岐阜LOVE、飛騨牛LOVE。日々“適切な熟成”を緻密かつマニアックに、愛した肉の旨さを全身全霊で極限まで引き出す焼肉店。[焼肉 旬やさい ファンボギ/岐阜県岐阜市]by ONESTORY
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岐阜LOVE、飛騨牛LOVE。日々“適切な熟成”を緻密かつマニアックに、愛した肉の旨さを全身全霊で極限まで引き出す焼肉店。[焼肉 旬やさい ファンボギ/岐阜県岐阜市]by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から岐阜県岐阜市の「焼肉 旬やさい ファンボギ」を紹介します。

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日本本州のほぼ中央に位置する岐阜県。その中心部である岐阜駅からごく数分の商店街に、全国から肉マニアが足を運ぶ焼肉店があります。その名は、『焼肉 旬やさい ファンボギ』です。 店主の高橋樗至(のぶゆき)氏は、自身の肩書きに“熟成師”の冠を付けるほか、“MANIAC BEEF LABO“という屋号でディープすぎる精肉販売の業務も行っているほど。いわゆる普通の焼肉店ではないオーラを全面に打ち出しているのです。 しかしそれは、取り扱う肉の種類を聞いただけで、早くも納得せざるを得ないラインナップ。 牛肉は地元・岐阜の飛騨牛を中心に、豚・鶏・馬・羊も居並びます。また狩猟シーズンを迎える冬季以降は、猪・鹿・熊・鴨・野鳥各種といったジビエも豊富に出揃うというのです。しかもそれらはすべて、その時々に完璧なピーク状態を迎えるよう、適切な熟成とカットが施されています。

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そんな、あまりにマニアックな高橋氏の肉愛は、なんといってもダントツで飛騨牛に注がれています。生まれ育った岐阜を愛し、その地で育った飛騨牛を心底愛するというのは、地元愛の強い人ならばごく自然なこと。しかし実は、かつてはまったくと言ってもいいほど、ことブランド牛には関心がなかったとか。それがとある人物たちとの出会いや繋がりから、いまや全身全霊をかけて応援するほどの飛騨牛伝道師へと生まれ変わったのです。果たして高橋氏に、いったい何が起きたのでしょうか。 今回のONESTORYでは、高橋樗至という人物が、普通の焼肉店店主から一転、“変態肉マニア”などと愛を持って呼ばれるようになった今日までの軌跡と、型破りなまでのやんちゃすぎる挑戦を、お伝えしたいと思います。

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“MANIAC BEEF LABO”は、ダテじゃない

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右は「藤村牧場」からのサーロイン。撮影時はと畜後約3ヶ月弱という少し長めのドライエイジング。左が「熊崎牧場」からのサーロインで、ウェットとドライを繰り返したと畜から約4ヶ月半強の肉

料理の世界にもさまざまな進化があります。たとえば近世のフレンチで言うならば、ヌーヴェルキュイジーヌを皮切りに、液体窒素や低温調理といった調理法の変遷に加え、昨今では和食との線引きすら困難を極めるまで、さまざま。しかしそれらは調理法だけでなく、使える食材の可能性が無限大だからこその変化、進化とも言えます。では、焼肉で進化となると、どうなるのでしょう? 肉を焼く。ただシンプルにその行為に尽きる料理でありながら、いまだかつてない“進化する焼肉”を体験できるのが、ここ『焼肉 旬やさい ファンボギ』です。こちらでは、メインとなる飛騨牛のほか、豚、鶏、馬、羊に始まり、狩猟時期にはジビエの焼肉も堪能できるのです。しかもそれらはすべて、店主・高橋樗至(のぶゆき)氏の手により、的確なピーク状態まで熟成をかけられ、そして手切りによるカット(しかもゲストが七輪で焼く直前!)で供されます。 「うちは“MANIAC BEEF LABO”ですから」と笑う高橋氏。そう、本当に目を、耳を疑うマニアックぶりなのです。

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タンはただのタンではなく、付け根、中央、タン先、タンの顎(写真では右下から左上の順)、と部位で提供。衝撃の食感、味わいの差に誰もが驚くはず

