灰と薔薇の「あいま」で考える新しい世界。国際芸術祭「あいち2025」レポート
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灰と薔薇の「あいま」で考える新しい世界。国際芸術祭「あいち2025」レポート

2010年から3年ごとに開催されている国際芸術祭「あいち」は、今年で6回目。「あいち2025」には、国内外から60組以上のアーティストが参加。現代美術展には54組、パフォーミングアーツには9組の公演が登場します。会場は「愛知芸術文化センター」「愛知県陶磁美術館」「瀬戸市まちなか」の3会場で、それぞれ独自の魅力にあふれる表現に出会えます。 今回のテーマは、詩人アドニスの詩の一節からとられた「灰と薔薇のあいまに」。戦争や環境破壊といった厳しい現実を「灰」とすれば、その先に芽生える希望や未来は「薔薇」ともいえます。灰と薔薇のあいまにある揺らぎや可能性に目を向けることで、私たちの世界を新しい角度から見つめ直そうというメッセージが込められています。 ここからは、会場ごとの「みどころ」をレポートします。

Contents
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    自然に調和する空間で、建築もアートも満喫できる「愛知県陶磁美術館」

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    “せともの”の街でたのしむ「瀬戸市のまちなか」アート散歩

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    多彩な表現が交差する、あいち2025の中心地「愛知芸術文化センター」

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“せともの”の街でたのしむ「瀬戸市のまちなか」アート散歩

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瀬戸川沿いに並ぶ、せともの専門店街

名古屋市中心部から電車でおよそ40分。名鉄瀬戸線の尾張瀬戸駅の周辺には、長い歴史を持つやきもののまちが広がっています。良質な陶土に恵まれ、「せともの(瀬戸物)」の語源にもなった瀬戸は、今も多くの陶芸家や「ツクリテ」が活動する場所です。 国際芸術祭「あいち2025」瀬戸市のまちなか会場では、閉校した小学校や旧銭湯、粘土の工場、商店街など、まちの風景そのものが展示空間に。瀬戸ならではの文化や景観に触れながら、まち歩きとアート散歩の両方がたのしめるエリアになっています。

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左上・右上「せともの」を販売するお店の風景、左下:「せともの」と「土」の字がモチーフに描かれたマンホール、右下:インフォメーションセンター

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会場:旧日本鉱泉、作品:《忘れじのあわい》佐々木類 Sasaki Rui

瀬戸のまちには、かつて陶工たちが仕事を終えたあとに集った銭湯が点在していました。そのひとつである「旧日本鉱泉」は2021年に惜しまれつつ閉業。佐々木類氏は何度も瀬戸に通ってリサーチを重ね、地元の人たちとともに季節ごとの植物を採取しました。 旧銭湯でのインスタレーション《忘れじのあわい》に使用されているのは、瀬戸にあるガラス会社のデッドストックや、古民家から譲り受けた雨戸や戸棚のガラス。光を受けて透ける植物の姿は、まるでこの地の記憶をそっと映し出しているかのよう。人々が集い、語らい、暮らしてきた時間の積み重なりが感じられる銭湯という空間を活かしつつ、瀬戸のまちに流れてきた時間を、植物やガラスの透明な輝きのなかにそっと浮かび上がらせています。

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会場:旧日本鉱泉、作品:《忘れじのあわい》佐々木類 Sasaki Rui

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まちなか各所でみられる、panpanyaさんの作品。

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まちの各所に、せともののまちを思わせる風景。

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喫茶店や洋食店などが並ぶ、銀座通り商店街。

どこか懐かしい商店街を歩いていると、全面ミラー貼りのショーウィンドウが目に入ります。かつて八百屋だったその場所に足を踏み入れると、外の世界とは全く違うパラレル空間が。

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会場:ポップアップショップ 作品:《The Silence (Two Suns)》冨安由真 Tomiyasu Yuma

冨永由真氏による《The Silence (Two Suns)》は、瀬戸の鉱山で珪砂を精製する過程で分けられた不純物「砂キラ」の山と、ところどころに瀬戸の「磁器土」の花がちりばめられ、人の気配がない空虚な世界に迷い込んだかのよう。照明や映像の仕掛けとともに、現実と虚構のあいだに浮かぶ二極化された世界を体感できます。

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会場:ポップアップショップ 作品:《The Silence (Two Suns)》冨安由真 Tomiyasu Yuma

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旧瀬戸市立深川小学校

旧瀬戸市立深川小学校では、アドリアン・ビシャル・ロハス氏が大規模なインスタレーション《地球の詩》を展開。壁紙を貼っては剥がすなどの手法で、人間が誕生する前や滅んだ後の世界を思わせる幻想的な景色が広がります。

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会場:旧瀬戸市立深川小学校、作品:《地球の詩》アドリアン・ビシャル・ロハス Adrián Villar Rojas

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会場:旧瀬戸市立深川小学校、作品:《地球の詩》アドリアン・ビシャル・ロハス Adrián Villar Rojas

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会場:旧瀬戸市立深川小学校、作品:《地球の詩》アドリアン・ビシャル・ロハス Adrián Villar Rojas

日本で彼の大型展示が見られるのは貴重な機会。鑑賞後もその光景が深く心に残ります。旧瀬戸市立深川小学校は、時間の余裕をもって足を運びたい展示のひとつです。

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無風庵

こちらは、瀬戸の御亭山に建つ美術工芸家・藤井達吉氏の工房「無風庵」。赤い布から四方八方に伸びる糸と、10万本近い針が刺さった陶土が織りなすインスタレーションは、折れた針を供養する「針供養」や、出征する兵士のために女性たちが縫った「千人針」を思わせます。 戦争や暮らしの記憶、女性たちの手仕事の重なりを伝え、藤井達吉氏が提唱した個性豊かな工芸の精神と、家庭での丁寧な針仕事の精神を受け継いだ記憶を投げかけます。

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会場:無風庵 作品:《anthology》 沖潤子 Oki Junko

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会場:無風庵 作品:《anthology》 沖潤子 Oki Junko

「言葉にならぬこと、ほどけかけた記憶は、手を動かすことで大切な場所へつながっていきます」と作者の沖潤子氏からのメッセージも。

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会場:無風庵 作品:《anthology》 沖潤子 Oki Junko

ここに訪れた人も、針目に今の願いや思いを残し、未来に手渡す確かなしるしとして作品に関わることができます。中には、LOVEの文字や動物なども。赤い糸に込められたやさしさが、そっと心に残りました。

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会場:梅村商店 作品:《見えない敵などいるはずがない》マイケル・ラコウィッツ Michael Rakowitz

「瀬戸市まちなか」は、できれば1日じっくりかけて散策するのがおすすめ。 どうしても1日時間が作れない場合は、旧銭湯や美術館のある「南エリア」、閉校した小学校や工場などがある「北エリア」に分けて、それぞれのロケーションの魅力をゆっくり別日でめぐってみるのもたのしみ方のひとつです。

瀬戸市のまちなか

せとしのまちなか

pin-icon2025-09-13 2025-11-30
clock-icon10:00〜17:00(入館は閉館の15分前まで 瀬戸美術館は30分前まで)
pin-icon火曜日(火曜日祝日の場合は翌水曜日)、11月25日(火)
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https://aichitriennale.jp/index.html
※瀬戸市のまちなかの詳細は、国際芸術祭「あいち2025」公式ページからご覧ください

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