仙台から中華料理で全国に名を轟かす。それは宮城の食文化に挑むシェフの、苦悩の末にたどりついた境地。[楽・食・健・美-KUROMORI-/宮城県仙台市]by ONESTORY
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仙台から中華料理で全国に名を轟かす。それは宮城の食文化に挑むシェフの、苦悩の末にたどりついた境地。[楽・食・健・美-KUROMORI-/宮城県仙台市]by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から宮城県仙台市の「楽・食・健・美-KUROMORI-」を紹介します。

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気仙沼(けせんぬま)にてフカヒレを空にかざす黒森氏。こちらは皮や骨を取り除かずに干された原ビレ

仙台駅から車で15分ほど。広瀬川を見下ろす崖の上に中華料理店『楽・食・健・美-KUROMORI-』はあります。地方都市の、駅から離れた場所にありながら、遠方から訪れるゲストで2ヵ月先の予約まで埋まるこの店。手がけるのはオーナーシェフ・黒森洋司氏です。 黒森氏は、東京都内の正統派広東料理の店で腕を磨いた人物。その腕前に疑いはありませんが、正統派とはつまり表現 。ではなぜ多くのグルマンたちは、新幹線や飛行機に乗ってまでこの店を目指すのでしょうか? その答えは、黒森氏が試行錯誤の末にたどりついた地産地消にあります。

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「宮城県は中華の五大乾物のうちフカヒレ、鮑、ナマコの3つが揃います。更に魚介も肉も野菜も豊富。いわば日本中で最も中華に適した場所というわけです。東京の後追いではなく、宮城でしかできないことをしたい」と黒森氏が語る言葉のとおり、この店で味わえるのは、宮城という場所の魅力を凝縮したような、素材感際立つ料理の数々。「足を運ぶ」という手間を支払って味わうべき、唯一無二の味なのです。 しかし黒森氏は、地産地消という答えを簡単に見つけたわけではありません。見知らぬ土地で悩み、迷い、やがて大きな決断にいたる。そんな黒森氏のストーリーをお届けします。

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良い素材があれば、調味料はいらない。中華の常識を覆す料理

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白菜と菜の花の炒めもの。その繊細な美味しさに、野菜の実力を改めて思い知らされる

あくまでイメージですが、中華の料理人というと無数の調味料を使い分ける姿が思い浮かびます。各種の醤(ジャン)や酒、香辛料が鍋の周りにずらりと並び、お玉に取ってサッと足していく姿。しかし黒森洋司氏の鍋の周りにあるのは、塩コショウ、スープ、片栗粉、何種類かの油だけ。これこそが、素材感を何よりも大切にする黒森氏の中華料理なのです。 例えば菜の花を使った野菜炒め。菜の花を入れてサッと炒め、スープを少々、最後に片栗粉でとろみをつけてあっという間に完成。香辛料はおろか、塩コショウさえも使いません。「調味料を足さないということは、これが野菜のポテンシャルということ。苦味も甘味も、野菜自体が表現しているんです」と黒森氏は笑います。しかしこの言葉、裏を返せば素材に味を委ねるということ。つまり宮城県の食材への強い信頼でもあるのです。

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驚くほどの調味料の少なさは、シェフの素材への信頼の表れ

事実、ものの1分で完成した菜の花の野菜炒め。茎は軟らかく、葉の部分はサラダのようにシャッキリとした歯ごたえという恐るべき火入れの技。ほのかな苦味と甘味が透明感のある味わいを生むひと品に仕上がっています。 「一般的に出回っている野菜と、本当にこだわって作られた採れたての野菜は、小学生とオリンピック選手くらいの違いがあります」と信じるからこそ黒森氏は、日々良い素材を探し回り、その素材を引き出す料理を作り続けるのです

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料理に共通するのは、芯が強く、透明感のある味わい

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鮑の煮込み。黒森氏は金華ハムもオイスターソースも使わずに三陸の海の味を凝縮させる

