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2025.10.05
秋の鎌倉で心ときめくアートさんぽ♪情緒ある美術館でアートに触れたあとはカフェでほっとひと息
秋の深まりとともに、しっとりとした風情をまとう鎌倉は、街歩きに最適な季節を迎えます。端正な日本家屋を改築した美術館を訪ね、静かなティールームでその余韻にひたるひとときは、この時期ならではの贅沢な過ごし方。そこで今回は芸術の秋を満喫する街歩きをご案内します。秋風が木々を揺らす小道をのんびり歩きながら、歴史とアート、古都の風情が織りなす鎌倉の魅力に触れてみませんか。
古都の風情とともに鑑賞する「鎌倉市鏑木清方記念美術館」
縁側でくつろぐティールーム「Garage Bluebell」
日本の映画文化を辿る「鎌倉市川喜多映画記念館」
心温まる土鍋のごはんでランチ「おこめ 天松堂」
鎌倉を代表する銘菓をお土産に「鎌倉紅谷 小町横路店」
古都の風情とともに鑑賞する「鎌倉市鏑木清方記念美術館」

しっとりとした佇まいの「鎌倉市鏑木清方記念美術館」
観光客でにぎわう小町通りから一本小道に入ると、静かな住宅街が広がります。家々の庭先には季節の花が咲き、鎌倉の日常を身近に感じられるエリアです。そんな古都の街並みに溶け込むように佇む「鎌倉市鏑木清方記念美術館」は、明治から昭和にかけて活躍した日本画の巨匠・鏑木清方の作品を展示しています。

清方の息吹が感じられる特別な空間
この美術館は清方が晩年を過ごした鎌倉の旧居跡に建ち、入口の木戸や館内の画室は、清方が暮らした当時の部材を使用して再現されています。筆や硯、乳鉢、様々な画材が整然と並び、まるで今にも筆を執りそうな、当時の制作風景を想像できます。

企画展で展示される代表作「朝涼」※サイズの小さい複製品
最初は挿絵画家として活動を始めた清方は、やがて、優美な女性を描いた美人画でその名を不動のものとしました。特に夏の朝に愛する長女との散策を描いた「朝涼」は、名作として知られています。

可憐な草花を描いた浴衣のデザイン
収蔵品の多くは、清方の遺族から寄贈されたもので、下絵やスケッチといった貴重な資料も展示されます。年間8回の展覧会が開催され、その都度、すべての作品が入れ替わり、訪れるたびに様々な作品に出会えます。
心がすっと落ち着くような感覚に包まれる庭園

図書コーナーからの眺め
展示室の横には関連書籍を閲覧できる図書コーナーがあり、窓の向こうには美しい日本庭園が広がります。早春の白梅、水仙に始まり、アジサイやサルスベリ、萩、モミジの紅葉といった具合に一年を通して四季折々の表情を見せてくれます。

冠木門のある庭
庭園には清方の自宅にしつらわれていた冠木門と屋形灯篭も再現され、情緒豊かな日本の風情が漂います。

「クリアファイル」(550円)絵葉書「130円」
ミュージアムショップでは、美人画を中心とした作品の絵葉書が種類豊富に揃います。その一方で、大正時代の少年・少女向け雑誌の表紙をモチーフにしたレトロな可愛らしいデザインのクリアファイルも。清方の繊細な美意識と幅の広さを感じながら、古き良き日本の芸術の世界に心ゆくまで浸ってみてはいかがでしょうか。

日本画の色の原料となる鉱石の展示
鎌倉市鏑木清方記念美術館
カマクラシカブラギキヨタカキネンビジュツカン
縁側でくつろぐティールーム「Garage Bluebell」

ガラス戸から明るい日差しの入るティールーム
繊細な日本画を鑑賞した後は、住宅街の奥に佇む「Garage Bluebell」でひと休み。縁側に英国アンティークの家具が美しく調和するティールームで、小鳥のさえずりが心地よく響き、ゆったりとした贅沢な時間を過ごせます。

「ダージリンティー」(1000円)
選りすぐりの美味しい紅茶がポットでたっぷりと提供されます。フェアトレードの茶葉を使用し、ダージリンやアッサム、ミルクと相性抜群のまろやかなウヴァなど約6種類の紅茶から、その日の気分に合わせて選べます。

「クリームティー」(1900円)
紅茶と一緒にいただきたい自家製スコーンには、手作りジャムが添えられます。リンゴやプラム、ミカン、バターナッツカボチャなど、旬の素材の優しい甘さを香り高い紅茶とともに、のんびりと味わって。

「Garage Bluebell」の記事はこちら
Garage Bluebell
ガレージ ブルーベル
日本の映画文化を辿る「鎌倉市川喜多映画記念館」

昔ながらの黒色の板塀に囲まれた「鎌倉市川喜多映画記念館」
カフェでゆっくりと過ごしたら、再び住宅街の散策へ。黒色の板塀に沿って伸びる小道の先に、「鎌倉市川喜多映画記念館」が見えてきます。ここでは、日本の映画文化の発展に多大な貢献をした川喜多長政・かしこ夫妻の旧宅跡を記念館として公開しています。