たとえば、とある日のメニューはこうです。 「タン4種:付け根、中央、タン先、タンの顎」「揖斐川の下流河口付近で捕れた真鴨の雌 皮と手羽元」「猪の顎肉」「ドライエイジング100日以上の猪のモモと鹿のモモ」……。 この品書きを見て、いったい誰がここを「焼肉店」と思うでしょうか。しかしこれは決して奇をてらったものではなく、あくまで「素材を使い切る」高橋氏だからこそのアプローチなのです。 そしてこれらの素材を、単なる部位違い、素材違いとさせないのが、本編で幾たびも出てくる「熟成」という仕事。ただしこれに関しては、本当にマニアックとしか言いようがありません。 高橋氏の厨房で使う冷蔵庫に、いわゆる昔ながらの水冷式冷蔵庫があります。これは「風あり」「風なし」の両方設定できるようになっているので、単純に考えただけでも2種の環境(湿度差がおよそ40%ほどの差)の違いを作れるというのです。そのなかに、たとえばタンを「皮あり・なし」でドライエイジングとウェットエイジングで熟成させるとしたら、2×4で8種が揃います。しかし、肉というのは生ものです。その時々のコンディションや、さらにはその牛の種類(血統、肥育状況の違いなど)ですべて状態が違うので、高橋氏がその肉を見たときに、「これは先にウェットをかけてからドライにしてみよう」「皮を外して軽くドライにしてから再びウェットの熟成をかけよう」などと対応をしていけば、いくら数学の得意な人が確率論を叩き出したところで、可能性は無限大としかいいようがないのです。しかもそれらは、都度その時々のゲストに供されていくわけですから、一度として同じラインナップがないということになります。 この果てしのない熟成話は、このあとさらに別の表現で可能性を広げることになります。

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違いのわかる焼肉店。それが『ファンボギ』

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ナムル、カクテキ、ムルキムチを盛り合わせにしてコースで前菜として供する。味わいは優しく、体にすっと馴染むものばかり。どれもみずみずしく、野菜そのものの味がしっかりと伝わる

肉の種類や熟成のマニアっぷりで少しお腹がいっぱいになってしまった読者の方もいるかもしれないので、ここで少し野菜の話を。リアルな食事のときでもそう、肉の合間には野菜がマストです。 ナムルやキムチ、焼き野菜など、店で使う野菜の一部は自家栽培のもの。高橋氏の妻の父上とともに、育てているそうです。そして取材時は、訪問した「てんち農園」加藤氏の野菜もありました。 「この菜の花なんか、見た目から彼を思い浮かべられますよね。いかにも優しい感じで彼そのもの」 そう話しながら、葉と茎を切り分け、さらに茎は半分、太いものなら3、4等分にと切り揃えます。 「そうしないと、口に入れたときに茎だけの印象になるから」と、なんとも仕事が細かいのです。

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春菊のナムル。「ナムルはどの素材でも、胡麻と胡麻油をしっかりめに使うのが、やはりナムルらしい」と高橋氏。とはいえ、口に含めばそれら胡麻感は主張しすぎていない

またキムチ作りは、砂糖の代わりにバナナやりんご、富有柿の自家製ピュレや干し柿を使うとか。これは自身が、砂糖を使うと胃に負担がかかるからだと言います。さらに焼き野菜は、種類ごとに下ごしらえを。アスパラガスやパプリカなどは塩茹で、じゃがいも・さつまいもなどの根菜は一度蒸し、かぼちゃや人参は出汁でさっと煮てから供しています。なぜそこまで? と思わなくもないのですが「自分でもたまにイヤんなるんですよ。忙しいときとかイライラする(笑)。でもこの単純作業の繰り返しの時間が、実はかなり大切な時間なんです」と語ります。こういうとき、「冷蔵庫の中の肉がどう呼吸しているかな」とか、「今日来るお客さんはこういう人だからこうしてあげよう」とか、考えるのだそう。この開店前のイメトレ時間が、野菜だけではなく、高橋氏の下ごしらえも兼ねているのです。

