ココロを晴れやかな気分にさせてくれる話題の日本映画

桜の季節の訪れとともに晴れやかな気分になりたい。スカッとしたり、笑ったり、楽しい気分にさせてくれる、そんな今の気分にぴったりの日本映画、いかがでしょうか？

騙して、騙して、騙されて。『騙し絵の牙』で最後に笑うのは誰⁉　

出版不況の波に揺れる大手出版社で、廃刊の危機に迫った雑誌「トリニティ」の編集長に就任した速水輝也（大泉洋）は、雑誌の存続をかけてさまざまな新企画を実行。「おもしろいことをやろう」と部下たちにも心からやりたい企画を出すよう促しますが、彼の狙いは一体……？出版業界のリアルな姿を映し出しながら、社内抗争や作家の取り合いといったドラマも交じって展開していく本作。それぞれが手にしたい成功という名の夢をかけて、意地やプライドをぶつけながら壮絶な騙し合いを繰り広げます。

塩田武士の小説を原作にしている本作ですが、もともと原作小説の主人公の速水輝也は大泉洋をイメージして書かれているので、配役はぴったり。真面目なのかふざけているのか、うさん臭いのか真摯なのか。そんな速水のつかみどころのない人間性に頭を振り回されるからこそ、最後に味わう爽快感が生きてきます。キャストも熱血新人編集者に松岡茉優、カリスマ性たっぷりの新人作家に宮沢氷魚、闇を持つ超人気ファッションモデルに池田エライザなどと豪華ですが、はたしてこの中で嘘をついていない人はいるのでしょうか。『桐島、部活やめるってよ』の、吉田大八監督の抜け目のない演出も光る痛快な1作です。

【映画情報】
『騙し絵の牙』
監督：吉田大八
出演：大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市ほか
3月26日全国公開
公式サイト：https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/

普通ってなに？　恋愛偏差値ゼロ男女のラブコメディ『まともじゃないのは君も一緒』

予備校講師の大野（成田凌）は、ルックスはいいのに偏屈すぎて常識知らず。周囲の人たちがいう「普通」という言葉の意味がまったく分からず、このままでは結婚もできず一生一人かもしれないと不安にかられます。そこで彼は自分を変えようと、教え子の恋愛上級者を気取る知ったかぶり女子高生の秋元香住（清原果耶）に相談。しかし実際のところ香住も恋愛経験などまったくなし。恋愛偏差値ゼロの男女が、第三者カップル相手にひと騒動を巻き起こします。

成田凌と清原果耶の噛み合わない会話の応酬が気持ちいいほどテンポがよく、派手な演出やジェットコースター的急展開などないのにどんどん引きこまれていきます。しかし、物語の最高の魅力はなんといってもグイグイ人の間合いに入りこんでくる女子高生の勢いや、一方で傷つきやすく揺れる繊細な乙女心といった18歳の女の子らしいライブ感を味わえる清原果耶の演技力。この才能こそ、もっとも「普通」からかけ離れているものではないでしょうか。

【映画情報】
『まともじゃないのは君も一緒』
監督：前田弘二
出演：成田凌、清原果耶、小泉孝太郎ほか
3月19日全国公開
公式サイト： https://matokimi.jp/

3人の個性派監督たちがナビゲートする『ゾッキ』の不思議ワールド

サブカル界の中でカリスマ的人気を誇る漫画家・大橋裕之の原作コミックを竹中直人、山田孝之、斉藤工の3人が共同監督を務めた異色コメディ。もともと異なる話を一つの作品にしていますが、とあるシーンでキャストが重なったりするので、オムニバス作品というよりもむしろ、それぞれの監督が手がけたパートがゆるりとつながった群像劇といったほうが分かりやすいかもしれません。

松田龍平が演じる自分探しが大嫌いな冴えない男が、ふと思い立って寝袋一つで自転車にまたがり自分探しの旅に出る「Winter World」や、森優作演じる高校生が存在しない姉を仕立てあげたことで、友人の伴くんが架空の姉に夢中になってしまう「伴くん」など、短編8作を1本につなぎ合わせたストーリーは、ギャグと現実のはざまを行ったり来たりする不思議な世界観。全編を通してカギを握るのは各々の「秘密」。豪華キャストも見どころの一つです。誰がどのパートの監督をしたのか、エンドロールを観て答え合わせをしたくなること間違いなしなので、自分なりの予想を立ててみるのも良さそうです。