大きなサイズのフランス映画のポスター
川喜多長政・かしこ夫妻は、現在の映画配給会社「東宝東和」の前身となる「東和商事」を昭和初期に設立し、ヨーロッパの名作映画を日本に紹介した功績で知られています。不朽の名作として語り継がれる「望郷」「天井桟敷の人々」「第三の男」といった数々の映画を紹介し、日本の映画ファンに深い感動と影響を与えました。

日本映画のポスターがかかる展示室
展示室では、定期的に企画展が開催され、貴重な映画のポスターが飾られています。その奥の情報資料室では映画に関連した書籍を観覧することができ、窓の向こうには緑豊かな庭園が広がり、ゆったりとした気分で過ごせますよ。

ドイツ・キノトン社製の古い映写機2機を使って上映
記念館の中には51席というこぢんまりとした映画館があり、昔ながらのフィルムを映写機で映し出す映画が多く上映されるのも魅力です。映画が誕生した頃にタイムスリップしたかのようにノスタルジックな体験もできます。
海外の要人も訪れた大きなお屋敷

重厚な旧川喜多邸別邸
裏手には、旧川喜多邸別邸が佇みます。江戸後期の民家をこの場所へ移築したもので、国際的な映画人としても活躍した夫妻が、海外から訪れる映画監督や映画スターをもてなしたといわれています。

テーブルとイスを配した広い居間
フランスの名優アラン・ドロンや、鎌倉山に住んでいた田中絹代などもここを訪れたのだそう。どっしりとした重厚なつくりで、幅20cm以上はあろうかと思われる太い柱が何本も使われ、20畳の居間のほか、書斎や茶室も設えられています。年に数回、一般公開されるので、それに合わせて訪れるのもおすすめです。

ミュージアムショップの絵葉書(110円)と一筆箋(440円)
日本の映画史を築いた人々の功績に思いを馳せながら、静かに歴史の重みを感じてみてくださいね。
鎌倉市川喜多映画記念館
カマクラシカワキタエイガキネンカン
心温まる土鍋のごはんでランチ「おこめ 天松堂」

小道の突き当り「おこめ 天松堂」
鎌倉の風情とアートに触れた後は、お待ちかねのランチタイム。土鍋で炊いたごはんの美味しさを心ゆくまで堪能できるおむすびのお店「おこめ 天松堂」へ足を運びましょう。鶴岡八幡宮へと続く参道、段葛から一本小径に入った先にあり、賑わうエリアにありながらも、隠れ家のようなお店です。

「おむすび」(230円~)
おむすびのお米は産地と生産者、栽培方法にこだわった極上のお米を日本各地から何種類も取り寄せ、その中から毎日3種類を土鍋で炊きます。有機肥料で大切に育てられたお米や、昔ながらの天日干しでじっくりと乾燥させたお米など、それぞれの個性と旨みを最大限に引き出します。ふっくらつやつやのごはんをぜひご賞味あれ。

土鍋で炊いたご飯はおひつに移して
具材は、シンプルな「塩むすび」をはじめ、「紀州南高梅昔ながらの梅干し」や「明太子」など、十数種類から選べます。好きなおむすびに、その日のおばんざいを組み合わせて楽しむランチ。心と体を優しく満たしてくれます。
「おこめ 天松堂」の記事はこちら
おこめ 天松堂
オコメ テンマツドウ
鎌倉を代表する銘菓をお土産に「鎌倉紅谷 小町横路店」

ガラス張りのショップ
鎌倉アートさんぽの締めくくりは、「鎌倉紅谷 小町横路店」でお土産探し。小町通りから一本入った小径沿いのショップは、カフェを併設してゆったりとしています。

入り口にはリスくんの案内
看板商品の「クルミッ子」をはじめ、イチョウをかたどったサブレや焼き菓子をラインナップ。リスくんを描いたオリジナルエコバッグも3色から選べ、お土産にも、自分用にも欲しくなる品物です。

化粧箱入りの「クルミッ子プチギフトBOX」(616円)
カフェでは「クルミッ子パフェ」が人気です。塩キャラメルアイスとミルクアイス、チョコレートムースを組み合わせた濃厚な味わい。トップにちょこんと乗るリスくんのクッキーがキュートです。

「クルミっ子パフェ」(1580円)
「鎌倉紅谷 小町横路店」の記事はこちら
鎌倉紅谷 小町横路店
カマクラベニヤ コマチヨコミチテン
秋深まる古都で心潤すアートな一日

鏑木清方意匠のうちわ
秋風が心地いい鎌倉でのアート散歩を紹介しました。歴史ある古都の風情と、そこに息づくアートを五感で感じるひとときは、日々の喧騒を忘れさせてくれる贅沢な時間です。忙しい日常から少し離れて、古都の魅力を存分に楽しんでくださいね。
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文:高橋茉弓、写真:高橋茉弓、新井智子
Writer
高橋茉弓

おやつの時間を何よりも大切にするライター&カメラマン。波の音とカフェがあればそれで幸せ。
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