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基本はゲストに焼く作業を委ねるので、ポイントを尋ねると、「熟成肉は基本、しっかりめに火を通す方が、そのおいしさを引き出せます」とのこと。肉の内側に旨味が閉じ込められ、噛むほどにエキスがほとばしる

そして、焼き。営業時間中は、よほどのことがない限り、高橋氏が焼くことはありません。ゲストが自分で焼き上げます。 「その体験は、ぜひ自分でやって欲しいんです。それに、誰が焼いてもおいしいところまで、肉は仕上げてあります。うちは、素人でも子供でも、その肉の違いがわかる焼肉ですから」

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飛騨牛を世界レベルへ押し上げるための、あくなき挑戦

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2012年より始まった、繁殖家、肥育家、そして高橋氏によるプロジェクトで、育成された飛騨牛を、2016年に雪中熟成。こんな画は、想像の範疇を超えている

肉用牛の世界は、血統を組み立て仔牛を育成する繁殖家がいて、次にその牛が最上の肉質となるよう育て上げる肥育家がいて、それを買い付け飲食店に卸す精肉店がいる、という分業制が、大きな仕組み。では、客への最終出口となる飲食店の高橋氏は何をするかというと、最大限にその肉の旨さを引き出すための「熟成」に、とことん注力しています。 その熟成方法に、数年前から新たな手法が加わったと言います。それはなんと、「雪中熟成」です。 この雪中熟成とは、雪でかまくらを作り、その中に肉を吊るして保存・熟成させるという試み。2014年からスタートしたと言います。さらに2016年には、2012年に高橋氏とともに繁殖家、肥育家が手を取り合って種付けから繁殖・肥育までを行ったという250kgもの飛騨牛の枝肉を、丸々吊るしたとか。そしてそのプロジェクトの集大成として、その雪中熟成飛騨牛を堪能するイベントも大々的に行ったと言います。 気になるのは雪中における熟成の効果ですが、高橋氏はこう語ります。

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一体誰がこの中に、250kgもの飛騨牛の枝肉が吊るされていると思うだろうか……。ベースはパワーショベルを駆使して作り、仕上げは自力で。満足感ハンパない表情の高橋氏

「高湿度で低温、そして無風。これは熟成条件としてかなり理にかなった状態です。そもそもかまくらは、かつての雪深い山間部における最高の食材保存庫。凍らず腐りにくく獣に取られにくいという、素晴らしい先人の知恵です。現代でわかりやすく言うならば、雪下人参は糖度が上がると言うでしょう? それと同様に、肉の旨味がグワッと上がって、閉じ込められた状態になるんです」 岐阜の地が育て上げた肉を、自然界まで巻き込んで「旨い肉」に仕上げていく。そこまでする焼肉店が、いったいどこにあるのでしょうか。 このプロジェクトイベント以外にも、高橋氏は数々のイベントを立ち上げたり、また各地からも招聘されたりしています。たとえば2013年には『ベージュ東京』で開催された、「パティスリー・サダハル アオキ」×「ベージュ アランデュカス」の“ランデヴーグルマン”という会に、肉を提供したこともあります(高橋氏は食肉処理業免許も取得)。これは「サダハル アオキ」の青木定治氏が『ファンボギ』に客として来店し、そのあまりの肉の旨さに感激して以来の親交なのだとか。

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『ファンボギ』店舗のごく近くにヒミツの2号店目を開店予定。いまはまだ高橋氏の愛車置き場と化しているが、この先どんなドラマがここから生まれるのだろう?

「少しでも飛騨牛を広める役に立つのなら」。高橋氏の行動は一貫して岐阜愛にあふれています。 そして今は2軒目となるヒミツの新店も画策中というから、楽しみで仕方がありません。それもこれも、「すべては旨い肉のために」。それを突き進めることが、飛騨牛のため、岐阜のためにできること。そしてなにより、人の手と愛情がけられたおいしさは、必ず伝わるものです。 どうやら「飛騨牛で世界に」となる日も、夢ではないかもしれません。

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