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2019.01.28
文豪も愛する、もちもち柔らかな金沢うどん。近江町市場近くの名店「加登長 総本店」
うまみのある甘めの出汁とやわらかい麺が特徴の「金沢うどん」。その元祖でもあり、地元でうどんと言えば、真っ先に名前が挙がるのが「加登長」です。金沢市民の台所・近江町市場の近くにある総本店では、短冊状の油揚げが入ったあんかけの「たぬきうどん」(750円)など、こだわりメニューを求め全国から多くの人が訪れます。
金沢うどんの誕生秘話
特に金沢うどんの定義に決まりはありませんが、一般的にやわらかい麺と甘めの出汁が特徴とされています。麺に出汁をたっぷりからませていただくのがツウの食べ方。金沢うどんの麺が細くてやわらかいのは、出汁にからみやすいからなのだそう。 「加登長」が大衆食堂としてこの地で誕生したのは1901年(明治34)のこと。そのルーツは、創業者が店を開くにあたり京都から呼び寄せたうどん職人が、京都でつくっていたうどんを提供したことに始まります。それに、地元の薄口醤油を使い、金沢人の好みを取り入れて、現在の金沢うどんの味が生まれました。細くてやわらかい麺も、短冊状に刻まれた油揚げも、京都の舞妓さんや芸妓さんが口を大きくあけなくても食べやすいようにと工夫された名残と聞けば納得です。
とろみをつけたあんかけ汁に、生姜がアクセントを添える「たぬきうどん」
「加登長」の1日は、早朝にその日に店で出す麺と出汁をつくることから始まります。麺の材料は小麦粉と塩と水のみ。麺にコシがありすぎると出汁とからみにくいため、何度も製麺機を通してのばし、絶妙のやわらかさに仕上げます。出汁はウルメやカツオ、サバ、イワシなどからとった伝承の味。濃さや甘さは提供するうどんの種類によって調整します。 メニュー表には、「たぬきうどん」(750円)のほか、「いなりうどん」(500円)、蒲鉾やすだれ麩、椎茸などをトッピングした「かやくうどん」(600円)など、創業当時から変わらぬ定番メニューが並びます。うどんの名前は、地域によって異なるため、県外のお客さんにもわかりやすいように、メニューには写真が載せてあります。
加賀野菜の天ぷらと金沢うどんのコラボ
加賀れんこん、五郎島金時(サツマイモ)、金時草など加賀野菜が中心。素材は季節により異なる
定番うどんのなかでも一、二を争う人気を誇るのが「加賀野菜天ぷらうどん」(850円)。揚げたての加賀野菜の天ぷらと金沢うどんが一度に楽しめるおトクなメニューです。天ぷらが別皿で出てくるのは、衣のサクサク感を好む方も、出汁をたっぷりとつけて食べたい方も、それぞれの好みで食べられるからという配慮だそう。
金沢うどんの出汁が決め手の親子丼
地元っ子にもおいしいと評判の親子丼は卵のふわとろ感がたまらない
うどんとともに評判なのが、うどんの出汁で卵をふんわりととじた「親子丼」(うどんまたはそば付700円、単品500円)。うどんよりもやや濃いめに味を付けたつゆと一体化した卵がご飯にからみつき、最後のひと口までおいしくいただけます。
日本を代表する作家の五木寛之さんが著書のなかで「いかにも前田家ゆかりの町らしいうどん」と称した「金沢うどん」を味わいに、全国のファンが足を運ぶことでも知られているのだとか。いろんな味わい方が楽しめる「加登長 総本店」。ぜひ訪れて元祖金沢うどんを味わってみて。
加登長 総本店
カドチョウ ソウホンテン
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岡崎 佐智子
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