癒しの喫茶室も♪神奈川県最古の商家が代々受け継ぐ小田原の銘菓「ういろう」
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癒しの喫茶室も♪神奈川県最古の商家が代々受け継ぐ小田原の銘菓「ういろう」

米粉で作られたもちもち食感の蒸し菓子・ういろう。名古屋の銘菓として有名ですが、実は小田原のういろうが本家本元。つるりとしたういろうと違ってもっちりとした弾力が小田原のういろうの特徴です。ういろう以外の生菓子などがいただける落ち着いた喫茶室とともに意外な歴史や興味深いエピソードもご紹介します。

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薬屋さんから始まった「ういろう」

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街中でもひときわ目立つ屋根瓦と白い壁

JR小田原駅東口から徒歩15分。国道1号線沿いに出ると、お城の天守閣のような八棟造り(やつむねづくり)の建物が目に飛び込んできます。ここが650年もの歴史を持つ商家「ういろう」です。 初代は室町時代に中国から帰化した医薬師。中国にいた頃の官職名にちなんで「外郎(ういろう)」と名乗るようになりました。亡命先の九州から京都に渡った外郎家は医薬、文化、外交に長け、家伝薬は何にでも効く万能薬として評判に。朝廷でも珍重され、帝から「透頂香(とうちんこう)」と薬名を賜るほど。当時、薬を買いに来たご贔屓さんたちをもてなすためにお菓子の「ういろう」が誕生しました。

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「ういろう」以外の和菓子もずらりと並ぶ店内

お菓子の「ういろう」の始まりは外郎家が外国使節の接待用に考案したもの。当時精製された砂糖がない時代に、薬の一種として使われていたサトウキビ(黒砂糖)と米粉を蒸して作られました。このお菓子は評判となり、家名の「ういろう」の愛称で親しまれ各地へ広まっていったのだとか。その間、作り方は各地で少しずつ変わっていったのでしょうが、小田原に移住した外郎家は600年以上変わることなく唯一無二の味を守り続け、薬も門外不出の製法で、今なお小田原の地に受け継がれています。

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もっちりとした、上品な甘さの「ういろう」

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黒砂糖・抹茶・白砂糖(各1棹756円)。元祖の味は黒砂糖

定番は黒砂糖・抹茶・白砂糖・小豆の4種。ほかに「栗ういろう」「杏仁ういろう」(各1棹972円)がありますが、杏の種子から作る手間のかかった贅沢な「杏仁ういろう」は週末だけの限定品。中国をルーツに持つ「ういろう」の杏仁味なんてぜひ食べてみたいものですね。

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落ち着いた和風喫茶で憩いのひとときを

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タイムトリップしたような喫茶室には懐かしさが漂う

店に入って右手にあるのが喫茶室。ここでいただけるのは数量限定の出来立て「特製わらび餅」や、季節の生菓子、抹茶パフェなど厳選された和菓子です。お菓子を引き立てるのは注文ごとにひとつずつ丁寧に点てられるお抹茶。上質なお菓子とお茶で、豊かな時間を過ごせます。

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喫茶室でいただけるお抹茶と季節の上生菓子(上生菓子は月替わり)

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和菓子屋「ういろう」と薬屋「ういろう」が並んだ不思議空間

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薬の「ういろう」は対面販売だけ

店内左手には「調剤薬局」の文字。同じ店のなかに和菓子の「ういろう」と薬の「ういろう」が並んでいます。 小田原だけで受け継がれてきた薬は通販などは一切なく、対面のみの販売。「ういろう」の薬は万能薬といわれるほど効能が幅広く、症状を伝えれば飲み方などもそれぞれに応じて丁寧に教えてくれます。

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日本の文化に登場する「ういろう」

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店先ののぼり旗に描かれた弥次さん喜田さん

実は日本の文化のなかにも小田原の「ういろう」が。たとえば歌舞伎十八番の「外郎売(ういろううり)」は早口の口上で知られる曽我物語のひとつ。そもそも江戸時代、声が出なくなった二代目市川團十郎が外郎家の薬を服用して回復。感謝した團十郎が「ういろう」を題材に芝居を書き、それがお家芸にまでなったのだとか。 また、江戸時代の大衆小説「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」にもこの店は登場します。東海道を旅する弥次さん喜多さんのふたりが小田原名物のういろうを買いに店に立ち寄ったところ、間違って薬を購入して苦い思いをするというお話。江戸の昔から「ういろう」は食べてみたいお菓子として口コミで広まっていたのですね。

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博物館で知る「ういろう」の歴史

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貴重な品々が並ぶお蔵のなかの博物館

店の奥には1885(明治18)年に建てられたお蔵があり、「外郎博物館」になっています。入場料は無料ながらスタッフが、なぜお城のような店構えなのか、薬やお菓子の起源、実は京都の祇園祭の山鉾(やまぼこ)のひとつ「蟷螂山(とうろうやま)」にゆかりがあること等々、「ういろう」にまつわる興味深い歴史や文化を貴重な展示物を見ながら丁寧に説明してくれます。

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薬の「ういろう」の展示。銀色の小さな丸薬には健康への願いが込められている

名物をおみやげにするだけでなく、「外郎売」や「弥次喜多膝栗毛」など、いにしえの世界に思いを馳せてみてはいかがでしょう。

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