大正・昭和の浪漫あふれる熱海の名邸「起雲閣」に行ってみました♪
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大正・昭和の浪漫あふれる熱海の名邸「起雲閣」に行ってみました♪

古くから政財界の重要人物たちの別荘地として栄えてきた熱海。この地に1919(大正8)年、「海運王」内田信也により、別荘として建てられた名邸が基となる「起雲閣」。その後、二代目の所有者となった根津嘉一郎により、洋館が建てられ同時に庭園も整えられました。 1947(昭和22)年には旅館として生まれ変わり、多くの文豪たちに愛されてきましたが、現在旅館は廃業し、本館、離れ、洋館ともに一般公開され、当時の美しい建築様式を見学できるようになっています。 写真と共に、起雲閣の見どころをご案内します。

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和館「麒麟」からスタート

この建物は、政治界で活躍し、「海運王」とも呼ばれた内田信也が、実母の静養の場所として建てた別荘です。 とてもシンプルな作りですが、座敷から眺める風景。これは素晴らしい。 当時の職人が一枚一枚流し込んで作った窓ガラスはわずかに歪み、大正時代へと一気にタイムスリップ。

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座敷の周囲を座敷と同じ高さに揃えた畳廊下で囲む構造を、【入側造(いりかわづくり)】と言うそうです。この「段差のなさ」が、広々とした空間を感じさせる要因となっているのではないでしょうか。 これを取り入れたのは、当時車椅子で生活していた実母に対する内田信也の思いやりと考えられています。 大正時代にすでに、「バリアフリー」の考え方があったとは、驚きです。

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この部屋の壁の色に注目してみましょう。

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ひときわ目を惹く鮮やかな壁の色。この青色の壁は、「加賀の青漆喰」と呼ばれる石川県加賀地方の伝統的な技法です。 お殿様だけに許された色だそうですが、旅館を開業した「桜井兵五郎」が石川県の出身であったため、開業時に取り入れたといわれています。

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2階に上がって・・・。「大鳳」

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昔ながらの少々狭く急な階段を昇ると、2階の座敷「大鳳」を見学できます。 ここは、太宰治は昭和23年3月18日から2泊、山﨑富榮を伴って宿泊したと言われている部屋です。心中の3カ月前のことでした。。 少し歪みのある大正ガラス越しの松。彼らはどんな思いでこれを眺めていたのでしょう。 2階の窓からは、これから訪ねる洋館を見下ろすことができます。たしか、天井には一面美しいステンドガラスが嵌め込まれていたはずです。さて、行ってみましょう。

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洋館・「玉姫」&サンルーム

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和館から洋館へ渡り廊下を行くと、まず、柔らかな光が差し込むサンルームへといざなわれます。 この建物は、起雲閣2代目の持ち主・根津嘉一郎によって、1932年(昭和7)に建てられました。 根津嘉一郎とは、青山の根津美術館を造った人。昭和の「鉄道王」です。

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天井には一面アール・デコ調のステンドグラスが嵌め込まれ、床は、シブい色合いのタイル敷きです。床に手を触れると、ひんやりと冷たい感覚の後に、柔らかなタイルの厚みを感じました。

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サンルームに続く部屋は「玉姫」と呼ばれています。

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正面に暖炉があるヨーロッパのデザインを基本としていますが、折上格天井(おりあげごうてんじょう)など日本の神社仏閣に見られる建築様式が用いられています。 よく見ると、「喜」の文字をデザインした中国風の彫刻や、シルクロード沿いで見られる唐草模様の彫刻が施され、和洋中、すべての「いいとこどり」をしたような部屋です。

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洋館・「玉渓」

玉姫の隣のこの部屋に一歩足を踏み入れると、さらに意匠が変わり、驚きます。 英国「チューダー様式」を取り入れた部屋だという事。シェイクスピアの生家で有名な建築様式です。

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正面の暖炉の中には、火を司る精霊サラマンダーが、覆いには梵字があしらわれ、さらに暖炉の上には、インドの仏様のレリーフ。 天井の一部には、茶室で使われるような竹材が使われ。。。 ヨーロッパ、西アジア風でありながら、実は、床の間付きの純和風の客間だったという事なのです。

なるほど、そう思って眺めてみると、向かって右には、明かり障子となるステンドグラスを嵌め込んだ窓。向かって左には、床柱となる太い柱が。ガイドさんによると、神社か寺で使われていたもの頂いたのだろうという事でした。 普通、そのようなものを自宅の建材として使う事はないだろうから、施主の力が如何に膨大であったのかがうかがい知れるエピソードです。 ともすれば、文化をごちゃまぜ、雑多な部屋になりかねないのに、なぜかしっくり落ち着く空間になっているのは、時間の経過というマジックでしょうか。。 全体の雰囲気を楽しんだあと、ふと柱や梁を見てみると、独特の文様が目に入ります。

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柱や梁は、名栗(なぐり)仕上げという日本古来からの技術で加工されたもの。釿(チョウナ)と言う道具を使い、独特の削り痕を残すで、木の目を読み、振り下ろす力の入れ具合を均一に保たなければならない難しい技です。。 そんな細かいことも、「玉姫」に常駐している、ボランティアガイドさんが話してくれます。疑問に思ったことや興味を持ったことを、どんどん質問してみると、起雲閣の見学もさらに面白味を増します。

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洋館・ローマ風浴室

重厚な扉を開け、「玉姫」を出ると、渡り廊下の先に「金剛」の間。その先にローマ風浴室が配されています。

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この浴室は、1929(昭和4)年に根津嘉一郎により作られましたが、1989(平成元)年改築の際に天井壁などが現在の材料にあらためられ、現在に至っています。 かなり深めの浴槽。 実際に温泉をはって入ってみたらどんな感じなのでしょう~?! ステンドグラスの窓、テラコッタ製のカラン、換気口金物は当時のものが残されていて、雰囲気を味わうことができました。。

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テラコッタ製のカラン。小さいけれど、とても凝った作り。

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通気口までこだわって。

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庭園

ローマ風呂を出て、和館「孔雀」を見学したのち、庭園に出てみましょう。

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起雲閣の庭園は、池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)とよばれていて、眺望と散策、両面から楽しむのを目的としているそうです。

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この日(4/25)は、一週間ほどしか咲かない藤の花が見ごろで、とてもラッキーでした。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 起雲閣インフォメーション *住所 〒413-0022 静岡県熱海市昭和町4-2 *電話 0557-86-3101 *入館料  大人510円 中学生・高校生300円 小学生以下のお子さんは無料です。 *駐車場     敷地内に普通乗用車37台ほどが駐車できる無料駐車場あり。     満車の場合は、お宮の松横 市営駐車場(1時間310円)を利用。

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。

Writer

荻嶋留美

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家を一歩出れば旅の始まり。旅好きが高じ、 2002年、東伊豆の山頂でペンションエルブルズを 開業。人、動物、虫、植物・生き物大好き。 伊豆各地を写真で巡る旅を楽しんでいる日々。

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