多彩な表現が交差する、あいち2025の中心地「愛知芸術文化センター」

《海流と開花のあいだ》ムルヤナ Mulyana

名古屋・栄の中心にある「愛知芸術文化センター」は、近現代を中心としたコレクションを有する愛知県美術館や、多彩なパフォーマンス・アーツを上演する愛知県芸術劇場が入った複合施設。

《海流と開花のあいだ》ムルヤナ Mulyana

「あいち2025」では、この愛知芸術文化センターの美術館や劇場だけでなく、オフィシャルショップやラーニングセンターなど館内各所で多彩なプログラムを展開。絵画や映像、ダンス、演劇など、ジャンルを越えた表現に出会えるのが魅力です。

太田三郎 Ota Saburo、宮本三郎 Miyamoto Saburo、水谷清 Mizutani Kiyoshi の絵画と、《ジオラマ》シリーズ杉本博司 Sugimoto Hiroshi

はく製の動物を写真に撮ることで、失われた存在を写し取った杉本博司氏の《ジオラマ》シリーズ。20分間の露光によって生きているかのように描き出されたその姿は、現実には存在しない虚構の世界をつくり出しています。 こちらの会場では、画家の太田三郎氏、宮本三郎氏、水谷清氏による動物たちを描いた絵画とともに展示。人類の営みの中で姿を消した生き物への追悼と、その記憶を作品にとどめようとする祈りが込められています。

太田三郎 Ota Saburo、宮本三郎 Miyamoto Saburo、水谷清 Mizutani Kiyoshi の絵画と、《ジオラマ》シリーズ杉本博司 Sugimoto Hiroshi

左：《スプリットエンズ（枝毛）》アフラ・アル・ダヘリ Afra Al Dhaheri、右：《明日の収穫》大小島真木 Ohkojima Maki

《スプリットエンズ（枝毛）》は、天井から垂れ下がる無数のロープが空間をやわらかく仕切るインスタレーション。歩きながら触れることで作品の揺らぎや重なりを体感できる、鑑賞者の身体が作品の一部となるような“触れられる作品”です。

《スプリットエンズ（枝毛）》アフラ・アル・ダヘリ Afra Al Dhaheri

バーシム・アル・シャーケル Bassim Al Shakerの作品群

バーシム・アル・シャーケル氏の作品は、イラク戦争の爆撃直後に実際、目の前に見えた情景を描いた作品。 瓦礫や爆音の記憶をもとにしながらも、そこにあるのは死ではなく、新たな命の兆し。破壊や喪失の中でも、未来への希望や「生きていることの喜び」を表そうとした作者の思いに触れ、思わずハッとさせられます。

トルコやヨルダン、レバノンに伝わる洪水神話「ノア」の物語を、現代の地政学と文化の文脈に置き直す《ノアの墓》ダラ・ナセル Dala Nasser

国際芸術祭「あいち2025」 展示風景 クリストドゥロス・パナヨトゥ《落選の花園》2025 ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会 撮影：ToLoLo studio

いっけん見逃してしまいそうな愛知芸術文化センター8階ライトコートの《落選の花園》。クリストドゥロス・パナヨトゥ氏の「あいち2025」の新作で、規格外や新品種として認められなかった名もないバラたちが植えられています。 まるで写真の登場で絵画のオリジナリティが問われ、初めは落選続きだった印象派の画家たちのように、独自の表現を模索する姿を思わせます。ぜひチェックしてみてくださいね。

《熱の哀歌》プリヤギータ・ディア Priyageetha Dia

愛知芸術文化センターでは映像や漫画、インスタレーションなども盛りだくさん。 《熱の哀歌》は、靴を脱いでゴム製の幕の中に入るインスタレーション。広がるゴムの匂いと足元の弾力ある感触が、訪れる人に不思議な体験をもたらします。 プリヤギータ・ディア氏は、マレー半島のゴム農園で働いたタミル系移民の記憶や植民地の歴史を映像と音で呼び覚まし、AIで再演された伝統的な追悼歌「オッパリ」が、失われた声や記憶と私たちをつなぎます。

《熱の哀歌》プリヤギータ・ディア Priyageetha Dia

期間限定ショップも。秋のアート旅にぴったりの国際芸術祭「あいち2025」へ

《青い四つの手を持つ獅子》久保寛子 Kubo Hiroko

作品に鑑賞することで、アーティストのルーツや出身地域、アイデンティティを通して、複雑化する社会を新しい角度から見つめ直すきっかけをくれる「あいち2025」。 会期中は、愛知芸術文化センター地下2階には期間限定ショップ「TEMPORA（テンポラ）」が登場。名古屋のbookshop & gallery「ON READING」とのコラボレーションで、東海エリアのアーティストの展示や日替わりポップアップも楽しめます。

愛知芸術文化センター地下2階に期間限定ショップ「TEMPORA（テンポラ）」

週末には、パフォーミングアーツやラーニングプログラムも開催。訪れるたびに新しい発見があり、秋のアート旅にもおすすめです。ぜひ会場に足を運んでみてください。