和食を表現する際に、引き算の料理という言い方があります。素材の持ち味を生かすことの比喩ですが、黒森氏の考えは少し違います。 「最後にゼロをかけるイメージでしょうか。例えばフカヒレなら膨大な工程を経て乾燥させておきながら、最終的にまた水分を戻すわけです。つまり途中でかけた手間の存在を全て消して、また原点である素材へと戻る、というのかな」と、言葉を選びながら話す黒森氏。口で伝えるのは難しくとも、黒森氏の料理を食べれば、その真意が伝わります。

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柔らかく、かつ香ばしく焼き上げる叉焼。「添え物は最大の武器」と黒森氏が言うだけに煮豆や大根餅も秀逸

例えば、干し鮑。たった30個の干し鮑を戻すのに、ニンニクやネギ、椎茸、地鶏などの他、鮑のために手間ひまかけて仕込んだ150gの干し貝柱、50gの干し牡蠣も使用。これだけ贅沢な出汁を、ただ干し鮑に染み込ませるために使い切るのです。もちろん、テーブルに届く皿には鮑だけ。この中に凝縮された様々な素材の存在は目に見えず、ただ鮑を美味しくするためだけに使われているのです。 あるいは名物料理のひとつである叉焼も、炭火でじっくり焼き上げながら香りを移すことが調理のメインと捉え、ここでも豚肉自体の美味しさを引き出します。「“この叉焼旨いね”ではなく、“この豚旨いね”と言われることが嬉しい」という言葉にも、その思いが詰まっているのです。

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遠来のゲストに「宮城に来て良かった」と思ってもらうために

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焼き切らずにレア気味に仕上げることで、しっとりとした豚肉の魅力を引き出す

「美味しい料理は、都心にたくさんあります。わざわざ遠方から来てくれたお客さんが『宮城に来て良かった』と心から思える店にしないと」と話す黒森氏。そうしてたどりついた結論は「フカヒレだけは、どんな店にも負けないこと」でした。 生産量日本一を誇る宮城県のフカヒレ。それを揺るぎないアイデンティティにすることは、宮城県の誇りでもあるのです。しかし日本はもちろん、世界中の名店がフカヒレを出す中で世界一のフカヒレを目指すことは、並大抵の道のりではありません。

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広東と上海、北京のいいとこ取りという独自の手法で仕上げるフカヒレ

そこで黒森氏が考えたのは、調味料を使わず、フカヒレ本来の味を引き出す料理でした。 「上質なフカヒレのこっくりとしたコクや、良い意味でのサメ臭さ。そういうものを出すのに、調味料はかえって邪魔になります」と黒森氏。 一般的にフカヒレは、広東式では直前まで蒸していたフカヒレに、上湯(ショントン)をかけて仕上げ、北京、上海では濃いスープでグツグツと煮るという調理法が取られます。一方で、黒森氏のフカヒレは、その中間。薬味で蒸したフカヒレを、上湯でサッと煮ることで、フカヒレ本来の味を引き出すことを目指したのです。

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蒸し上げた後、手作業で雑味となる部分を取り除く。この細やかさが上質な仕上がりを生む

「フカヒレ自体に味はなく、食感や舌触りのみを楽しむだけのもの、と考えられがちですがそれは違います。あれだけ運動している部位を手間ひまかけて干し、それを戻した素材に、味がないわけがない。それを証明するために調味料は使いません」と話す黒森氏自慢のフカヒレは、もちろん店の名物料理。今ではこの味を楽しみに足を運ぶ人も多く、中にはフカヒレを噛み締めて涙を流すゲストもいるのだとか。 それこそが県外から数多の美食家がこの店へわざわざ足を運ぶ理由なのです。 大の大人が、料理を食べて泣いてしまうほどの味。その想像を超える美味しい料理がこの店にはあるのです。

「楽・食・健・美-KUROMORI-」の記事のつづきはこちら

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