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2022.04.02
世界遺産・二条城内にある、日本庭園を望める和カフェ「茶房 前田」
京都に17ある世界遺産のひとつ、二条城。徳川家康が1603(慶長8)年、京都御所の守護と江戸から上洛する将軍の宿泊所とするために築いた城で、教科書で習ったあの大政奉還の意思表明がなされた歴史的大舞台です。城内の庭園「清流園」には来場者だけが利用できる茶房があります。地元京都で親しまれる老舗喫茶・前田珈琲の姉妹店で、和の風情を感じながら自家焙煎の珈琲や、四季を映す和菓子やパフェが楽しめますよ。
城内の北側に広がる清流園へ
天守は焼失したが、見張り台として建てられた東南隅櫓が残る
二条城へは、地下鉄東西線二条城前駅からすぐ。入城受付を済ませたら東大手門から城内に入ります。「茶房 前田」は見学順路の終盤にあるので、まずは広々とした城内をめぐって。蝶や鶴、牡丹の花をはじめとする美しい彫刻や装飾が施された華麗な唐門、大政奉還の舞台となった二の丸御殿、特別名勝の二の丸庭園など見どころがたくさん。天守跡から抜群の眺望を満喫した後は、内堀に沿って北側へまわると清流園が現れます。高瀬川や保津川を開削し、都の舟運の発展に尽力した豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)の屋敷跡から建築資材や庭の石や樹木を譲り受けて造営した昭和の名庭です。
清流園は東半分が洋風、西半分が和風の和洋折衷庭園
趣のある門が茶房の入り口
石畳に導かれて和楽庵へ
築300年の時を刻んだ角倉了以の屋敷の一部に、表千家が寄贈した茶室を増築したのが「和楽庵」。この建物が「茶房 前田」として活用されています。前田珈琲は、赤レンガの旧日本銀行京都支店の金庫室、元小学校の教室など京都ならではの空間を生かした店舗が複数ありますが、和の趣が感じられるのはこちらだけ。畳敷きの広間や赤い毛氈が敷かれた外のベンチに座って、松の木の立派な枝ぶりに見惚れたり、内堀の向こうの壮大な石垣や、空を映す池の水面のゆらぎを眺めたり。耳を澄ませば水車が奏でる水の音や鳥のさえずりも聞こえてきます。
爽やかな風が通り抜ける室内
季節替わりの可憐な和菓子セット
「和菓子セット」1350円。抹茶碗は清水焼
おすすめは、生菓子3種に抹茶か煎茶が付く「和菓子セット」。季節替わりで、取材の日は桜の練り切り、3色団子、友禅づつみ(和風モンブラン)でした。抹茶は自分で抹茶茶碗にお湯をそそぎ、茶筅を使って点てるスタイル。メニュー表に点て方の解説がイラスト付きで添えられているので、初心者の方も安心して楽しめますよ。
シフォンケーキと大福が融合「ケーキ大福」
「ケーキ大福 ドリンクセット」1300円
創業当時からの自家焙煎スぺシャルブレンド「龍之助」をはじめとしたドリンクが充実しているほか、スイーツメニューには、自家製抹茶シフォンケーキや生麩であんをくるんだ麩まんじゅう、白玉あんみつなどがそろいます。人気は、自家製抹茶シフォンケーキに抹茶クリームと生クリーム、小豆を重ねたケーキが純白の求肥をまとう「ケーキ大福」。別添えの抹茶ソースをとろりとかけて召し上がれ。
甘党の家康公にちなんだ個性派パフェ
「家康」2000円。四季の移ろいとともに飾り麩が替わる
二条城ならではのパフェは、その名も「家康」。玄米や稗、粟が主食だった時代、家康公が携帯していた保存食が黒豆、黒ごま、片栗粉、砂糖を練り合わせたものだったというエピソードから生まれたパフェです。黒ごまアイスやビスコッティ、丹波の黒豆、小豆にはじまり、器のなかは玄米フレークやコーヒーゼリー、バニラアイスやキャラメルソースなどが層になっています。パフェといえば華やかで色鮮やかなものが多いなか、こちらは落ち着いた色味でまとめられているのが特徴的。高さはなんと25cm!パフェ界の征夷大将軍と呼びたくなるほど堂々たるたたずまいです。
桜にはじまり、新緑、紅葉、雪景色、梅など四季ごとに異なる景色に出会えるのが二条城さんぽの楽しみのひとつ。日常の喧騒から逃れて、贅沢な空間で静かな和の時間を過ごしませんか。
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佐藤理菜子 撮影:小川康貴
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