つ青もみじの季節に訪れてみませんか。
大堰川をさかのぼり翠の別世界へ
青もみじに覆われた祐斎亭の入り口
祐斎亭へは、嵐電の嵐山駅から大堰川沿いの遊歩道を徒歩で約10分。遊覧船が浮かぶ水辺の風景を眺めながら川上へ向かうと、右手に祐斎亭への道しるべが見えてきます。石段を上がると、ほどなく祐斎亭の門がお出迎え。
あの大文豪・川端康成が滞在した部屋も
川端康成の部屋。祐斎さんの作品が部屋を飾る
嵐山の賑やかな通りから離れ、木々に覆われひっそりとたたずむこのお屋敷。約150年の歴史があり、かつては芸舞妓さんの憧れの場として名をはせた「千鳥」という料理旅館でした。それが、染色作家・奥田祐斎さんの染色アートギャラリーとなったのが約20年前のこと。 玄関のすぐ左は、川端康成が滞在し『山の音』を執筆した部屋。嵐山の眺望も、染色アートも、机に映り込む樹々のリフレクションも楽しめる、祐斎亭の魅力がぎゅっと凝縮された空間です。
季節の彩を映す「まる窓の部屋」
まる窓だけでなく、幾何学的な襖のデザインも斬新
祐斎亭の名を知らしめたのが、この「まる窓の部屋」。嵐山を望む丸い窓が3つ、ポンポンポンと並んでいます。 ここは風景というよりも、色彩が強く感じられる場でした。春から夏にかけては淡い緑が徐々に深い色合いに、秋は紅葉の赤、冬は雪の白。丸い形をしたリフレクションもアーティスティックですね。
祐斎亭には大小2つのお茶室がある
隣のお茶室は、風景そのものをシンプルに眺める部屋。この日は、遊び心にあふれた生け花が伝統的な和建築に溶け込み、いい味を出しています。
筆遊びで自分好みのリフレクションを創る水鏡
波紋を作って遊べる水鏡。風景の変化が面白い
次のリフレクションは水鏡。パチリと1枚撮るだけで終わりがちですが、ここは筆を使って波紋を作り、ゆらめく風景を楽しむことができる参加型の撮影スポットなのです。 1人で波紋を作りカメラを構えるのは難しいので、居合わせた方と協力して撮影を。小さな波紋を数多く作る人や、水鏡いっぱいに大きな波紋を作る人など好みは様々。思いがけなく楽しい交流ができるかもしれませんよ。
お抹茶とお菓子でまったりひと休み
絶景テラスには、音を楽しむ水琴窟も
さて、このあたりでひと休みしましょう。青もみじの木漏れ日が降り注ぐ絶景テラスでは、お抹茶で一服することもできます。添えられたお菓子は、近所にある嵐山老松の「御所車」。美味しかったと、わざわざ帰りに老松さんまで買いに行かれる方もいるのだとか。
「お抹茶とお菓子」1000円
現在も進行形で変化し続ける祐斎亭
ギャラリーでは祐斎さんの多彩な作品を展示。染色体験もできる
ご当主の祐斎さんは、黄櫨染(こうろぜん)という天皇だけが着ることのできる染技法の研究家として、染色の世界では知られている大家。 「ここでは、遊んでもらっていいんですよ。要は日本の伝統と嵐山の野生の自然美を、どうしたらもっと面白くできるかやね。水鏡は日本の庭にある蹲踞(つくばい)の進化系、足をぶらぶらして座れる絶景テラスは縁側を大きくしたもの。そうやって日本の文化を好きになってもらって、染色にも興味をもってもらえたら嬉しいな」と愉快そうに語る祐斎さん。 この夏には新たな試みや、夜間のライトアップも予定しているそう。 嵐山の野趣あふれる自然美を、あらゆる角度から楽しめる祐斎亭。木漏れ日が涼やかな青もみじの季節に、ぜひ訪れてみませんか。
嵐山 祐斎亭
アラシヤマ ユウサイテイ
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戸塚 江里子 撮影:保志 俊平
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